■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
静香(しずか)
孝典(たかのり)
その他
■台本
静香(N)「孝典はいつもタイミングが悪い。きっちりしてないと嫌な私は、いつもイライラさせられる。何回も注意してるのに全然、治らない。周りからも変な子だと思われているから、一緒にいる私の方が恥ずかしくなる。でも、不思議と人に好かれることが多い。そんなところも、私のイライラを募らせる原因の一つだ」
静香「おはよう、孝典」
孝典「あ、静香ちゃん。ありがとう」
静香「へ? なんの話?」
孝典「ほら、昨日、僕が宿題忘れたから、ノート写させてくれたでしょ?」
静香「……いや、そのときにお礼を言いなさいよ。なんで、今言うの?」
孝典「だって、今、静香ちゃんの顔を見たら、お礼言ってないって思い出したから」
静香「はあ……。ホント、孝典はズレてるわね。それより、今は、私がおはようって言ったんだから、それに対して言う言葉あるでしょ?」
孝典「あ、そっか。おはようございます。僕は孝典です。よろしくお願いします」
静香「……いや、そうじゃなくって」
孝典「え? だって、こうやってあいさつしなさいって言ったの、静香ちゃんだよ?」
静香「それは初めて会ったときに言う挨拶でしょ! 私とは知り合いなんだから、おはよう、でいいの!」
孝典「うーん。難しいなぁ」
静香「どこが難しいのよ。もう4年生なんだから、しっかりしてよ」
孝典「僕は頑張ってるつもりなんだけどなぁ」
静香「つもりじゃダメよ、つもりじゃ!」
孝典「ねえ、静香ちゃん。手、繋いでいい?」
静香「へ? な、な、なによ、急に!?」
孝典「寒くて、手、冷たくなっちゃった」
静香「……そういうのは、私が怒ってるときじゃなくて、もっと雰囲気いいときに言いなさいよ」
孝典「雰囲気?」
静香「はあ……。あんたにそんなこと求める方が間違ってるわね。ほら、繋いであげるから、手、出しなさい」
孝典「うん!」
静香が、出された孝典の手を握る。
静香「……ったく。……冷たい!」
場面転換。
学校の教室内。チャイムが鳴る。
孝典「ねえ、静香ちゃん。肝試しに行こうよ」
静香「……えーっと、ごめん。急になんなの?」
孝典「ほら、静香ちゃん。肝試ししたいって言ってたでしょ?」
静香「それ言ったの何月か覚えてる?」
孝典「えっと、7月だったっけ?」
静香「……今、何月?」
孝典「え? 2月だよ?」
静香「……肝試しっていうのは、夏にやるものなのよ」
孝典「でも、さっき、すごい場所聞いたんだよ。絶対に出るってところ。だから、今日、学校の帰りに行こうよ」
静香「あんたはなんで、そうズレてるのよ」
孝典「えへへ。楽しみだね」
静香「はあ……。もう、勝手にしなさい」
場面転換。
廃屋の中を歩く音。
静香「……うわー。廃病院って……雰囲気ヤバいわね。本当に出そうで嫌だわ」
孝典「え? 出た方がいいんじゃないの?」
静香「……こういうのは、出そうって雰囲気だけで、実際には出ないって言うのが一番いいのよ」
孝典「ふーん。難しいね」
静香「孝典。もういいから、帰るわよ」
孝典「え? もう?」
おどろおどろしい音。
幽霊「うーらーめーしーやー」
静香「きゃあああああ! 出た―――!」
幽霊「うーらーめーしーやー」
静香「きゃあああ! 孝典、逃げるわよ!」
孝典「おはようございます。僕は孝典です。よろしくお願いします」
静香「あんた、なにやってんのよ!」
孝典「え? だって、初めて会ったときは、こうやって挨拶するって静香ちゃんが」
静香「そんなことしてる場合じゃないでしょ!」
幽霊「あ、どうも、こんにちは」
静香「え?」
孝典「悲しそうな顔してるけど、なんかあったの?」
幽霊「……話、聞いてくれるんですか?」
静香「……孝典? なにしてんの?」
孝典「だって、困ってる人がいたら、助けてあげなさいって、静香ちゃんが……」
静香「いや、確かに言ったけど……」
幽霊「実は私、昔、この病院の患者だったんですけど……」
静香「話し出しちゃうんだ!?」
孝典「うんうん、それで?」
幽霊「ここで悪い医者に……」
静香「……はあ」
静香(N)「孝典は昔から人によく好かれるところがあるけど、まさか幽霊にも好かれるなんて。……それにしても、本当に孝典はズレてる。……でも、まあ、そんなところも好きなんだけどね」
終わり。