■概要
人数:3人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
信二(しんじ)
崇(たかし)
みくる
■台本
コンサート会場。
声援が響き渡る。
信二「みくるちゃーん!」
みくる「みんなー! 今日は来てくれて、ありがとー!」
信二「うおーーーー! みくるちゃーん!」
場面転換。
信二「……」
崇「おい、信二しっかりしろよ。そんなんで、次のテスト大丈夫なのか?」
信二「いいんだ。俺は昨日のライブで人生の最高潮に到達した。テストの点数が悪いことなんて、些細なことさ」
崇「そんなんだろうと思ってたよ。……お前、今回、赤点だと単位ヤバいんじゃないか?」
信二「うるさいなっ! 人がせっかく、いい気分に浸ってるのに邪魔すんなよ」
崇「……いや、お前のことを思って言ってやってるんだが。お前、俺の占いだと、留年って出てるんだぞ」
信二「はあ……。みくるちゃん。次のライブまで待ちきれない。天使の降臨を待つのは辛いぜ」
崇「……天使って。単なるアイドルだろ」
信二「単なるってなんだ! 単なるって! 天使のように可愛いから、天使でいいだろうが!」
崇「……ああいう子に限って、本当は性格悪かったりするんだぞ」
信二「それはないね! 断言できる!」
崇「ほう……。じゃあ、確かめてみるか?」
信二「え?」
場面転換。
信二「……胡散臭いな。お前、魔術にハマり過ぎて、現実が見えなくなってるんじゃないのか?」
崇「……お前に言われたくないな」
信二「まあ、いいや。で? どうするって?」
崇「お前の精神を、ぬいぐるみに憑依させる」
信二「……」
崇「信じないなら別いいさ。けど、ぬいぐるみに憑依できれば、みくるちゃんに抱きしめられたり、一緒に寝たりできるかもしれないのにな」
信二「やる!」
場面転換。
ピンポーンというインターフォンの音。
みくる「はーい」
みくるが立ち上がり歩いて行く。
場面転換。
箱を持って戻ってくるみくる。
みくる「ぬいぐるみかー。ファンからかな?」
信二(N)「うおー! 本物のみるくちゃんだー! すげー! こんなに近くで見れるなんて、ライブの一番いい席でも無理だぞ」
みくる「はあ……。直接、家に送り付けてくんの止めてくんないかなー。迷惑なんだけど」
信二(N)「え?」
みくる「つーか、事務所も、その辺の管理きっちりやっとけや、ボケが。家の住所、朗詠させてんじゃねーよ」
信二(N)「あ、ははは……。きょ、今日は機嫌が悪いのかな?」
みくる「……にしても、ぬいぐるみって、マジいらないなー。しかも、なに? このぶっさい顔」
信二(N)「いやいやいや! みくるちゃんのプロフィールに好きな物は、たれっクマって書いてたじゃない!」
みくる「なんか、見てたらイラついてきた」
信二(N)「へ?」
みくる「おらぁ!」
みくるがぬぐるみを殴る音。
信二(N)「ぶべっ!」
みくる「おらおらおらおらおら!」
ぬいぐるみを殴り続けるみくる。
信二(N)「あばばばばばば! や、やめてくれー!」
場面転換。
ピンポーンとチャイムが鳴った後、ガチャリとドアが開く。
崇「おーい、信二。なに大学休んでるんだよ! 結果教えろよ!」
信二「……」
崇「信二?」
信二「怖い、怖い、アイドルって怖い」
崇「……だろ? だからアイドルから卒業して、ちゃんと授業に出……」
信二「怖い、怖い。外に出るのも怖い……」
崇「信二?」
信二「ひいいい! 俺のことは放っておいてくれー」
信二が布団を被ってしまう。
崇「……どっちにしても、留年の運命だったか」
終わり。