【フリー台本】オオカミ少年

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■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
昇司(しょうじ)
守(まもる)

■台本

昇司「知ってるか? 校長ってズラなんだぞ」

場面転換。

昇司「来週、子役で有名な高砂南ちゃんが、この学校に転校してくるんだってさ」

場面転換。

昇司「実は俺さ、次の期末テストの問題、見ちゃったんだよ。教えて欲しかったら、500円な」

昇司(N)「人を騙すというのはとても気持ちがいいものだ。狼少年という童話があるが、主人公が何度も嘘を付くという気持ちはよくわかる。昔はよく、クラス中を大慌てにさせていたのだが……。最近はみんな騙されなくなってきた。確かに、同じような嘘では芸がなくなってきたな……」

昇司が歩いていると守が走って来る。

守「昇ちゃん、おはよー」

昇司「おう、おはよう」

守「今日から4月だねー」

昇司「ああ。大分、暖かくなってきたよな」

守「……ねえ、昇ちゃん。今日はどうするの?」

昇司「ん?」

守「あ、やっぱり、何でもない。楽しみにしてるよ」

昇司「は? 何言ってんだ、お前」

守「ヤバい、走らないと遅刻しちゃうよ」

昇司「おっと、ヤバいな。走るぞ」

昇司と守が走っていく。

場面展開。

学校内。

ガラガラとドアを開き、昇司が職員室に入って来る。

昇司「せんせー。なんですか?」

教師「ああ。お前、今日、日直だよな?」

昇司「はい。そうですけど」

教師「先週出した宿題を、この後に集めるから、運ぶの手伝ってくれ」

昇司「あっ!」

教師「ん? どうした?」

昇司「……いえ、なんでもないです」

教師「それと、クラスのみんなに、次は体育じゃなくて、国語になったから、グラウンドには行かないように言っといてくれ」

昇司「は、はい。わかりました……」

場面転換。

廊下を歩く昇司。

昇司「まいったな……。宿題忘れてた……。誰かに写させてもらわないと。けど、貸してくれる奴いるかな……。うーん。……あっ! いいこと思いついた!」

場面転換。

ガラガラと教室のドアを開けて、入って来る昇司。

昇司「みんな、聞いてくれ! この後、体育が中止になって、国語になったぞ!」

教室内が静まり返る。

昇司(N)「ふっふっふ。いつも俺は嘘を付いている。だから、今回も嘘だと思うはずだ。そうなれば、みんなはグランドへ行く。その間に誰かのノートから宿題を写す。……そして、先生にはちゃんと伝えたと言えば、怒られないで済む! 完璧だ! 完璧すぎる」

教室内が静まり返っている。

クラスメイト「……ああ。なるほど。そういうことか」

再び、教室内がざわざわと賑やかになる。

昇司「え? あれ? おい! みんな! グランドに行かないのかよ!」

クラスメイト「いや、だって、次は国語になったんでしょ?」

昇司「あ、いや、そうだけど……」

昇司(N)「なぜだ!? なんで、俺が本当のことを言っているというのがわかったんだ!?」

ガラガラとドアが開き、教師が入って来る。

教師「みんなー、席に戻れ。授業始めるぞー」

昇司「あっ……」

場面転換。

昇司と守が歩いている。

昇司「くっそー! 宿題忘れて、めっちゃ先生に怒られた……」

守「ご愁傷様」

昇司「それよりさー、なんでひっかからなかったんだろうな」

守「なにが?」

昇司「俺、今日、体育が中止になったこと、いつもと逆で、ホントのことを言ったんだよ」

守「ああ、あれね。ちょっとひねりがあって、面白かったよ」

昇司「え? なんの話だ?」

守「……あれ? わざとじゃなかったの?」

昇司「何がだ?」

守「今日は嘘を付くのを嘘ついてたんでしょ?」

昇司「……は?」

守「嘘の嘘だから、ホントってわけだね。今まで一番、上手かったんじゃないかな」

昇司「いや、嘘の嘘ってなんだよ? なんで、嘘の嘘を付かなきゃならないんだよ?」

守「え? だって今日、エイプリルフールでしょ?」

昇司「……あっ!」

昇司(N)「……狼少年も、本当に狼が来たのがエイプリルフールだったら、あんな最後にはならなかったのかもしれないな」

終わり。

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