■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
誠治(せいじ)
清彦(きよひこ)
その他(女性多数)
■台本
誠治と清彦が歩いている。
誠治「……うーん、4月なのに、なんでこんなに暑いんだ?」
清彦「最近は異常気象が多いよね」
誠治「汗がヤバいな。……あ、銭湯だ。清彦、ひとっ風呂浴びていくか?」
清彦「お風呂か。いいね」
誠治「……」
清彦「ねえ、誠治、何考えてるの?」
誠治「ん? いや、別に」
清彦「嘘だ。……小学校の頃のこと、思い出してたでしょ?」
誠治「……あの頃は、ホント、子供だったよな」
清彦「子供だったから許されてたんだよね」
誠治「今だったら、捕まるよな?」
清彦「当たり前でしょ」
誠治「……だよな」
清彦「なに? もしかして、やろうとしてた?」
誠治「ば、バカ言うなよ。俺はあの頃とは違うんだよ」
清彦「うん。そうだよ。僕らはもう大人なんだから」
誠治「そうそう。俺たちは大人だ。子供とは違うんだよ」
清彦「じゃあ、入る? 銭湯」
誠治「ああ」
場面転換。
カポーンという、銭湯内の音。
誠治「はあ……。やっぱ、最高だよな」
清彦「最高だね」
誠治「子供の頃の俺らが知ったら、羨ましがるだろうな」
清彦「そうだね。でもさ、あのとき、めちゃくちゃ怒られたから、今の僕たちがいると思わない?」
誠治「あー、確かに。あの頃の経験があってこその、今だよな」
清彦「あの頃から上手くいってたら、ここまで上手くできるようにならなかったよね」
誠治「そうだよ。だから、あのときの経験は必要なことだったんだ。つまり、あの、怒られた日々はちゃんと俺たちの中に残ってる」
清彦「……でもさ、今考えたら、ストレートに窓からって、バカだよねー」
誠治「そうだな。なんで、あのときは、あれでバレないと思ってたんだろうな」
清彦「そうだよねー。ビックリするくらい、速攻で見つかってたもん……あれ?」
誠治「どうした?」
清彦「いや、そういえば、おかしいなって思って」
誠治「なにがだ?」
清彦「だってさ、普通、あんなところに窓なんて作らなくない? 小学生でも登れる場所だよ?」
誠治「……まあ、確かに」
清彦「もしかしたら、僕らは誘導されていたのかもしれない」
誠治「どういうことだ?」
清彦「そこに窓があるから、そこにしか意識が向かなかったんだ」
誠治「……?」
清彦「つまり、その窓にさえ、細心の注意を払えばいい」
誠治「あっ!」
清彦「変にガードを強固にしたら、どこからやってくるかわからない。今みたいに屋根裏って手もあるからね」
誠治「なるほど……。ということは、俺たちはあえて作られた弱点に釣られて、窓からしか見ようとしなかったわけか」
清彦「そういうこと」
誠治「くうー。そんなの小学生じゃ気づかねーよ。まんまと、銭湯のジジイにしてやられたってわけか」
清彦「ふふ。でも、今は違う。そのことに気づくことができたんだ」
誠治「そう考えると、成長したな、俺たち。もう、銭湯のジジイに見つかることもないし……」
清彦「見つかって追いかけられることもない」
誠治「ああ……」
そのとき、ミシミシと屋根の底が割れていく音。
清彦「え?」
誠治「何の音だ?」
バキバキバキと屋根の底が割れ、二人が落ちていく音。
誠治「いてえ!」
清彦「屋根裏の底が腐ってたのかな?」
女性たち「……」
誠治・清彦「……はっ!」
女性たち「きゃーーーー! 覗きよ!」
誠治「うわーーーー! 逃げろ、清彦!」
清彦「誠司、名前呼ばないでよー!」
女性たち「待てー! 痴漢! 警察に突き出してやるー!」
誠治・清彦「ぎゃーーーーー!」
終わり。