■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
悠雨(ゆう)
翼(つばさ)
陽平(ようへい)
■台本
悠雨(N)「僕は昔から、空に向かって願うと、どんなに晴れていても、雨にすることができた。まあ、この能力はあまり、使うことはなかったし、使うと嫌な顔をされてばかりだ。だから、こんな能力を持っていたからと言って、今まで何の良いこともなかったんだ」
セミの鳴く声。
翼「暑ぃ……」
陽平「……まだ5月なのにね。異常だよ」
翼「この中で運動会するとか、正気の沙汰じゃねえよな」
陽平「雨でも降って、中止になればいいのにね」
悠雨「……」
翼「そうだな。てるてるボウズを逆に吊るすか」
悠雨「ね、ねえ。運動会の日、雨を降らせて、中止にさせてあげようか?」
翼「ん? 急になんだ?」
陽平「……えっと、悠雨くん、だっけ? 雨降らせるってどういうこと?」
悠雨「あのね、僕、空にお祈りしたら、雨を降らせることができるんだ」
翼「……」
陽平「……」
悠雨「……」
翼「……ぷっ! あははははは」
陽平「あははははは。いやいや、そんなことできるわけないでしょ」
悠雨「いや、ホントにできるんだよ」
翼「……マジか?」
悠雨「うん」
陽平「……今、やってみてもらってもいい?」
悠雨「わかった。じゃあ、外に行こうよ」
場面転換。
ミーンミーンとセミの鳴き声。
ジリジリと太陽の日差しが照り付けている。
翼「めっちゃ晴れてるけど、ホントにいけるのか?」
悠雨「うん! じゃあ、行くよ。はああああああ!」
陽平「おお! なんか、それっぽい!」
悠雨「ぬあーーーーーー!」
翼「……なんで、やられる前のときのような掛け声なんだよ」
陽平「……」
悠雨「……」
翼「……おい、やっぱり、なにも……」
そのとき、ポツと雨が一粒、落ちてくる。
陽平「え?」
段々、雨が降って来る。
翼「お? お? おおおーーー!」
ザーッと雨が降り始める。
翼・陽平「すげーーーーー!」
悠雨「えへへへ……」
悠雨(N)「初めて、この能力で人に褒められた。それがとっても嬉しかったんだ」
場面転換。
翼「それじゃ、第1回、運動会を中止させよう、会議を始める」
陽平「ねえ、その雨を降らせる力って、どのくらい継続できるの?」
悠雨「え?」
陽平「ほら、一回願ったら、一日中、ずっと降らせることができるのか、とかさ」
悠雨「えっとね、どのくらい力を込めるか、かな。いっぱい、力を込めたらその分だけ、降らせることができるよ」
翼「じゃあ、悠雨には頑張ってもらって、今からジャンジャン降らせてもらうか?」
陽平「ううん。それだと、運動会の日が変更になっちゃうから意味ないよ」
翼「あ、そっか」
陽平「だから、悠雨くんには、当日の朝から降らせてほしいんだ。いいかな?」
悠雨「うん! わかった!」
翼「よし! 頼んだぞ!」
悠雨(N)「そして、あっという間に、運動会の前日になった」
悠雨「……二人には当日にって言われたけど、前の日からガンガン降らせれば、確実に中止させられるよね!」
深呼吸をする悠雨。
悠雨「よーし! いくぞーーーー!」
大きく息を吸う。
悠雨「ぬあああああーーーー!」
ザーッと雨が降り始める。
悠雨「ふう、これでよし……っと。あとは止まないように、天気を見ておかないと」
ザーッと雨の降る音。
悠雨「うう……。頑張り過ぎたかな。すごく疲れたな」
ザーッと雨が降る音。
悠雨「……これだけ降ってれば、しばらくは大丈夫だよね。疲れたから、部屋で少し寝ようっと……」
場面転換。
ピピピピと携帯のアラーム音。
悠雨「え? ええ!? 朝まで寝ちゃった! 天気は!?」
シャーっとカーテンを開ける音。
チュンチュンと雀の鳴き声。
悠雨「あ……は、晴れてる……」
場面展開。
悠雨「ご、ごめん! 寝ちゃって……」
翼「くそ……。諦めて、運動会に参加するしかないのか……」
陽平「いや、大丈夫そうだよ」
悠雨「え?」
陽平「見て、グラウンド」
翼「あ……。昨日の雨で水たまりができてる」
陽平「これじゃ、運動会はできないよ」
悠雨「ほ、ホント?」
陽平「うん。これはもらったね」
翼「よっしゃー! よくやったぞ、悠雨!」
悠雨「えへへ……」
そのとき、校内放送が流れる。
アナウンス「本日の運動会ですが、グラウンドが昨日の雨により使えないので……」
翼「中止だろ?」
陽平「当然だよね」
悠雨「えへへ」
アナウンス「体育館で行います」
翼・陽平・悠雨「ええええー! そんなー!」
悠雨(N)「僕は昔から、空に向かって願うと、どんなに晴れていても、雨にすることができた。だけど、この能力は、今まで役に立ったことはない……」
終わり。