■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
尊史(たかふみ)
瑠衣(るい)
男(3人)
■台本
尊史(N)「……例のアレのせいで、バイトをクビになった俺は、遊ぶ金がなかった。それで、つい出来心で借金をしてしまった。返済期間が迫った時、手元にはお金がなかった。唯一、お金になりそうなのが、おじいちゃんから貰った腕時計。でも、この思いでの時計は売りたくなかった。そんなとき、短時間で高額のお金が手に入るという話を聞いて……つい、飛びついてしまったんだ」
場面転換。
男「ここに書いてある通りにやればいいから」
尊史「いや、銀行強盗って……。無理ですよ。無理無理」
男「大丈夫大丈夫。銀行じゃなくて、信金だから」
尊史「……よく、違いがわからないですが」
男「この信金は、どうやら不正やってるらしくてさ、警察とか色々と調査されるとヤバいんだよ」
尊史「……はあ」
男「少額なら、追われないってわけ」
尊史「だからって、一人じゃ無理ですよ」
男「あー、大丈夫大丈夫。信金側に協力者がいるんだよ。だから、これに書いてある通りにやってくれれば、後は、あっちが色々上手く進めてくれるから」
尊史「……」
男「まあ、やりたくないなら、他の人にお願いするよ。一時間で100万なんて、他じゃ絶対に無理なんだけどね」
尊史「……本当に捕まったりはしないんですね?」
男「ああ。もちろんだよ」
尊史「わかりました。やります」
場面転換。
信金の建物内。
大きなテレビが流れている。
テレビの音。ピ、ピ、ピーンという音。
アナウンサー「3時50分のニュースです。昨晩、銀行内で……」
ぶつぶつと呟いている尊史。
尊史「えっと、受付に行って、職員の人に500万借りたいって言う……。で、監視カメラに見えるように、モデルガンを出す……と」
ペラリと紙を出す。
尊史「……うん。大丈夫。完璧に覚えた。あとは作戦開始が4時からだから、そろおろ呼ばれる頃かな」
ポーンとチャイムのような音。
瑠衣「5番の札をお持ちの方は4番窓口にお越しください」
尊史「お、来た来た。いくぞ!」
歩いて行く尊史。
瑠衣「こんにちは。本日はどうされましたか?」
尊史「……え?」
瑠衣「どうかしましたか?」
尊史「てっきり、男の人かと」
瑠衣「どういうことですか?」
尊史「あっ! すみません! なんでもないです」
尊史(N)「ヤバいヤバい。協力者ってバレたらあっちもヤバいもんな。余計なことは考えないで、作戦を進行しよう」
尊史「あの、500万、お願いします」
瑠衣「身分証明書と通常をお願いします」
尊史「は、はい! お願いします」
ガサガサとカバンから出す。
瑠衣「お預かりします」
瑠衣が歩いて行く。
尊史(N)「ふう。これで、戻ってきたら、少し揉めてからモデルガンを出す、と」
瑠衣が戻って来る。
瑠衣「あのお……」
尊史「はい」
瑠衣「残高、0ですけど」
尊史「え? まあ、そりゃそうですけど」
瑠衣「あっ! 借入ですね。すみません。じゃあ、これに記入してください」
尊史「え?」
瑠衣「どうかしました?」
尊史「いや、その……どうやって書けばいいのか……」
瑠衣「ああ、じゃあ、説明しますね。まずここに名前と住所を……」
尊史(N)「こんなこと、メモに書いてなかったんだけどなぁ。この女の人、ちょっと頼りない感じだけど、大丈夫かな」
瑠衣「最後にここに借入理由をお願いします」
尊史「え? な、なんて書けばいいんですか?」
瑠衣「……お金は何に使うんですか?」
尊史「えっと、借金の返済、かな」
瑠衣「うーん。それじゃ無理ですね」
尊史「え? 無理なんですか?」
瑠衣「じゃあ、個人で事業をするってことにしましょうか」
尊史「あ、はい。じゃあ、それで」
瑠衣「借金はいくらあるんですか?」
尊史「10万です」
瑠衣「それなら、金額は……10万にしておきましょうか」
尊史「え? いいんですか? 500万じゃなくて」
瑠衣「ふふふ。500万は無理ですー」
尊史「そ、そうですか……」
瑠衣「じゃあ、ちょっと、行ってきますね」
瑠衣が行ってしまう。
尊史(N)「うーん。相手がちゃんとやってくれるって言ってるから、従った方がいいんだよな」
瑠衣が戻って来る。
瑠衣「……ごめんなさい。ダメでした」
尊史「え? ダメだったんですか?」
瑠衣「こんなんじゃ、10万出せないって店長に怒られました……」
尊史「……」
尊史(N)「なんか、よくわからないけど、モデルガンを出した方がいいのかな? もしかしたら、俺が協力者だって気づいてないのかも」
ガサガサとモデルガンを出す尊史。
瑠衣「え、それって……」
尊史「はい。そういうことです」
周りがザワッと騒ぎ出す。
尊史「……」
瑠衣「GNTP3、0式ですよね!」
尊史「え?」
瑠衣「モデルガン好きなんですか? それ、凄いレアものなんですよね」
周りがホッとしたような空気が流れる。
尊史「……あ、あの。バラしたらマズイんじゃないですかね?」
瑠衣「あ、いけない! ごめんなさい。マニアってバレちゃうのマズイですよね」
尊史「いや、そうじゃなくて……」
瑠衣「そのモデルガンを担保に10万を借りることはできないんですか?」
尊史「これ、借り物なんで……」
瑠衣「そうですか……。どうしましょうかね」
尊史(N)「もう、計画はダメそうだな」
尊史「……はあ。やっぱり、腕時計売るしかないのか」
瑠衣「素敵な時計ですね」
尊史「おじいちゃんからのプレゼントなんですよ。時間にルーズな俺の為に買ってくれたんです。それで、10分、時間を早めてくれてるんですよ。遅刻しないようにって」
瑠衣「素敵なおじいさんですね」
尊史「ええ。おじいちゃんがいなかったら、俺はもっとダメな人間になってたと思います」
瑠衣「おじいさんのために、頑張りましょう! 10万なんて、頑張って仕事すれば返せますよ!」
尊史「そ、そうですかね?」
瑠衣「はい! 私が保証します」
尊史「……」
男性職員がやってくる。
男性職員「交代時間だよ。そろそろ代わってくれるかな? 大事なお客さんの予約がはいっているんだ」
瑠衣「え? あ、ごめんなさい。じゃあ、頑張ってくださいね」
尊史「は、はい」
尊史が席を立ち、歩いて行く。
男性職員「5番の札をお持ちの方は4番窓口にお越しください」
瑠衣「あ、6番からですよ……」
尊史が歩いて行く。
男性職員「うわあああああ! 強盗だ!」
客「え? 違いますよ!」
男性職員「あ、相手は銃を持ってます! みなさん、伏せて!」
周りが阿鼻叫喚になる。
尊史「……あれ? ……あっ! 時計、10分、進んでるんだった」
客「いや、違いますって!」
男性職員「店長! 人命が最優先です! 500万、渡してください!」
客「銃なんて持ってませんからー」
尊史「……ちゃんと、まともな仕事しようっと……」
終わり。