■概要
人数：5人以上
時間：10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
凌空（りく）
海斗（かいと）
政人（まさと）
その他
■台本
けん玉をする音。
それを大勢の子供たちが見ている。
凌空「うわー……すごい」
男の子１「よっ！ ほっ！ はっ！」
ワッと歓声が上がる。
凌空「けん玉で、あんなことができるなんて、凄いなぁ……」
女の子１「本当にすごいよね、真白」
真白「うん！ すごく格好いいよね！ 私、けん玉上手い人、好き！」
男の子たちがザワザワし始める。
海斗「おい、凌空、聞いたか、今の？」
凌空「うん。聞いた。さっそく、今日からけん玉の練習だね」
海斗「そうだな。顔はどうにもできねーけど、けん玉なら練習すれば、上手くなれるからな」
凌空「これで、真白ちゃんに振り向いて貰えるかも」
場面転換。
教室内。
そこら中でけん玉をする音。
海斗「よっ！ ……あー、ダメだ。全然、うまくいかねー。凌空はどうだ？」
凌空「僕も。才能ないのかも……」
けん玉の音。
海斗「それにしても、クラスで一気に流行ったなぁ、けん玉。これも真白ちゃん効果って奴か」
凌空「……僕、諦めないでやってみるよ」
海斗「そうか。ほどほどにな。俺はさすがに一抜けだわ。けん玉、向いてないし、違うことで真白ちゃんにアピールするよ」
凌空「うん……。僕は他に、アピールできるところがないから、けん玉、頑張ってみるよ」
場面転換。
けん玉をする音。
凌空「よっ！ ほっ！ ……あっ！ 失敗。……よし、もう一回……」
けん玉を続ける音。
場面転換。
教室。
凌空「ねえ、見て見て！ ろうそく、できるようになったよ！」
海斗「……凌空。お前、まだけん玉、やってたのか？」
凌空「え？」
海斗「見ろよ。もう、クラスの誰もやってないぞ」
凌空「……ホントだ」
海斗「真白ちゃんの次のブームはサッカーだってさ。今度の体育のために練習しようぜ」
凌空「……あ、いや、僕はいいや」
海斗「そうか。じゃあ、俺一人で行って来るわ」
凌空「うん。頑張って」
海斗が行ってしまう。
凌空「……」
凌空がけん玉をする音。
凌空「よっ！ ほっ！」
場面転換。
教室。
海斗「いやあ、まさか、中学になっても、凌空と同じクラスになるなんてな」
凌空「はは。あんまり、周りのクラスメイトは変わらないよね」
海斗「そういや、凌空は部活、何にするか、決めたか？ 俺さ、テニス部にしようかなって思ってるんだ。美人の先輩がいるらしいぞ。お前もどうだ？」
凌空「あー、いや、僕はいいや。運動、苦手だし」
海斗「そっか。早く決めろよ。中学生になったんだから、青春しないとな！」
凌空「うん、そうだね……」
場面転換。
教師「え？ けん玉部を作りたい？」
凌空「ダメ……ですか？」
教師「お前の他に、けん玉部に入ってくれそうな人は何人いるんだ？」
凌空「……」
教師「んー。じゃあ、愛好会でいいか？ 空き教室くらいは用意してやれるけど」
凌空「ありがとうございます！」
場面転換。
けん玉をする音。
凌空「よっ！ ほっ！」
ドアが開く音。
海斗「あ、いたいた。なあ、凌空。今度の連休だけどさ、海に遊びに行かね？ 実は女子も誘ってるんだよ」
凌空「……あー、ごめん。連休にけん玉の昇段試験があるんだ」
海斗「はあ……。ほんと、お前はけん玉好きだな。けどさ、いい加減、もっと学校生活を楽しんだらどうだ？ 結局、３年になっても、愛好会に誰も入って来ねーじゃねーかよ。このまま、なんの思い出もないまま、中学卒業していいのか？」
凌空「思い出はあるよ。初段受かったこと」
海斗「……なあ、知ってるか？ 今、真白ちゃん、高校生と付き合ってるみたいだぞ」
凌空「真白ちゃんは関係ないよ」
海斗「……凌空。お前、なんのためにけん玉やってるんだ？」
凌空「……楽しいから、じゃダメかな」
海斗「もっと、楽しいことはたくさんあるだろ」
凌空「……」
場面転換。
けん玉をする音。
凌空「よっ！ ほっ！ とっ！」
政人「おおー！ 世界一周！ しかも、１０連続でしょ！」
凌空「え？」
政人「いやあ、まさか、高校でガチでけん玉してる人見たの、初めてだよ」
凌空「君も、けん玉するの？」
政人「三段だ！」
凌空「うっそ！ ホントに！？」
政人「見るか？ 俺の神技を？」
凌空「見る見る！」
場面転換。
けん玉をする音。
政人「なあ、凌空。お前も今度の日本選手権出るだろ？」
凌空「もちろん！ 今度は負けないよ！」
政人「ふっふっふ！ 返り討ちにしてやるよ」
けん玉をする音。
場面転換。
凌空「ねえ、今度の休み、特訓の合宿しない？」
政人「あー、悪い。パス」
凌空「で、でも、もうすぐ、大会だよ？」
政人「……大会、出るの止めるよ」
凌空「え？ なんで？」
政人「その日……彼女の誕生日なんだ。一日、デートする予定なんだよ」
凌空「そっ！ そんな！ デートなんて違う日にだってできるじゃないか！」
政人「彼女の誕生日はその日だけだよ。凌空もさ、そろそろ、けん玉以外のことにも目、向けたら？ せめて最後の一年くらいは、楽しい高校生活送れよ」
凌空「……」
政人「……じゃあな」
政人が出ていく。
凌空「……」
凌空がけん玉を始める。
場面転換。
けん玉の音。
場面転換。
大盛り上がりの会場。
けん玉の音。
司会「決まったー！ 凌空選手、優勝です！」
凌空「やったー！」
司会「凌空選手、これで世界一になったわけですが、どうですか？」
凌空「凄く嬉しいです」
司会「凌空選手がけん玉を始めたのいつですか？」
凌空「小学３年のときです」
司会「なにか、始めたきっかけはあったんですか？」
凌空「……」
司会「凌空選手？」
凌空「……きっかけは忘れました。でも、今、けん玉をすることがとっても楽しいです！」
盛大な拍手が巻き起こる。
終わり。