■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
康太(こうた)
実(みのる)
教師
その他
■台本
康太(N)「僕は人から、怖がりと笑われる。でも、それは違う。僕は人には見えないものが見える。……そう。幽霊だ。でも、この悩みを誰もわかってくれない。有名な除霊師のところや霊能力者のところに行っても、僕には霊感がないなんて言うんだ。そんなわけないのに……」
場面転換。
夜の道。辺りは静かで、康太の足音だけが響く。
康太「うう……。帰り、遅くなっちゃった。早く帰らないと。このへん、よく出るんだよなぁ……」
気付くと、足音が2つになっている。
康太「え?」
康太が少しだけ足を速めると、もう一つの足音も早くなる。
康太「……うう。やっぱり出た」
女性の声「ねえ……」
康太「ぎゃああああああああ!」
康太が走って行く。
場面転換。
教室内。
康太「うう……」
実「どうしたの、康太君? 顔色悪いよ」
康太「最悪だよ。昨日、学校の帰りが遅くなったらさ、幽霊に逢ったんだよ」
実「ええ? 幽霊?」
康太「そう……。しかも、そのときにお気に入りのストラップを落としたんだ。あれ、限定品だったのにぃ……」
実「あらら。それは大変だったね。今日の放課後、一緒に探してあげようか?」
康太「いや、いい。あそこにはもう行きたくない」
実「大丈夫だって。明るいうちなら出ないよ」
女子生徒「え? なになに? 出るって、もしかして緑が丘の通りのこと?」
康太「知ってるの?」
女子生徒「うん。だって、出るって有名だもん。昨日も出たって話だよ」
実「……それって」
康太「だから言ったでしょ?」
女子高生「怖いよね。奇声を上げるなんてさ」
場面展開。
康太と実が歩いている。
実「ねえ、聞いた? 今度の泊まりの林間学校、肝試しするんだって」
康太「えええ! なんで、そんなことするの? 最悪じゃん!」
実「なんかね、康太君の怖がりを治したいんだって」
康太「いや、だから、僕は怖がりじゃなくて、霊が見えるだけなんだって」
実「僕に言われても……。あ、あそこ。この辺の落し物は、大体あそこの交番に届くんだよ」
康太「無理だよ。だって、幽霊がストラップを警察に届けると思う?」
実「まあまあ、聞いてみるだけ聞いてみようよ」
場面転換。
警察官「ああ。そのストラップって、これかい?」
康太「あっ! 僕のだ!」
警察「昨日、女の人が持ってきてくれたんだよ」
康太「よかったー。失くしたと思ったよ」
実「よかったね、康太君」
場面転換。
教師「では、これより、林間学校の夜間の部ということで肝試しをするからな」
康太「あの……先生。僕は不参加でいいですか?」
教師「どうしてだ?」
康太「さっき、聞いたんですけど、この建物って……」
教師「ああ。有名な心霊スポットだ」
康太「そんな場所には尚更行けません!」
教師「大丈夫、大丈夫。幽霊なんていないって」
康太「いえ、いますよ。だって、僕、何度も見てますから」
教師「幽霊を? 何度も?」
康太「はい」
教師「そうか……。幽霊ってどんな感じなんだ?」
康太「え? いや、いつも見る前に逃げちゃうので……」
教師「そうか。じゃあ、今日はちゃんと見てから逃げないとな」
康太「先生の鬼! 冗談じゃないよ!」
教師「康太。お前はもうすぐ中学生なんだぞ。そろそろ怖がりを治さないと。お前のお母さんからも相談があったんだ。だから、今日はお前の怖がりを治すためでもあるんだ」
康太「いや、僕は怖がりじゃなくて……」
教師「よし、じゃあ、さっそく始めるぞ。康太。お前からだ」
康太「ええええ!」
場面転換。
建物内を歩く康太。
康太「うう……。絶対出る。これ、絶対出るやつだ」
どうかでガラガラとドアが開く音がする。
康太「ひいぃ! ……今の何? ……気になるけど、今は早く終わらることだけ考えなくっちゃ」
バタバタと建物内を走る音。
康太「ひい! こ、今度は何?」
すると女性の笑い声が聞こえてくる。
康太「うわあああー!」
康太が走って行く。
場面転換。
建物を歩く康太。
康太「うう……迷っちゃった。ここ、どこ?」
教師「……康太」
康太「あ、先生だ! 先生!」
康太が教師の所へ走る。
康太「先生、僕、迷っちゃって」
教師「そうか……。建物内は走るなって言ってたのに、それを破ったからだな」
康太「ごめんなさい……。でも、先生。どうして顔を背けてるんですか?」
教師「……べつにいいじゃないか」
康太「よくないですよ! 顔をこっちに見せてください」
教師「ダメだ。見せられない」
康太「……ど、どうしてですか?」
教師「……なぜなら」
康太「……ゴクリ」
教師「こんな顔してるからだ!」
康太「ぎゃあああああああああ! ……あうっ!」
康太が怖さのあまり気絶する。
場面転換。
康太「……は? あれ? ここは?」
教師「ごめんな、康太。まさか、気絶するなんて思わなかったんだ」
康太「先生、酷いですよ! あんな幽霊がたくさんいる場所で、あんな悪ふざけをするなんて」
教師「あー、いや、実は嘘なんだ」
康太「嘘?」
教師「あそこは心霊スポットでもなんでもない。お前が聞いた、ドアが開く音や笑い声とかは、全部、クラスのみんなでやったことなんだ」
康太「ど、どうしてそんなことしたんですか?」
教師「ショック療法だよ。本当に怖い思いをすれば、幽霊無いんてへっちゃらにならないかなってさ。どうだ? あんなに怖い思いをしたんだから、幽霊なんて、もう平気だろ?」
康太「……」
康太(N)「幽霊よりも、人間の方が怖いっていうお話でした」
終わり。