【フリー台本】幽霊退治は放課後に

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■補足
この物語は「妖怪退治は放課後に」の番外編になります。
この話は単体で読んでも問題ありませんが、「妖怪退治は放課後に」を読んでからの方が、より楽しめる内容となっております。
〈妖怪退治は放課後に 第1話〉

■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、コメディ

■キャスト
芹澤 和馬(せりざわ かずま)
蘆屋 千愛(あしや せら)
おばあさん
その他

■台本

和馬と千愛が歩いている。

和馬「千愛先輩、もうすぐですよ」
千愛「……和馬くん。あなたは、本当に厄介ごとを持ってくる才能があるわね」
和馬「……やっぱり、本物ってことですか?」
千愛「ここからでも、霊力……いえ、妖力になりかけてるわね。とにかく、邪気を感じるわ」
和馬「そうですか。やっぱり、千愛先輩に来てもらってよかったです」
千愛「……また、借金が増えるわよ」
和馬「ははは。今更じゃないですか」
千愛「……はあ。本当にお人よしね」

和馬(N)「僕は学校の生徒会のような組織、生物研究会、略して、生研(せいけん)に所属している。主な仕事は、いわゆる学校内で起こるもめ事を解決することだ。最近は、学校で怪奇現象が起こることが多く、陰陽師である蘆屋千愛先輩に手伝って貰っている。……もちろん、有償で。そして、そのお金が払えないので、千愛先輩に奴隷のようにこき使われているのだ」

千愛「それにしても、和馬くん。学校外というのは、置いておくとして、その人は生徒ですらないのでしょう?」
和馬「はい。70過ぎのおばあちゃんです」
千愛「……それなら、生研の範囲外じゃなないのかしら?」
和馬「はい。だから、今回は個人的に、問題を解決しようかと思いまして」
千愛「……解決するの、私よね?」
和馬「うっ! だ、だから、その分はツケということで……」
千愛「まあ、いいけれど……あなたが生きている間に返しきれるかしら」
和馬「もう、そんなに貯まってるんですか!」
千愛「これじゃ、来世も私の奴隷、確定ね」
和馬「うう……。すでに来世の運命も握られてるなんて……」

そのとき、遠くから声がする。

おばあさん「ここに入るなって、何度言わせるんだい!」
子供1「うわーん!」
和馬「あ、いました。あの人です」
千愛「子供に対して、あそこまで高圧的に接するなんて……」
和馬「あ、やっぱり引いちゃいますか?」
千愛「是非とも、見習いたいものだわ」
和馬「……そっちですか。けど、あの人、凄く良い人なんですよ?」
千愛「それは和馬くんがMだからじゃないかしら?」
和馬「そういう意味で言ったわけじゃないですよ!」
おばあさん「ちょっと、あんた! 私の家の前を通るなら、通行料払いなさい!」
男性「ええ? そんな、勝手な」
おばあさん「払えないなら、通さないよ! 引き返しな!」
和馬「……」
千愛「確かに私好みの人物のようね」
和馬「いや、違います、違います! 普段はああですけど、本当は良い人なんですよ」
千愛「子供を溺愛する親バカみたいな発言ね」
女の子「あっ!」

女の子が転ぶ音。

女の子「うわーん。痛いよー」
和馬「あ、見てください。ほら!」
おばあさん「あらあら、お嬢ちゃん。大丈夫かい?」
女の子「うわーん。ひざ擦りむいちゃったよー」
おばあちゃん「あらあら、大変。それじゃ、今からおまじないしてあげる」
女の子「おまじない?」
おばあちゃん「ああそうだよ。まずは、お膝に絆創膏を貼って……」

ぺたりと絆創膏を貼る音。

おばあちゃん「目をつぶって、口をあげてごらん」
女の子「うん。あーん」

コロンという音がする。

女の子「あ、アメだ! 甘ーい!」
おばあちゃん「だろう? 最後に、口の中のアメ玉が無くならないうちに家に帰れれば、痛いのは消えるの」
女の子「うん。わかった。ありがとう!」
おばあちゃん「ああ。そうだ。もう、ここに来たら駄目だよ。遊ぶなら、他のところで遊びなさい」
女の子「どうして?」
おばあちゃん「この辺りはこわーい、お化けがいるの。そのお化けが悪さをするんだよ。お嬢ちゃんが転んだのも、そのお化けのせい」
女の子「……怖いね。わかった。今度は違う場所で遊ぶね」
おばあちゃん「うん。良い子だね」
女の子「ありがとう、それじゃ、バイバイ」

女の子が走って行く。

千愛「……自分でも気づいているみたいね」
おばあちゃん「なんだい、あんたは!?」
和馬「どうも、おばあちゃん」
おばあちゃん「あっ! またあんたかい! 何度、来るなと言ったらわかるんだい!」
千愛「……土地神」
おばあちゃん「え?」
千愛「ここは霊力のたまり場みたいね。そして、あなたには多くの守護霊がついている」
おばあちゃん「……」
和馬「どういうことですか?」
千愛「本来、守護霊というのは、文字通り憑いている人間を守ろうとするわ」
和馬「……いいことじゃないですか?」
千愛「そうね。でも、それはその人にとっていいことであって、他人からみたらどうかしら?」
和馬「……えっと」
千愛「和馬くん、カバンを貸してくれるかしら?」
和馬「え? あ、はい」

カバンを渡す和馬。

千愛「これをこの人に投げる……」

ビュンとカバンを投げる音。

和馬「え? ちょっと、危ないですよ! ……ぶっ!」

カバンが和馬の顔に当たる音。

和馬「……え? えっと、どうなってるんですか? 今、急にカバンが曲がった気が」
おばあちゃん「……」
千愛「今のように、この人に被害が加わりそうな場合は守ってくれる。それを他人に押し付けてでも」
和馬「……あっ!」
千愛「そう。つまり、この人がやっていることは、この場所に人を寄せ付けないことだたのよ」
和馬「……自分に降りかかる不幸を他人に向かわせないために……」
千愛「……そうよ。しかも、ここは霊力のたまり場。守護霊の力は増し、その影響範囲も広くなっているわ。正直、ここまで強力になっていると、何が起こるかわからないくらいにね」
おばあちゃん「……わかってるなら、立ち去りな。そして、もう二度と、ここには来るんじゃないよ」
和馬「……何とかなりませんか?」
千愛「簡単よ」

千愛が大きく息を吸う。

千愛「……斬」

ガラスが割れるような音。

千愛「……印」

何かが吸い込まれるような音。

和馬「ま、まさか、守護霊を祓ったんですか?」
千愛「違うわ。力の元を祓っただけよ。つまり、溜まった霊力を解放したの」
おばあちゃん「……」
千愛「和馬くん、消しゴム」
和馬「え? あ、はい」

消しゴムを渡す和馬。

千愛「いくわよ」

千愛が消しゴムを投げる。

おばあちゃん「あたっ!」

おばあちゃんに消しゴムが当たる。

和馬「……当たった」
おばあちゃん「……っ!」
千愛「もう大丈夫。これで、あなたのせいで、他の人が傷つくことはなくなったわ」
おばあちゃん「う、うう……ありがとうございます。ありがとうございます」

場面転換。
和馬と千愛が歩いている。

和馬「ありがとうございました、千愛先輩」
千愛「いいのよ」
和馬「今日の千愛先輩、優しいですね」
千愛「私も得したから」

ぺらりと札を出す。

和馬「なんですか、その札」
千愛「さっきの溜まった霊力を吸引しておいたの」
和馬「あ、それで得だったっていうことですか?」
千愛「ええ。その通りよ」
和馬「じゃあ、今回の分の報酬はチャラってことですね」
千愛「……それとこれとは別よ。労働3ヶ月ってところかしら」
和馬「千愛先輩の鬼―!」

終わり。

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