■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
瀧本(たきもと)
坂下(さかした)
■台本
シャー、ザッ、とスノーボードの滑る音。
そして、歓声が沸き上がる。
アナウンサー「早い早い早―い! 瀧本選手、現時点でぶっちぎりの一位です」
解説「いやあ、瀧本選手、やっぱり早いですね。ですが、次は坂下選手ですよ」
アナウンサー「そうでした! 日本が生んだ、スノーボードの天才児、坂下選手。この後、スタートです」
場面転換。
瀧本「……やられたよ、坂下。まさか、あの記録をさらに破られるなんてな」
坂下「これで、9勝9敗だ。次の大会がホントの決着だな」
瀧本「ああ。次は絶対に勝つ」
坂下「俺の方こそ」
瀧本「……にしても」
坂下「ん?」
瀧本「なんか、ぶっちぎりって言うのもつまんないよな」
坂下「どういうことだ?」
瀧本「いやさ、大体、優勝って、俺かお前か、じゃん」
坂下「まあ、な」
瀧本「それがつまないって話だよ」
坂下「しゃーねーよ。他の奴ら、雑魚過ぎだし」
瀧本「俺らが引退するまで、ずっと優勝は、俺かお前か、だろ?」
坂下「それか、二人同時に怪我するとかだな」
瀧本「なんだかなぁ。けど、あいつらって、なんのために大会に出るんだろうな」
坂下「どういうことだ?」
瀧本「ほら、優勝できないってわかってるわけだろ? それなのに、よく大会に出ようと思うよな?」
坂下「あー、確かに。俺だったら、練習する気もおきねーわ」
瀧本「だよなー。俺達がいる時点で、俺ならスポーツ変えるよ」
坂下「俺達、天才過ぎるからなー」
瀧本「そう考えると、可愛そうだよな」
坂下「ハンデとかあるといいのにな」
瀧本「あー、ハンデか。確かに、ハンデがないと、他の奴らは俺達に勝てないよな」
坂下「……なあ、次の大会さ、ほかの奴らにハンデやらないか?」
瀧本「どうやって?」
場面転換。
アナウンサー「さあ、始まりました。ジャパンカップ。ここで勝った方が、オリンピックへの切符に大きく前進することができます。……いえ、確定すると言っても過言ではないでしょう」
解説者「試合前のインタビューで坂下選手と瀧本選手、共に秘策があるとのことでした。これは楽しみですね」
アナウンサー「そうですね。これは新記録の予感がします」
場面転換。
瀧本「よお、準備してきたか?」
坂下「ああ。ほら、これ。手首と足首につける」
瀧本「何キロ?」
坂下「1キロずつ」
瀧本「おいおい。そんなんじゃ、ハンデにならなくないか? 俺、3キロのリストバンド用意してきたぞ」
坂下「じゃあ、俺は4キロにするぜ」
瀧本「俺は5キロだ」
坂下「まあ、いい。とにかく、今回は10勝目で、オリンピックがかかってる。ホントの勝負だ」
瀧本「ああ。頂上決戦だ」
場面転換。
アナウンサー「この結果はどうでしょうか?」
解説者「最悪ですね。瀧本選手、坂下選手、ともに最下位ですからね」
アナウンサー「それにしても、新しい選手が出てきましたね」
解説者「真下選手ですね。物凄いタイムが出ました。前回の坂下選手のタイムを塗り替えましたからね」
アナウンサー「これはもう、真下選手に確定といっていいんじゃないでしょうか」
解説者「そうですね。この大事な試合に調整できなかった瀧本選手や坂下選手が選ばれるのは厳しいといっていいでしょう」
終わり。