■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
おじいさん
子供×5人
女性×4人
■台本
おじいさん(N)「最近の子供は軟弱じゃ。この国は昔、武士という真の漢が存在していたはずなのに。どうしてこうなってしまったのじゃろうか。ワシが若い頃は、まだまだ気骨があるやつらが多かった。このままではこの国は衰退していってしまう。それだけはいかん。ワシが子供たちを鍛え直す。そう、今こそ、ワシは立ち上がるべきなのじゃ」
場面転換。
公園。
カチカチとゲームをする音。
子供1「お! 出た! レアものゲーット」
子供2「マジで? いいなー」
おじいさんがやってくる。
おじいさん「……お前ら、何をやっておる?」
子供1「え? 何って、ゲーム」
おじいさん「ばかもーん! 年配に向かって、なんじゃ、その言葉使いは!? ゲームです! と言わんか!」
子供2「(子供1に小声で)なに、この人? 知り合い?」
子供1「知らない」
おじいさん「こりゃー! ワシが話してるんじゃから、こっち向かんかー!」
子供1「は、はい……」
子供2「ご、ごめんなさい」
おじいさん「……で? なんで、こんなところでゲームなどやっておるんじゃ? ここは公園じゃぞ?」
子供1「え? 公園でゲームやっちゃダメってどこにも書いてませんけど」
おじいさん「たわけー! 公園なら、体を動かす遊びをせんか!」
子供2「ええ……」
おじいさん「ゲームなんぞ、家でもできるじゃろうが。いや、ゲームばっかりしとるから、そんなヒョロヒョロなんじゃ! ほれ! 立て! 体を動かす遊びをするんじゃ!」
子供2「えっと、急にそんなこと言われても、なにすれば……」
おじいさん「ふむ……そうじゃのう。よし! 鬼ごっこじゃ!」
子供1「ええー」
おじいさん「つべこべ言うな! ほれ、お前が鬼じゃ! 走れ!」
子供2「……」
おじいさん「早くせんか!」
子供2「はーい……」
子供2が走り出す。
おじいさん「ほれ、次はお前さんじゃ。追え! 走れー!」
子供1「はーい……」
子供1が走り出す。
おじいさん「どうじゃ? やってみると面白いじゃろ」
子供1「……だる」
場面転換。
公園。
子供たちがサッカーをやっている。
子供3「パスパスパス!」
子供4「それ!」
子供3「ナイスパス」
おじいさんがやってくる。
おじいさん「おい、お前ら。何をやってるんじゃ」
子供3「え? サッカーですけど」
おじいさん「ふむ。体を動かす遊びをしているのはいいな」
子供3「どうも……」
おじいさん「ワシはそこの向かい側に住んでおるんじゃが」
子供4「はあ」
おじいさん「ここでボール遊びをすれば、大体は、家に飛んできて、窓ガラスが割れるものじゃ」
子供3「……危ないから、サッカーをやるなってことですか?」
子供4「でも、俺ら、ちゃんと気を付けてやってますよ?」
おじいさん「馬鹿者!」
子供3「ひっ!」
おじいさん「逆じゃ逆!」
子供4「逆?」
おじいさん「なんで、窓ガラスを割らん? これじゃ、ワシが怒れないじゃないか!」
子供3「……?」
おじいさん「昔はな。ワシもよく、近くの家の窓を割って、おじいさんに追いかけられたものじゃ。そして、そのときに、大人の怖さ、悪いことをしてしまったときの罪悪感、貰ったゲンコツの痛さ。そういうものを色々と学ぶものなのじゃよ」
子供4「はあ……」
おじいさん「じゃが、お前らがワシの家の窓ガラスを割らなければ、ワシは怒れん。お前らが何もしてないのに、ワシが怒れば、ワシがおまわりに捕まってしまう」
子供3「まあ、それは当然ですよね……」
おじいさん「じゃから、割れ! ワシの家の窓を! ほれ、あそこじゃ! やれ!」
子供3「……おい、もう行こうぜ」
子供4「そうだな」
子供3と子供4が歩いて行ってしまう。
おじいさん「こりゃ! どこへいくんじゃ! 窓ガラス、割っていけ!」
場面転換。
女性1「あらー、それは大変ねぇ」
女性2「そうなの。でも、無理やり学校に行かせるのもどうかと思って」
女性1「いいんじゃない? 勉強なんて、家でもやれるんだし」
女性2「そうよね」
おじいさん「こりゃー! 何を言っておるんじゃ!」
女性1「きゃっ!」
おじいさん「奥さん! あんたの子供が不登校なのか?」
女性2「え、ええ。まあ……」
おじいさん「理由はなんじゃ? いじめか?」
女性2「ま、まあ……そうなるんですかね」
おじいさん「気合が足らん! たるんどる! よし! ワシが、ガツンと言ってやる!」
女性2「え? ちょ、ちょっと! 何言って……」
おじいさん「奥さんはそこの向かいの家だったな! よし!」
女性2「ダメですよ! あなたが行ったら……」
おじいさん「黙れー! そうやって母親が甘やかすから、子供が付け上がるんじゃ!」
女性1「ホント、止めた方がいいですよ。特に、あなたは……」
おじいさん「かー! あんたはそれでいいのか? 友人の子供が不登校なんじゃぞ! 人生を踏み外しても良いというのか!?」
女性1「いえ、今どき、学校に行かないくらい……」
おじいさん「そんなんじゃから、この国は軟弱になっていくんじゃ! もういい! 貴様らには頼まん!」
女性1「いや、頼むもなにも……」
女性2「あっ! ちょ、ダメですって!」
おじいさんがズカズカと歩いて行く。
場面転換。
ガシャンと窓が割れる音。
そして、ズンズンと家に入ってくる足音。
子供5「ひいっ!」
おじいさん「お前か、不登校だという軟弱者は?」
子供5「うう……。お前、何しにきたんだよ!」
おじいさん「馬鹿もん! 目上に対して、お前とはなんじゃ!」
子供5「ひぃ」
おじいさん「ったく。そんなんだから、イジメられるんじゃ」
子供5「……」
おじいさん「よいか。いいことを教えてやる。イジメる奴なんぞ、実は心が弱かったりするんじゃ」
子供5「……」
おじいさん「試しに、一発、ガツンとやってやれ。相手はビックリして、もう手を出してこなくなるものじゃ」
子供5「ほ、ホント?」
おじいさん「ああ、ホントじゃとも」
子供5「で、でも怖い……」
おじいさん「かー! なんて情けない! 一発でいいじゃ! ガツンと!」
子供5「ガツンと……」
おじいさん「そうじゃ! お前ならやれる! イジメなんてする、陰険な奴をぶっ飛ばしてやれ! イジメをする奴なんか殴られて当然じゃ!」
子供5「わかった。やってみる」
おじいさん「よし! いいぞ! その粋じゃ!」
子供5「やー!」
おじいさん「へ?」
ガンと殴られる音。
場面転換。
女性3「聞いた? あそこのおじいさん、子供に殴られてから、怖くて家から出て来なくなったそうよ」
女性4「聞いた聞いた。あれでしょ? その子、あそこの前を通るたびに、おじいさんに何かと文句言われてたんだってね」
女性3「近所だから、登校の道を変えるわけにもいかないって悩んでたって言ってたわよ」
女性4「でも、あの子のおかげで、おじいさん、静かになったわね。ホントよかった」
場面転換。
おじいさん(N)「最近の子供は軟弱だと思っていたが、なかなか、どうして。これなら、この国は安心じゃ。ワシが別に立ち上がらなくてもよいな。……べ、別に怖いとかそういうわけじゃないぞ! 本当じゃぞ!」
終わり。