■概要
人数:1人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス
■キャスト
亜梨珠(ありす)
■台本
亜梨珠「いらっしゃい。亜梨珠の不思議な館へようこそ」
亜梨珠「……あら? 本屋に寄ってきたのね。本は結構読むのかしら?」
亜梨珠「……ふふ。わかるわ。いつか読もうと思って、買うのだけど、結局は積んだままになるのよね」
亜梨珠「読み始めると、熱中するのだけど、本を開くまでが億劫になるのよ」
亜梨珠「へー。あなたも一緒なの。もしかして、部屋には本の山が出来てるのかしら?」
亜梨珠「ふふっ。図星みたいね」
亜梨珠「今では電子書籍、なんて言ってタブレットの中に入れることで、読みやすくはなっているのだけれど……」
亜梨珠「どうしても、本と言ったら、紙の感覚が抜けないのよね」
亜梨珠「紙には紙の良さがあるのよ。それも含めて、私は本が好きなの」
亜梨珠「そういえば、あなたはどんな本を読むのかしら?」
亜梨珠「……私? そうね、私は結構、幅広く読むのだけれど、歴史書やうんちくの本なんかが好きだわ」
亜梨珠「なんというか、新たな知識を得られるっていう感じが好きなのかもしれないわね」
亜梨珠「……ああ、そうだ。今日はそんな本にまつわるお話をしようかしら」
亜梨珠「その男の子は、生まれつき体が弱くて、家で本ばかり読んで過ごしてきたの」
亜梨珠「本人は本が好きだし、そのことについて、一度も不満に感じたことはなかったそうよ」
亜梨珠「本さえあれば、それでいいってくらい、好きだったようね」
亜梨珠「でも、まわりはそんな男の子ことをよく思ってなかったみたい」
亜梨珠「今みたいに、男女平等が浸透していなかった時代だったこともあって、男は外で遊ぶことを望まれていたの」
亜梨珠「だから、家の中で本ばかり読んでいる男の子を馬鹿にしていたみたい」
亜梨珠「体の成長も早くに止まってしまって、周りの人たちよりも、二回り以上背が低かったの」
亜梨珠「それは外に出ないからだ、なんて言われて、無理やり外へ引っ張り出されたこともあったみたいだけど、その男の子は外で本を読み続けたらしいわね」
亜梨珠「そして、時間が経ち、気付けば同年代だけではなく、成人した人の中でも、一番背が低い状態になっていたの」
亜梨珠「そのことで、さらに周りはバカにして、男の恥さらし、なんて言葉も投げかけられたみたい」
亜梨珠「それでもその男の子……いえ、男は本を読んで過ごしていたそうよ」
亜梨珠「そんなある日。男は図書館の館長に、読む本がなくなったから、新しい本を入荷して欲しいと願い出たの」
亜梨珠「館長は対応するのが面倒で、男に対して、読む本がなければ、書いたらどうかと冗談交じりで言ったらしいわ」
亜梨珠「その言葉を聞いた男は、今まで書くなってことは意識していなかったから、かなりの衝撃を受けたの」
亜梨珠「そこで、男は今まで得た知識をまとめるための本を書いたわ」
亜梨珠「その本は瞬く間に全国に広がり、読者は、その男の知識量に驚いたようね」
亜梨珠「学者が、知識を得るためにその男のもとへと訪れるほどだったらしいわ」
亜梨珠「そんな男を、周りどころか、誰もバカにする人はいなくなったの」
亜梨珠「確かに、その男は町の中の成人の誰よりも背が低かったわ」
亜梨珠「でも、その知識量は世界中の誰よりも高かったの」
亜梨珠「男にとって、背の高さなんてなんの問題にもなっていなかったわけね」
亜梨珠「ふふ。どうだったかしら?」
亜梨珠「今回は本の素晴らしさと、人に劣る部分があっても、勝る部分があれば関係ないってお話ね」
亜梨珠「だから、あなたも本は積むだけじゃなくて、ちゃんと読むことをお勧めするわ」
亜梨珠「……まあ、私もなんだけれど」
亜梨珠「はい、これで、今回のお話は終わりよ」
亜梨珠「よかったら、また来てね。さよなら」
終わり。