【フリー台本】なんとなく

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■概要
人数:2人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
兵吾(ひょうご)
花音(かのん)

■台本

兵吾(N)「世の中は色々と面倒くさい。何が面倒くさいかというと、色々と決めなくちゃいけないからだ。例えば、朝は何時に起きるか、朝食は何を食べるか、どんな服を着るか、なんて小さいことから、どんな学校に入学するのか、部活は何をするのか、なんていう将来を決めるようなことまで色々だ。昔から僕は決めることが苦手だった。……いや、決めるための理由を考えるのが面倒だった。だから、いつも、何となくきめてきたのだ」

場面転換。

花音「んー。んー。迷うなぁー。どれにしようかなぁ。兵吾は何味にするか決めたの?」

兵吾「ん? んー。ラムレーズン」

花音「あれ? あんた、レーズン好きだっけ?」

兵吾「いや、別に」

花音「なら、なんでラムレーズンを選んだのよ?」

兵吾「なんとなく」

花音「……聞いた私がバカだったわ」

場面転換。

花音「んー。んー。こう行って、ここから山手線に乗って……。あー、ダメ! これじゃ10分しかいられない! 全然、時間足りないわ!」

兵吾「……」

花音「……ちょっと、兵吾。あんたはもう決めたの?」

兵吾「なにが?」

花音「修学旅行の自由時間。どこに行くかよ」

兵吾「あー。渋谷にした」

花音「渋谷かー。確かに渋谷もいいわよね。で、渋谷のどこに行くの?」

兵吾「んー。別に決めてない。当日、ブラブラする」

花音「はあ? 行く場所決めてないのに、渋谷にしたの? てか、大体、なんで渋谷にしたよ?」

兵吾「何となく」

花音「……ああ、まあ、そりゃそうよね。兵吾だもんね。理由なんてあるわけないか」

兵吾「そうだな」

花音「少しは否定しなさいよ。ったく。この調子じゃ、高校も何となくで決めそうね」

兵吾「よくわかったな。何となくで決めた」

花音「あんたねぇ、大事な事なんだから、悩みなさいよ。馬鹿なの?」

兵吾「成績学年順位、20位」

花音「そう言うこと言ってんじゃないわよ! ったく! あんたと一緒の高校行くために、私がどれだけ苦労してると思ってるのよ!」

兵吾「ん? なら、別の高校行けばいいんじゃないか?」

花音「バカ!」

場面転換。

兵吾「……ん?」

花音「だーかーら! 私達、もう高校2年生でしょ? で、高校2年ってことは、青春真っ盛りというわけ! で、青春と言えば恋! 恋って言えば彼氏! ……だから、その……あんた、私と付き合いなさいよ」

兵吾「……わかった」

花音「へ? いいの?」

兵吾「ああ」

花音「……付き合うって、彼氏になるってことなんだけど」

兵吾「わかってる」

花音「そっかそっか。なんだかんだ言って、兵吾も私のこと好きだったってことね」

兵吾「あー、まあ、そうだな」

花音「……なによ、その煮え切らない返事は。私のことが好きだから付き合うんじゃないの?」

兵吾「あー、いや、何となく」

花音「バカ!」

場面転換。

ガチャリとドアが開く音。

花音「ただいまー。あー、疲れた……」

兵吾「お帰り。晩飯出来てるぞ」

花音「え? ホント? ありがと」

兵吾「今日は仕事が早く終わったからな」

花音「いやー、助かるわ。で? 晩御飯は何?」

兵吾「カレーとシチュー」

花音「……カレーとシチュー?」

兵吾「ああ」

花音「いやいやいや。え? なんで? どっちも汁物っぽくない? てか、カレーとシチューって合わないでしょ」

兵吾「そうか?」

花音「大体、なんで、カレーとシチューにしたのよ」

兵吾「何となく」

花音「……はあー。そりゃそうよね。兵吾だもんね。理由を聞いた私がバカだったわ」

兵吾「ああ、そうだ、花音」

花音「なによ?」

兵吾「結婚しないか?」

花音「ぶほっ! ごほっごほっごほっ! ちょ、なんなのよ、急に!」

兵吾「急だったか? この前、そろそろ考えろって言ってただろ」

花音「いや、言ったけどさ。このタイミングはないでしょ。なんで、このタイミングなのよ……って、ごめん。理由なんてないわよね。何となくでしょ」

兵吾「ああ」

花音「……はいはい。で、私を選んだのも何となくなんでしょ」

兵吾「いや。花音が好きだからだ。花音と結婚したいと思ったから、プロポーズした」

花音「な、な、なんなよ! それなら、尚更、このタイミングないでしょ! バカ!」

兵吾「嫌か?」

花音「あんたにそんな風に言われたら、断れるわけないでしょ。……もう」

兵吾(N)「初めて、何となくじゃなく、ちゃんと考えて決めた。ちゃんと考えて決めるのも悪くないな」

終わり。

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