■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
光喜(こうき)
ひまり
■台本
ひまり「光喜くん。告白っていうのは、タイミングが大事なんだからね。雰囲気っていうか、ロマンチックにしてくれないと、オッケーしないよ」
光喜(N)「4年間、ずっと思い続けていたひまりに、告白しようとしたときに言われたことだ。最初は遠回しに断られたのだと思ったのだが、よくよく考えてみたら、ロマンチックに告白すれば、オッケーを出してくれるってことだと気づいた。だから俺は、最高の告白をするために、実に半年以上の時間をかけて計画を練った」
場面転換。
光喜「ひまり。今度の土曜日の夜は、空けておいてほしい」
ひまり「土曜日の夜? えーっと、夏祭りの日?」
光喜「そ、そう」
ひまり「……んー。それって、あれかな? 私も浴衣着て行った方がいいかな?」
光喜「……も?」
ひまり「……もう。まさか、特別な日になのに、普通の格好で来るつもりだったの?」
光喜「あー、いや、うん。……俺も浴衣用意しておく」
ひまり「ふふふ。よろしい。……ねえ、その日は楽しみにしてていいんだよね?」
光喜「あ、ああ! 期待しててくれていい」
ひまり「……うん。じゃあ、楽しみにしておくね」
光喜(N)「よし。これで当日は計画通りに行動するだけだ」
場面転換。
祭りの賑やかな音。
ひまり「光喜くん、お待たせ」
光喜「……」
ひまり「ん? どうかした?」
光喜「……あ、いや、その、浴衣、凄く可愛いなって思って」
ひまり「ふふふ。ありがとう。スタートは合格、かな」
光喜「え? スタート?」
ひまり「あのねー。もう、始まってるんだから。気を付いちゃダメだよ。不合格ならやり直しだからね」
光喜「だ、大丈夫。オッケー貰える自信はあるよ」
ひまり「ふふふ。よろしい。じゃあ、まずはどうする?」
光喜「少し、二人で祭りの出店回ろう」
ひまり「うん」
場面転換。
祭りの賑やかな音。
光喜「うう……。格好悪いところを見せてしまった……」
ひまり「あはは。いいよ、あんなの。射的や金魚すくいが下手だからって、気にしないよ。……逆にちょっと可愛かった、かな」
光喜「そ、そう?」
ひまり「うん。それで? 次はどうするの?」
光喜「あ、ヤバい! ちょっとゆっくりし過ぎた!」
場面転換。
自転車を漕ぐ音。
光喜「はあ、はあ、はあ……」
ひまり「……降りようか?」
光喜「いや、いい。ひまりを乗せて、登り切って見せるから。おりゃー」
ひまり「ふふ。頑張って」
場面転換。
ひまり「うわー、きれー!」
光喜「へへ。この場所は俺が見つけた秘密の場所なんだ。夜景がよく見えるだろ?」
ひまり「うん」
光喜「あとは、ここで祭りの最後の花火が始まるのを待つだけだ」
ひまり「……でも、光喜くん」
光喜「なに?」
ひまり「この方向だと、花火見えないよ」
光喜「……え? あっ!」
ひまり「でも、ありがとう。嬉しいよ。こんな夜景がきれいに見える場所に連れてきてくれて」
光喜「う、うん……」
ひまり「ねえ、反対側に行こう。そこからならきっと花火見えるよ」
光喜「いや、あの……」
ひまり「ほらほら、落ち込まない落ち込まない。勝負はこれからだよ」
光喜「お、おう」
場面転換。
ガヤガヤと賑わっている。
ひまり「あー、こっちは人がいっぱいいるね」
光喜「違う場所、探そうか」
ひまり「でも、もう始まっちゃうよ」
光喜「うっ!」
ひまり「いいよ、ここで大丈夫」
光喜「ひまり……」
ひまり「でも、タイミングは気を付けてよ。ロマンチックは厳守だからね」
光喜「お、おう……」
すると、ポツポツと雨が降り始める。
ひまり「あれ?」
光喜「……雨?」
周りが騒がしくなり、大勢の足音が響く。
ひまり「みんな、帰っちゃうね」
光喜「……」
ひまり「私達も帰ろうっか」
光喜「……いや、でも、その……」
ひまり「きっと、花火大会も中止になると思う……」
光喜「……」
場面転換。
シトシトと降る雨の中、傘をさして歩いている2人。
光喜「……ごめん」
ひまり「どうして、光喜くんが謝るの?」
光喜「だって……」
ひまり「雨は光喜くんのせいじゃないよ」
光喜「……」
雨の音が止まっている。
ひまり「あれ? 雨、止んだね」
光喜「あ、ホントだ」
ひまり「うーん。止むの、ちょっと遅かったね」
光喜「そうだね……」
ひまり「そうだ。ちょっとコンビニ寄っていい?」
光喜「う、うん」
場面転換。
公園。
ひまり「この辺でいいかな」
光喜「……公園で、花火するの?」
ひまり「打ち上げ花火の代わり……にはならないかもだけど、花火には変わらないでしょ?」
光喜「う、うん」
場面転換。
パチパチと線香花火の火花の音。
ひまり「ふふふ。綺麗だね」
光喜「うん」
ひまり「私ね、今日は雨が降ってよかったなって思うんだ」
光喜「……え? どうして?」
ひまり「だって、こうやって2人で花火できたでしょ?」
光喜「……ひまり」
ひまり「私ね、大勢で打ち上げ花火を見るより、こうやって2人で線香花火をする方が、よかったよ」
光喜「……」
ひまり「それにね。今日は、光喜くん、私の為に頑張ってくれて、すごく嬉しかったんだ」
光喜「……うう」
ひまり「今日の光喜くん、とっても素敵だったぞ」
光喜「うおー! ひまりー! 大好きだー!」
ひまり「もう! タイミングが大事だって言ったのに―!」
光喜「……あっ!」
終わり。