■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
拓海(たくみ)
男×2
祈祷師
■台本
拓海(N)「俺は今、事故物件の部屋に住んでいる。なんでも、若い女性がストーカー被害にあったのだとか。幽霊の存在を信じていないとか、怖がりじゃないとか、そういうことではない。住んでいる理由は単純に格安だからだ。病気になっても、病院にさえ行けないほどの俺にとって、この部屋の家賃はまさにうってつけだったのだ」
場面転換。
ガチャリとドアが開く。
拓海「あー。ダルイ。……風邪ひいたかな。熱も上がってきたっぽいし、今日は早めに寝るか……」
ゴロンと横になる拓海。
場面転換。
ガチャリとドアが開く音。
拓海「……え?」
トコトコと部屋の中へ歩いて来る音。
拓海「うわああああああ!」
ガバッと起き上がる音。
拓海「ゆ、幽霊だ!」
拓海が慌てて、ドアを開けて部屋を出ていく。
拓海「うわあああ! 助けて!」
叫びながらアパートから出ていく拓海。
場面転換。
拓海(N)「結局、その日は、外で一夜を過ごしたのだが、ずっとこのままというわけにもいかない。そもそも、引っ越しするお金もなければ、他の所に泊まるお金もないのだ。やっぱり、帰るしかないのだ」
場面転換。
ガチャリとドアが開く音。
拓海「……ごくり」
部屋の中へ歩いていく拓海。
拓海「ふう。いなくなったようだな。このまま、ずっと出て来ないといいんだけど……」
そのとき、ガチャリとドアが開く音。
拓海「……っ!?」
女が部屋の中へ入って来る音。
拓海「で、で、出た!」
女「……」
ガチャリと冷蔵庫を開ける音。
弁当を取り出して、電子レンジを掛ける。
拓海「……え? 冷蔵庫から弁当を取り出した? しかも、電子レンジを使うなんて……。随分と変な幽霊だな……」
拓海(N)「落ち着いて見てみると、彼女はごくごく普通に見えた。どこかが欠損しているわけでもないし、恐ろしい形相をしているわけでもない。……おそらく、彼女は地縛霊なのだろうと思う。自分が死んでいることに気づいていない。だから、自分が生きているときと同じような行動をする。こうやって考えてみると、特に俺に害はなさそうだ。だから、俺は幽霊との同居生活を受け入れることにした」
場面転換。
ざわざわと住人たちが集まっている。
男性1「最近、幽霊が出るとの相談がとても多く、住人の皆さんから少しずついただいた寄付金を使いまして、祓いをしてもらうことにいたしました」
拓海「おお! いいね……って、彼女もいるじゃん。お祓いされたら消えるのかな?」
男性2「いやあ、あんたも大変だろ。あんたの部屋からだろ? 幽霊が出るのは?」
拓海「ええ、まあ……」
祈祷師「はああああ!」
シャンシャンシャンとお祓いの儀式が始まる。
拓海「……あれ? なんだ? 俺の体が透けて……」
男性2「あんたも物好きだよな。2人も亡くなった部屋に、堂々と住むなんてさ」
拓海「意識が……薄くなって……」
終わり。