■概要
人数:1人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス
■キャスト
アリス
■台本
アリス「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」
アリス「……おや? ボーっとして、どうされました?」
アリス「……奇跡を見た、ですか?」
アリス「具体的には、どういう奇跡を見たのです?」
アリス「……なるほど。ただ、それは奇跡というよりも、予知夢といったところでしょうか」
アリス「夢で見た内容が、そのまま起こったってことですよね?」
アリス「ふふふ。もしかすると、あなたは何か凄い能力を持っているかもしれませんね」
アリス「ですが、逆にただの偶然である可能性も高いですよ」
アリス「……そんなわけはないという顔をしていますね」
アリス「では、要素を分解して考えてみましょう」
アリス「あなたはここに来る途中に、ある老人に出会ったのですよね?」
アリス「そして、その老人というのが、夢に出て来た人、そっくりだったと」
アリス「これはこのように考えることができます」
アリス「あなたは、ここへ来る時間帯はいつも大体同じです」
アリス「そして、同じように、その老人も同じ時間に同じところへ行く習慣があったとしたらどうですか?」
アリス「つまり、あなたとその老人は、何度もすれ違っていたわけです」
アリス「無意識に顔を覚えていた、と考えるとどうでしょうか?」
アリス「それと、その老人が腰を痛めていて、動けなかったんですよね?」
アリス「それをあなたが背負って、信号を渡ったと」
アリス「これも、こう考えることができます」
アリス「その老人ですが、腰が曲がっていたとか、杖を付いていた、さらには腰を手で叩いていたという動作をしていたなどありませんでしたか?」
アリス「……覚えがありそうですね」
アリス「では、あなたがとる行動というのは、夢と変わらないのではないでしょうか?」
アリス「つまり、夢でも、現実でも、老人が腰を痛めて動けないのを見た時、あなたは背負って信号を渡るというのは、同じではないでしょうか」
アリス「あなたは無意識に、腰が悪そうな老人を覚えていて、夢の中で、もし、その老人が動けなくなったらどうするのだろうかと思ったのではないでしょうか」
アリス「ある意味、予知ではありますが、確率的に考えて、そこまで低い事象ではありません」
アリス「ましてや、奇跡というほどではないのではないでしょうか」
アリス「ふふふ。あまり、納得がいっていない様子ですね」
アリス「確かに、奇跡を体験したと思ったのに、それを否定されると、面白くないですよね」
アリス「ですが、奇跡というのは昔から、作られたものも多いのですよ」
アリス「こんな話があります」
アリス「ある学者が、研究の為、未開の地へと入っていきます」
アリス「すると、そこで、ある部族と遭遇して捕まってしまいます」
アリス「その部族は学者を生贄に捧げようとします」
アリス「そんなとき、学者はあることを思い出します」
アリス「そして、学者は、自分を生贄にすると、神の怒りを買うと言います」
アリス「ですが、その部族はその学者の言うことを信じませんでした」
アリス「そんなとき、日食が起きました」
アリス「部族は驚き、慌ててその学者を解放し、神の奇跡を起こす者として、祭り上げたそうです」
アリス「他にも、こんな話があります」
アリス「山奥の村に住む少女が、ある日、神の予言を聞いたと村人に言います」
アリス「それは隣の村の人間が、行商人としてやってくるといった内容だったそうです」
アリス「最初は誰も信じませんでしたが、その少女の言うことが本当に起こりました」
アリス「村人たちは、その少女を神の巫女の奇跡ともてはやしました」
アリス「ですが、真相は、村の外れにある洞窟が隣の村の集会所の近くに繋がっていて、その集会の話を聞いていただけだったということです」
アリス「どうですか?」
アリス「奇跡というのは、意外と簡単に作り出せたりすることができます」
アリス「不思議なことが起こったとしても、奇跡と考えて終わるのではなく、柔軟に考えることも必要かもしれませんね」
アリス「今回のお話はこれで終わりです」
アリス「それではまたのお越しをお待ちしております」
終わり。