■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
真衣(まい)
なつ
九郎(くろう)
女生徒1~2
占い師
■台本
戦国時代。
村の外れ。
なつ「九郎……」
九郎「……なつ。絶対に生きて帰る。待っててくれ」
なつ「……ねえ、二人で逃げようよ」
九郎「大丈夫だ。戦で手柄を立てれば、おじさんだって、結婚を認めてくれる」
なつ「……私はこうやって一緒にいられるだけでいいのに」
九郎「……大丈夫だ。絶対に、絶対に生きて帰って来るから」
なつ「……九郎」
場面転換。
携帯のアラームの音。
真衣「……もう、朝か」
起き上がって、携帯のアラームを消す真衣。
起きて、洗面所に向かい、歯を磨き始める。
真衣(N)「私には前世の記憶がある。時々、ああやって、はっきりと夢で見るのだ。……そして、前世の私はあの後、ずっと九郎を待っていた。だけど、彼が帰って来ることはなかった……」
場面転換。
教室内。
ガラガラとドアを開けて、教室内に入って来る真衣。
真衣「おはよー……」
女子生徒1「あ、真衣! いいとこに来た。この子が見て欲しいって」
女子生徒2「お、お願いします……」
真衣(N)「私は自分の前世の記憶を覚えているだけでなく、相手の手を握ることで、一瞬だけ相手の前世を見ることができる」
真衣「はあ……。前世なんて知ったって何にもならないと思うよ」
女子生徒「それでも見て欲しいんです。国光くんと、前世でも結ばれてたのかなって……」
真衣「そんなに都合よくないよ。前世も結ばれてた、そう思っておけばいいのに」
女子生徒「はっきり知りたいんです!」
真衣「……わかった。その代わり、どんな結果が出ても、恨まないでね」
女子生徒「はい」
真衣「じゃあ、手を出して」
女子生徒が手を出し、その手を握る。
真衣「……」
女子生徒2「ど、どうですか?」
真衣「前世は江戸時代の商人の娘ね。商人の男と結婚したみたい」
女子生徒2「その商人の男の人が国光くんってことは……」
真衣「……」
女子生徒2「そ、そうですか……。ありがとうございました」
トボトボと歩いていく女子生徒2。
女子生徒1「あーあ、可愛そ」
真衣「もう、だから連れてこないでって、言ってるのに」
女子生徒1「しょうがないでしょ。あんたが人の前世を見れるって噂は学校内で広まってるんだからさ」
真衣「……」
女子生徒1「それに、色々な人の前世を見るのは、真衣にとっても都合がいいでしょ?」
真衣「……ううん、あれはもういいんだよ。諦めたから」
女子生徒1「……そうなんだ。あ、そうだ。駅前のビルに、新しく占い屋が出来たんだってさ」
真衣「ふーん」
女子生徒1「その占い屋っていうのが、前世を見てくれるんだって」
真衣「ふーん」
女子生徒1「いや、ふーん、じゃなくて……。本物かどうか、確かめてきてよ」
真衣「そういうのは止めたの。大体、占い師に対して、失礼でしょ。っていうか、業務妨害だよ」
女子生徒1「えー、いいじゃん! もし、本物だったら、私もその占い師に見てもらいたいからさ」
真衣「やだ」
女子生徒1「お願い―」
場面転換。
駅前の道を歩く真衣が立ち止まる。
真衣「……ここよね」
ビルに入ってく真衣。
場面転換。
占いの館の中。
占い師「こんにちは。今回はどのようなことで?」
真衣「前世を見てもらえませんか?」
占い師「わかりました。では、手を出してください」
真衣「え?」
占い師「どうかしましたか?」
真衣「いえ……」
出した真衣の手を握る占い師。
占い師「……」
真衣「ど、どうですか?」
占い師「……ようやく」
真衣「え?」
占い師「いえ、申し訳ありません。……あなたの前世は戦国時代の村長の娘です。村の男と恋に落ち、身分不相応ということで父親に反対されていました。そこで、男は戦で手柄を立てることで、結婚を認めて貰おうとしました」
真衣「っ……」
占い師「男は戦に参加し……そのまま帰らぬ人になりました。そして、あなたの名前は……なつ」
真衣「ど、どうして、そこまで知ってるんですか!? 相手の記憶は一瞬しか見えないはずですよ」
占い師「はい。一瞬しか見えませんでした」
真衣「じゃあ、なぜ……?」
占い師「知っていたから」
真衣「知っていた……?」
そっと占い師の手を握る真衣。
真衣(N)「私は咄嗟に、占い師の手を握っていた」
占い師の前世の記憶。
九郎「……大丈夫だ。絶対に、絶対に生きて帰って来るから」
場面転換。
戦場で倒れている九郎。
九郎「なつ……。すまない」
前世の記憶はここまで。
真衣「……九郎? 九郎なの?」
占い師「ごめん……待たせた」
真衣「……バカ! 待たせ過ぎだよ」
占い師「……そうだよな。待たせすぎだよな」
真衣「でも……お帰りなさい」
占い師「……ただいま」
終わり。