■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
康介(こうすけ)
玲子(れいこ)
麻美(まみ)
■台本
リビング。
康介と玲子が向かい合ってご飯を食べている。
康介「玲子さん、どう? 美味しい?」
玲子「康介くんは、料理『だけ』はホント、凄いわよね」
康介「へへへへ。お婿に欲しくなった?」
玲子「全然」
康介「もう! 意地を張らなくていいのに」
玲子「……(無視して食べ続ける)」
康介「夕ご飯は僕が作ったから、デザートは玲子さんにお願いしようかな」
玲子「え? 急に言われても困るわよ。そもそも、あたし、料理できないし」
康介「じゃーねー。デザートは玲子さん自身で!」
ガバッと襲い掛かろうとする康介の顔面をガンと殴る玲子。
康介「いててて! 冗談だよ、冗談」
玲子「その割には目が血走ってたみたいだけど?」
康介「そりゃ、玲子さんが目の前にいるんだもん。興奮して、目も血走るよ」
玲子「……ルール、忘れてないわよね?」
康介「も、もちろんだよ。玲子さんの半径50センチ以内に入らない。触れるのは絶対にNG。お風呂を覗かない。勝手に玲子さんの下着を洗濯しない、盗まない。料理と洗濯は僕の担当で、掃除と買い物、ゴミ出しは玲子さんの担当」
玲子「一つでも破ったら、シェア生活は終了。そういう約束だからね」
康介「わ、わかってるよ」
玲子「ホントに?」
康介「玲子さんは、僕がこの状況で物凄い我慢しているのをわかってないんだ! 玲子さんが目の前にいるんだよ? もう、理性を保つのがギリギリだって」
玲子「……はあ。我慢するくらいなら、ご飯は別々に食べてもいいのよ?」
康介「それは嫌だ! 一日の最大の楽しみを僕から奪わないでくれ!」
玲子「はいはい。わかったから、ドレッシング取って」
康介「はい」
玲子「ありがと」
康介「あっ!」
玲子「……子供じゃないんだから、手が当たったくらいでドキドキしないの」
康介「えー、ラブコメの王道じゃん」
玲子「っていうより、ルール破ってるんだけど」
康介「うっ!」
玲子「まあ、今のは私がお願いしたことだからいいんだけど」
康介「あーあ。こんなんじゃ、川の字なんて夢のまた夢だよ」
玲子「川の字?」
康介「あれだよ。玲子さんと、子供と、僕の三人で並んで寝るってやつ。僕、あれに憧れてるんだよねー」
玲子「……そもそも子供、いないじゃない」
康介「じゃあ、今から作ろう!」
ガバッと襲い掛かろうとする康介の顔面をガンと殴る玲子。
康介「いてて。冗談だよ、冗談」
玲子「ったく」
場面転換。
道を歩く、玲子。
すると、麻美がベビーカーを押しながら走り寄って来る。
麻美「あー、玲子じゃん!」
玲子「え? あ、麻美」
麻美「久しぶりー! 元気?」
玲子「元気、元気。……って、なに? その物体は?」
麻美「えへへへ。赤ちゃん。私の」
玲子「へー。いつの間に結婚したの? っていうより、結婚式に呼んでよ」
麻美「……」
玲子「あれ? なんか聞いちゃいけないこと聞いちゃった?」
麻美「そ、それより、玲子。いきなりだけどお願いがあるの!」
玲子「なに?」
麻美「この子……奈美を1日預かって!」
玲子「はあ!? いや、無理無理無理」
麻美「じゃあ、お願いね! あ、買ったものはレシート取っておいて、後で払うから」
麻美が走って行ってしまう。
玲子「ちょっとーー!」
奈美がキャッキャと笑う。
玲子「……どうすんのよ、これ」
場面転換。
ドアを開けて康介が家に入って来る。
康介「ただいまー」
奈美の鳴き声が聞こえる。
玲子「あ、康介くん」
康介「……な、ななななななっ!」
玲子「ああ、この子は……」
康介「いつの間に、僕の寝込みを襲ったの!? 起きてるときにしてよ!」
玲子「……なんで、あんたとの子って設定になってるのよ。そこは普通、浮気とか疑うんじゃないの? ああ、いや、付き合ってなけど」
康介「玲子さんがそんなことするわけないじゃん」
玲子「ま、まあ、そうだけどさ……」
康介「てか、すごい泣いてるね。大丈夫?」
玲子「正直、ギブアップ。ミルクもおしめも変えたのに、泣き止まないのよね」
康介「ちょっといい?」
康介が奈美を抱くと、ピタリと泣き止む。
玲子「すごい、泣き止んだ」
康介「たぶん、抱っこして欲しかったんだよ」
玲子「……随分、手慣れてるのね」
康介「え? 嫉妬?」
玲子「ち、が、う!」
康介「姉さんの……つまり、甥っ子の面倒を見てたときがあってさ。それで、色々慣れたんだよね」
玲子「へー」
場面転換。
康介が奈美にご飯を食べさせている。
康介「はい、あーん! 美味しい?」
奈美がキャッキャと声をあげる。
玲子「へー。ご飯を食べさせるのも上手いわね」
康介「単なる慣れだよ。玲子さんもそのうち上手くなるって」
玲子「別に上手くならなくてもいいわよ。どうせ、一日預かるだけなんだし」
奈美がキャッキャと笑っている。
玲子「……」
康介「さてと、奈美ちゃんをお風呂に入れようかな」
玲子「……私、やってみようかな」
康介「え? じゃあ、お願いしようかな」
場面転換。
お風呂場。
奈美がギャン泣きしている。
玲子「こここ、康介くん! 助けて―!」
康介がやってくる。
康介「大丈夫大丈夫。ゆっくり、お湯をかけてあげる感じで」
奈美が泣き止み、きゃっきゃと笑う。
玲子「……やるじゃない、康介くん」
康介「あははは。だから、慣れだよ。玲子さんだって、初めてなのに、上手いと思うよ」
玲子「そ、そうかな?」
場面転換。
ソファーに座り、なんとなくテレビを見ている玲子と康介。
奈美が欠伸をする。
康介「あれ? 奈美ちゃん、そろそろ眠くなったのかな?」
玲子「はあ……。私も今日は物凄く疲れたわ。もう寝ようかしら」
康介「わかった。なんかあったら呼んで」
玲子「……今日の康介くんは頑張ったと思うわ」
康介「え? あ、うん。ありがとう」
玲子「だから、その……ご褒美ってわけじゃないけど……その……」
康介「ん?」
玲子「夢を叶えてあげなくもないっていうか……」
康介「それって、まさか」
玲子「奈美もいるし、できるでしょ。川の字」
康介「い、いいの?」
玲子「今日だけの特別サービス」
康介「……やったぁーーー!」
場面転換。
リビングに布団を敷いて寝ている3人。
康介「えーっと、玲子さん」
玲子「なに?」
康介「これ……微妙に川の字になってなくない?」
玲子「そう?」
康介「離れすぎだよ、離れすぎ! 僕だけ、すっごい離れてるじゃない」
玲子「そう?」
康介「これじゃ、川の字じゃなくて、ただの一と二の字だよーー!」
終わり。