私は名探偵 4話

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
ライリー
ティーナ
ロレンス

■台本

洋館の廊下。

ライリー(N)「私の名前はライリー。名探偵と呼ばれて、早、半世紀が経った。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた。現在は探偵を引退し、毎日を気ままに過ごしている。……はずなのだが」

ティーナ「先生、この事件、どう思いますか?」

ライリー「……それよりも、ティーナくん。なぜ、私はここに連れてこられたんだね?」

ティーナ「探偵は事件現場にいるべきだと思います」

ライリー「いや、私はとっくに探偵を引退した身なのだが……」

ティーナ「第一の被害者はロシーヌさん。自室で首を吊った状態で発見されました。部屋のドアと窓には内側からしっかりと鍵がかかっていたそうです。これはそのとき、現場にいた人たちで確認したから間違いないそうです」

ライリー「……」

ティーナ「第二の犠牲者はロイさん。雪の中から死体が発見されました。死因は背中をナイフで刺されたことによるショック死とのことです」

ライリー「……」

ティーナ「第三の犠牲者はベインさん。胸を刺された状態で、物置に押し込まれていました」

ライリー「……」

ティーナ「で、この資料が、犠牲者の目撃情報と他の人たちの行動表です」

ライリー「ふむ……」

ライリーが。ティーナから紙を受け取る。

ティーナ「どうでしょう? 見事に全員にアリバイがあるといった状況です。どうやっても、そのとき、この屋敷にいた人間には殺害は不可能です。ただ、外は猛吹雪で、外部の人間が入り込んだと考えるのは難しいと思います」

ライリー「……ティーナくん。これはあくまで発見された順番であって、殺された順番とは限らないんじゃないか?」

ティーナ「……あっ! た、確かに」

ライリー「並び替えてみれば、犯人が犯したミスが見えてくるかもしれん」

ティーナ「さすが先生です」

ライリー「それじゃ、頑張り給え。私は食堂で紅茶でも淹れてもうらうよ」

ティーナ「……先生は謎を考えないのですか?」

ライリー「言っただろう? 私はもう引退した身だ」

ライリーが歩き出す。

ティーナ「……先生」

場面転換。

食堂。

椅子に座り、紅茶を啜るライリー。

ライリー(N)「この事件は綿密に練られた計画だ。しかもここはカラクリ屋敷……。トリックなど、それこそ山のように考えられる。つまり犯人の目的は、トリックを一つに絞らせないということだ。……その証拠に、私たちがここについたとき、全てのカラクリを丁寧に説明された。おそらく、隠していることはないだろう。つまり、これは私たち、探偵への挑戦状。全てのカラクリを見せた上で、正々堂々、勝負したいというわけだ。わざわざ、ティーナくんを使って、私を引っ張り出してきたということは、余程、自信があるのだろう」

そこにティーナがやってくる。

ティーナ「先生……。ダメです。ギブアップです。全然、謎が解けません」

ライリー「そうか……。君でも難しいか」

ティーナ「もう少しで、何かがつかめそうなのですが……」

ライリー「ふむ……」

ティーナ「……」

ライリー「……」

ティーナ「あの?」

ライリー「なんだね?」

ティーナ「ここは先生が、『情けないな』と言ってヒントを出してくれるところではないんですか?」

ライリー「言っているだろう。私は引退した身だ。もう君の先生ではない。それに、私にも解けないのに、ヒントを出すもなにもないだろう?」

ティーナ「え? 先生も解けていないのですか?」

ライリー「君は私を買いかぶり過ぎだ。君にも解けないのなら、私にも解けないさ」

ティーナ「そんな……」

ライリー「まあ、それくらい今回の犯人は用意周到というわけだな」

ティーナ「……では、一緒に考えていただけませんか? 二人で知恵を絞れば解けるかもしれません」

ライリー「……ティーナくん。何度、言わせる気なんだ。私はもう引退した身だよ」

ティーナ「それじゃ、先生はこの事件を未解決にしたままにするってことですか!? それでは被害者やその家族は浮かばれません」

ライリー「別に未解決にしたままにするとは言っていない」

ティーナ「……どういうことですか?」

ライリー「犯人がわかっているのに、わざわざ謎を解く必要はないということだよ」

ティーナ「え? 先生には犯人がわかっているんですか?」

ライリー「わかったというか、最初から一人しかいない」

ティーナ「……誰なんですか?」

ライリー「広場にみんなを集めてくれ」

場面転換。

洋館の広場に7人が集まっている。

ロレンス「……ライリー先生、ここに人を集めたということは、犯人がわかったということですか?」

ライリー「ああ。その通りだ」

ロレンス「へー。面白いですね。では、聞かせてください。犯人がどうやって犯行を行ったかを。そして、どんなトリックを使ったのかを?」

ライリー「……悪いが、君の思惑通りにはいかないんだよ。……ああ、いや、逆だな。君の思惑通りと言った方が正しいか」

ロレンス「……どういうことです?」

ライリー「私にはこの謎は解けなかった」

ロレンス「え?」

ライリー「……私の負けだよ」

ロレンス「ということは、俺の……勝ち?」

ライリー「ああ、そうだ。この館の持ち主であるロレンスくん。君の勝ちだ」

ロレンス「いやったー! やったぞー! あの稀代の天才探偵のライリーに勝ったー!」

ライリー「……すまないが、トリックの内容を……君がどうやって犯行を行ったかを聞いてもよいかね?」

ロレンス「ええ、もちろんですよ! まずは……」

場面転換。

ロレンス「……というわけです!」

ライリー「なるほど。実に見事なトリックだ」

ロレンス「ふふふふ。5年も費やしましたからね。まさに、完璧な計画ですよ」

ライリー「……そうだな」

ロレンス「はっはっは。では、私はこれで失礼しますよ」

ライリー「ん? どこに行く気だ?」

ロレンス「祝賀会です。自室にとっておきのワインを用意しているんですよ。祝杯というわけです」

ライリー「悪いが、君が行くのは自室ではなく、警察だ」

ロレンス「はあ? 何言ってるんだ、このおいぼれは? 俺は勝ったんだぞ!」

ライリー「そうだな」

ロレンス「なら、なんで勝った俺が! 勝者の俺が! 警察なんかに行かないとならない?」

ライリー「自白しただろ。自分の犯行を」

ロレンス「え?」

ライリー「みんなも聞いただろ?」

ティーナ「はい。確かに」

その場にいる全員がうんうんと頷く。

ロレンス「え? え? え? ちょっと待って」

ティーナ「もうすぐ、警察が来るはずです」

ロレンス「待って待って待って! そりゃないって! 俺、勝ったんだよ!」

ライリー「罪と勝負は関係ない」

ロレンス「いーやーだーあーーー!」

ライリー(N)「こうして、ロレンスは警察に無事に、警察に連れて行かれた」

場面転換。

ティーナ「今回もお見事でした」

ライリー「私は何もしていないよ」

ティーナ「事件が解決したのは先生のおかげです! では、また事件があれば、よろしくお願いします!」

ティーナが行ってしまう。

ライリー「いや、待て。私はもう……。はあ……やれやれ。いつになったら私は探偵を引退できるんだ?」

ライリー(N)「……私の名前はライリー。数々の事件を解決し、多くの犯人を逮捕してきた名探偵だ」

終わり。

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