■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
ライアン
オーウェン
ライラ
ヘンリー
男1~男2
女1~女2
■台本
ライアン(N)「今、僕らが住む土地が、ある部族によって襲われている。土地を守るため、部族長である父さんや兄さんをはじめ、みんなが戦っているのだ」
2つの部族が戦争をしている。
オーウェン「うおおおおお!」
敵「ぐあっ!」
オーウェン「俺に続けー!」
オーウェンが先陣をきり、部族の人間が突っ込んでいく。
場面転換。
ヘンリー「うう……。ライアン……。お前は……生きろ……よ」
ライアン「兄さん! 兄さん! うああああ!」
オーウェンが戻ってくる。
オーウェン「くそ……ダメだ。ここにも、もうすぐ敵が来る。……逃げるしかない」
ライアン「でも、父さん……」
オーウェン「辛いのはわかる。だが、今は逃げ延びることだけを考えるんだ」
ライアン「兄さんは……?」
オーウェン「仕方ない。置いて行くしかないな」
ライアン「うう……」
オーウェン「みんな! ここを出る用意はできてるな? いくぞ!」
場面転換。
海の波の音。
カモメの鳴く声。
ライアン(N)「僕らの部族は土地を放棄して、船に乗り込んだ。まだ見ぬ土地を探して」
ライラ「……はあ、はあ、はあ」
ライアン「母さん! 母さん!」
オーウェン「ライラ……」
ライラ「あなた。ライアンを頼みましたよ」
オーウェン「わかっている」
ライラ「ライアン……。父さんのように立派な部族長になるんですよ」
ライアン「うう……母さん! 母さん!」
場面転換。
ライアン(N)「船旅は過酷を極めた。土地を出たときから、その人数は半分になった……」
オーウェン「……」
ライアン「ねえ、父さん」
オーウェン「……なんだ?」
ライアン「どうして、僕たちがこんな目に遭わなくちゃならないの?」
オーウェン「……」
ライアン「僕らはただ、平和に暮らしたいだけなのに」
オーウェン「覚えておけ、ライアン。部族のみんなが平和に暮らしていけるように導くのが長の務めだ」
ライアン「……うん」
オーウェン「だが、父さんはそれができなかった。多くの者が死んだのは、父さんの責任だ。ヘンリーも、ライラも……」
ライアン「そんなことないよ! あいつらが……あいつらがあの土地に攻めてこなければ、平和に暮らしていけたんだ!」
オーウェン「いいか。ライアン。その気持ちをちゃんと覚えておきなさい」
ライアン「……どういうこと?」
オーウェン「相手も、同じことを考えているということだ」
ライアン「……わからないよ」
オーウェン「今はまだわからなくていい。だが、この言葉は決して忘れてはならないぞ」
ライアン「わかったよ」
場面転換。
ライアン(N)「そして、それから数年が経った頃……。僕たちはようやく、希望の地へとたどり着いた」
船が陸地に着く。
多くの人々が陸地になだれ込む。
男1「やったー! 土地だ!」
男2「これで、ようやく……」
女1「村を作れるのね」
オーウェンが船から降りて来る。
オーウェン「皆のもの! 長くつらい時期をよく乗り越えてくれた。これからは、この土地を私たちの故郷としよう!」
大勢の歓声が上がる。
場面転換。
部族の人たちがそれぞれ、作業をしている。
オーウェン「女で手の空いているものは、家を作るのを手伝ってくれ。男は私と一緒に森に入るぞ。食べ物の確保だ」
ライアン(N)「失ったものを取り戻すかのように、みんなは必死になって働いた。そして、何もなかった土地に、村が出来上がっていく」
場面転換。
小規模なお祭り。
炎の音や音楽、人々の笑い声が響く。
男1「畑ももうすぐ出来上がる。来年には作物も出来る」
男2「族長が森でヤギを捕まえたらしい。これで家畜も育てられそうだ」
ライアン(N)「絶望が希望へと変わっていく。失ったはずの故郷が、新しく作られていく。まさに、絶頂の瞬間だった。――しかし」
場面転換。
オーウェン「う、うう……」
男1「族長がやられた!」
ライアン「父さん! 父さん!」
男2「奴ら、いきなり族長に矢を放ってきやがったんだ!」
男1「くそ!」
オーウェン「……奴らは……もともと、この地に住む……者達だ……がはっ!」
男1「族長! もうしゃべらないでください!」
ライアン「父さん!」
オーウェン「……ライアン。今度はお前が……族長となって……みんなを……」
ライアン「わ、わかったよ、父さん」
オーウェン「みんなを……平和に……うう」
ライアン「父さん! 父さん!」
場面転換。
部屋に男たちが集まっている。
男1「ライアン……いや、族長。どうする?」
ライアン「……」
男2「戦うか、また、海に逃げるか……」
ライアン「……戦おう。今度こそ、故郷を守るために」
男2「おう!」
男1「だが、どこまでやる? 奴らの武器は大したことは無い。追い返すだけならたやすいが」
ライアン「……奴らを残せば、復讐に来るかもしれない。……だから、奴らは殲滅しよう」
男1「……いいんだな?」
ライアン「ああ。俺は父さんから、部族のみんなが平和に暮らせるように託されたんだ!」
男2「よし、わかった! 行こう!」
場面転換。
2つの部族が戦争をしている。
ライアン「うおおおおお!」
敵「ぐあっ!」
ライアン「俺に続けー!」
ライアンが先陣をきり、部族の人間が突っ込んでいく。
ライアン(N)「そう。俺は父さんに、部族のみんなが平和に暮らせるようにする約束した。……だが、もう一つ、父さんが忘れるなと言っていた言葉があったはず。……それがどうしても思い出せない。……だけど、俺にはそれを思い出している時間はない。みんなが平和に過ごすために、この土地を奪わなければならないのだ」
終わり。