■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
ビリー
男
女
アナウンサー
■台本
ガチャリとドアが開いて、ビリーが入って来る。
ビリー「はあ、はあ、はあ」
ドサリと倒れこむビリー。
ビリー(N)「ようやくここまで辿り着いた。10万人に1人の確率でしか合格できない、特別A級エージェント。様々な試験を潜り抜けて、最終試験の場に辿り着いたんだ。ここまで来たら、どんなことをしてでも、合格して見せる!」
立ち上がるビリー。
ビリー「……そういえば、ケリーは無事に合格したんだろうな? って、今は他人のことなんか気にしてる場合じゃないな。集中だ、集中!」
すると、ウィーンという音が出て、壁の中から机が出てくる。
その机の上には1枚の紙が載っている。
ビリー「紙? 何か書いてあるな」
ビリー「えーっと、なになに? 次の問の正解を3分以内に示せ。今ここに、見知らぬ若い男性と若い女性がいるとする。どちらを助けるべきか、だと?」
ふう、とため息を吐くビリー。
ビリー(N)「待て、待て、待て。なんだ、これは? 正解を示せだと? こんなのに正解なんかないだろ。何となく、女性を助けたいが、引っ掛けか?」
ビリー「……じゃあ、男……」
ビリー(N)「いや、待て。最終試験だぞ。そんな単純な話なわけがない。……こういうときは、裏の裏を読めって奴だな」
ビリー(N)「落ち着いて考えるんだ。……こういうときはシミュレーションをしてみるに限る」
以下、ビリーのシミュレーション。
ビリーが立っている前が崖になっていて、その先には足場が2つある。
そこにそれぞれ、男と女が立っている。
ビリー「待ってろ、今、助ける!」
女「お願い、彼の方を助けて!」
ビリー「彼?」
男「何を言ってるんだ! 君の方が助かるべきだよ」
女「いや! あなたを失ってまで、私、生き残りたくない」
ビリー「……」
男「頼む……。これは君だけの問題じゃないだろ?」
女「え?」
男「……さようなら。俺の分まで生きてくれ」
ビリー「……お前の気持ち、受け取った。はああ!」
ビリーが女のところへジャンプする。
ビリー「俺につかまれ!」
女「でも……」
男「ぐああああ!」
男に矢が降り注ぎ、貫かれる。
ビリー「早く! 彼の命が無駄になるぞ」
女「う、うん!」
女がビリーに捕まり、ビリーがジャンプして元の場所へ戻る。
女「う、うう……」
ビリー「彼も言ってただろ。彼の分もしっかり生きるんだ」
女「そうね……。彼の子と一緒に……」
ビリー「え? お腹に子供がいるの?」
女「はい……」
ビリーのシミュレーション終了。
ビリー(N)「ええー。じゃあ、よくあるこの後に二人は結ばれるとかないじゃないか。やっぱり、男を助けるのが正解だろ」
ビリー(N)「いや、待て。この男、リア充ってことだろ? そんなやつ、助ける意味があるのか? ……ないね!」
ビリー(N)「……これ、どっちも助けたくないな」
ビリー(N)「はっ! そうだ! どっちも助けない! 決まりだ! これしかない!」
ビリー「どっちも……」
ビーっとブザーが鳴る。
アナウンス「時間切れです」
ビリー「え? し、しまった! 3分以内って書いてあった!」
アナウンス「……正解です」
ビリー「へ?」
アナウンス「どちらかを選ぶなんてナンセンスな考えです。特別A級エージェントなら、どちらも助ける方法を考えるべきです」
ビリー「……」
アナウンス「つまり、正解は、あなたが選んだ通り、沈黙です」
ビリー「は、はははは……。やっぱりな。そうだと思ったよ」
アナウンス「おめでとうございます。あなたは立派な特別A級エージェントです」
ビリー「……」
ビリー(N)「……素直に喜べない」
終わり。