■概要
人数:4人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
フィオルド
王
従者
勇者
■台本
厳かな音楽が流れている。
フィオルド「……」
王「将軍フィオルドよ。長い間、本当にご苦労だったな」
フィオルド「王よ。私は当然のことをしたまでです。称えられることではありません」
王「はははは。そなたは相変わらず真面目だな。だが、今までの功績を考えれば、賞賛に値することは誰も否定しないだろう」
フィオルド「ありがたき、幸せ」
王「多くの将軍はいつも殉職するのだが、そなたはこれまで生き延び、こうして引退を迎えられること自体、異例と言えるだろうな」
フィオルド「ふふ。王よ。そう言いながら、5度目の引退式ですがね」
王「そう、耳が痛いことを言うな。今回は正真正銘、そなたの引退式だ」
フィオルド「ありがとうございます。では、余生を楽しませていただきます」
王「うむ! 本当に長い間、ご苦労であった」
フィオルド「……はい。では、王のご検討、陰ながらお祈りしております」
場面転換。
フィオルドの館。
フィオルド「ふう。と言いつつ、引退してみるとやることがないな」
従者「それなら、復帰してみてはいかがですか?」
フィオルド「おいおい。私の年を考えてくれ。もう、若い奴らに任せるさ」
従者「フィオルド様は、先代からずっと王に仕えてきたんですものね」
フィオルド「……ああ。懐かしいな。一度は魔物を討伐され、覇権を奪われた。先代を覚えている者など、私以外、もういないだろうな」
従者「既に伝説級と言っても過言ではないでしょう」
フィオルド「今の王をあそこまで育てるのも、本当に苦労したな」
従者「今でも王よりもフィオルド様の方が強いのではないですか?」
フィオルド「止めてくれ。私はもう引退したんだ。それに、今の王や将軍たちがいれば、私の出る幕などないさ」
場面転換。
フィオルド「……ふふ。今日も暗雲立ち込める良い空だな」
そこに従者がやってくる。
従者「フィオルド様。魔王軍四天王の一人が落とされたそうです」
フィオルド「……そうか」
場面転換。
フィオルド「……」
そこに従者がやってくる。
従者「フィオルド様。魔王軍四天王全員が落ちたみたいです」
フィオルド「……私は引退した身だ。世俗のことは報告しなくていい」
従者「わかりました」
フィオルド「……」
場面転換。
魔王の城。
勇者「魔王よ! 貴様を倒して、平和を取り戻す!」
王「くっ!」
そこにフィオルドが現れる。
フィオルド「……しっかりしてくださいよ、王」
王「フィ、フィオルド!」
勇者「なんだ、貴様は?」
フィオルド「引退した、元将軍さ」
勇者「ふん。今更、引退した魔物が出てきたところで、私の敵ではない!」
フィオルド「……」
勇者「はああああああ!」
場面転換。
厳かな音楽が流れている。
フィオルド「……」
王「将軍フィオルドよ。長い間、本当にご苦労だったな」
フィオルド「王よ。私は当然のことをしたまでです。称えられることではありません」
王「はははは。そなたは相変わらず真面目だな。だが、今までの功績を考えれば、賞賛に値することは誰も否定しないだろう」
フィオルド「ありがたき、幸せ」
王「多くの将軍はいつも殉職するのだが、そなたはこれまで生き延び、こうして引退を迎えられること自体、異例と言えるだろうな」
フィオルド「ふふ。王よ。そう言いながら、6度目の引退式ですがね」
王「そう、耳が痛いことを言うな。今回は正真正銘、そなたの引退式だ」
終わり。