鍵谷シナリオブログ

魔王と勇者は忙しい5

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ

■キャスト
魔王
グドラス
魔族
ソフィア
ガイ
村人1~2

■台本

魔王の城。謁見の間。

グドラス「魔王様。……今、なんと?」
魔王「全軍を使っての総攻撃だ」
グドラス「え? ちょっと待ってください! なぜ、急にそんなことを?」
魔王「……もういい」
グドラス「な、なにがでしょうか?」
魔王「もう、あの村潰す。徹底的に」
グドラス「……なぜ、泣いていらっしゃるのですか?」
魔王「うるさい、うるさい、うるさーい! もうどうでもよくなったの!」
グドラス「魔王様、何度も進言している通り、現在、あの村との交易……いえ、あの村を利用することで、我が軍に多大な利益が出ています。今、あの村を潰すことはデメリットでしかありません」
魔王「メリットとかデメリットとか、関係ない。とにかく決めたから、進軍の用意をしろ」
グドラス「か、かしこまりました……」

場面転換。
廊下を歩くグドラス。

グドラス「……さて、どうしたものか」
魔族「グドラス様、どうなさいました? 難しい顔をして」
グドラス「……お前に頼みたいことがある」
魔族「なんでしょう?」
グドラス「今すぐ、四天王を連れて、デッドマウンテンに向え」
魔族「四天王全員を引き連れて、ですか? 一体、何事ですか?」
グドラス「魔王様がデス・ドリアンを食べたいと言い出してな。それを採ってきて欲しい」
魔族「魔王様の気まぐれはいつものことですが、それだけのために四天王を派遣するのはどうかと……。私だけでも済む話です」
グドラス「私の指示に不満があると?」
魔族「い、いえ! 申し訳ありませんでした。すぐに四天王を連れて、出発します」
グドラス「ゆっくりでいい。質のいいものを採ってきてくれ」
魔族「承知しました。

魔族が去っていく。

グドラス「さてと。とりあえず、四天王は作戦から外すことはできたな。あとはいつも通り、勇者に期待するしか……」

場面転換。
村の中。

グドラス「いいか! 持ち出すものは最小限だ! 老人、女性、子供を優先して、非難させろ!」
村人1「グドラスさん、本当なのかい? 魔王軍が攻めてくるって」
グドラス「偶然、情報を入手してな。信じがたいかもしれんが、今は何も言わず、指示に従って欲しい」
村人1「ああ、わかったよ。グドラスさんの言うことを信じない奴はこの村にはいないさ」
グドラス「……感謝する」

そこにソフィアとダンがやってくる。

ソフィア「あの、グドラス様、私に御用でしょうか?」
グドラス「おお、来たか。すまんな。君には悪いが、交渉材料になってもらう」
ソフィア「交渉材料……ですか?」
グドラス「ああ。なぜだがわからんが、魔王様……魔王のやつは君に執着している節がある。いざとなったら、その身を交渉に使わせてもらう」
ダン「ちょっと待てよ! ふざけんな!」
グドラス「なんだ、貴様は?」
ダン「ダンって者だ。二日前に村に戻ってきた、ソフィアの……」
村人2「お、ダンとソフィアちゃん、今日も仲いいねー」
ソフィア「か、からかうのは止めてください」

グドラス(N)「なるほど。ソフィアの恋人、というやつか」

グドラス「心配するな。一時的に魔王軍に身を寄せることになるが、責任をもって、すぐにもどすことを約束する」
ダン「そんな約束、信じられるかよ!」
ソフィア「止めてください!」
ダン「ソフィア……」
ソフィア「いいのです。私の命一つで、この村が助かるのなら、安いものです」
ダン「……考え直してくれ」
グドラス「絶対に、君を死なせるようなことはしない。信じてほしい」
ソフィア「……はい」

そのとき、村人が走ってくる。

村人1「来たぞ! 魔王軍だ!」
グドラス「来たか!」

場面転換。
魔王軍がやってくる。

グドラス「ちっ! こうして敵視点で見ると厄介極まりないな」
魔王「オラオラオラ! 道を開けろー!」
グドラス「なっ! 魔王様!」
魔王「ん? なんだ、お前は?」
グドラス「あ、いえ……。それより、なぜ、魔王直々に進軍を?」
魔王「なんか、魔族総司令が見当たらないから、僕が指揮をすることにしたんだ」
グドラス「……ちっ。返って、状況が悪化してしまったか……」
魔王「よーし、それじゃ、行くぞ! 何もかも、ぶっこわせー!」
村人1「ひえっ! どどどどどうしましょうグドラスさん」
グドラス「落ち着け。村全体に結界を貼った。そうそう破れるものではない。あとは、勇者が来るまで時間稼ぎだ」

場面転換。
グドラスが魔王に吹き飛ばされる。

グドラス「ぐはっ!」
魔王「ははははは。なかなかやるが、僕には勝てまい」
グドラス「くそ。勇者め、何をしている。さっさと来い」
魔王「さあさあ、結界ももうじき破れるぞ」

そこにソフィアが躍り出る。

ソフィア「お待ちください!」
魔王「ソ、ソフィアちゃん」
ソフィア「お願いします。どうか、軍を退いてくださいませんか?」
魔王「う、うう……」
ガイ「俺からも頼む。軍を退いてくれ」
魔王「お、お前は! ううー……。お前がー!」
ガイ「え?」
魔王「お前がいなければーーーー!」
ガイ「え? え? え? なに?」
魔王「お前を殺して、僕も死ぬ!」
グドラス「魔王様、使うところと、使う言葉と、使う状況、全部間違ってます」
魔王「うるさーい! 消えてなくなれー」
グドラス「ちっ!」

魔王の攻撃を受け止めるグドラス」

グドラス「くう……」
魔王「くそ、なんなんだ、お前は? こんな力、魔族でもなかなか出せないはずだぞ」
グドラス「ここは退くことはできないのだ! この村は絶対に守る! うおおおおお!」
魔王「こしゃくな! はあああああ!」

グドラスと魔王の応戦。

グドラス「この一撃にすべてを込める! うおおおおおお!」
魔王「うわあああああ!」

グドラスの攻撃をまともに受ける、魔王。

グドラス「はあ、はあ、はあ……。立つなよ。そのまま倒れてろ」
魔王「……いってぇ!」
グドラス「く、ここまでか」
魔王「頭にコブできちゃったじゃないかー! ……うわーん!」

魔王が走り去っていく。
それにつられて、魔王軍も退いていく。

グドラス「はあ……。助かった」

ソフィアがグドラスに抱き着く。

ソフィア「ありがとうございました、グドラス様!」
グドラス「はは……。大切なものを守りたいときに、人は力を120%引き出すというが、魔族でも同じようだな」
ソフィア「え?」
グドラス「いや、気にするな。……さてと、もう一つの仕事も終わらせるか」

場面転換。
魔王の城。謁見の間。

グドラス「……昨日はもうしわけありませんでした。急な腹痛で」
魔王「いいよいいよ。腹痛なら仕方ないよねー」
グドラス「魔王様、何かあったんですか?」
魔王「ん? そう? やっぱ、そう見えちゃう?」
グドラス「(つぶやき)……面倒くさい」
魔王「いやあ、あのね。あのガイって男さ」
グドラス「……ああ、ソフィアの近くにいた男ですね?」
魔王「そうそう。あの人、ソフィアちゃんのお兄さんだってさー! 兄妹なら結婚できないよねー! いやー、よかったよかった」
グドラス「……その話と、魔王様の機嫌がどのような関係が?」
魔王「ああ、いや、何でもない。忘れてくれ。……それにしても、魔王軍としては新たな脅威を警戒しないとな」
グドラス「え?」
魔王「人間の中に、お前くらい……いや、お前よりも強い奴がいたぞ」
グドラス「……はい、報告は聞いております」
魔王「あの村は勇者一人いれば十分なのになー。邪魔だなー」
グドラス「勇者は結局、昨日はやってきませんでしたからね。あんな信用のおけない輩よりはよっぽど、昨日の男の方が頼りになるのでは?」
魔王「……お前、減給な」
グドラス「理不尽っ!?」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉

モバイルバージョンを終了