マッドサイエンティスト

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■概要
人数:3人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ

■キャスト
ヴォルフ
レイチェル
ルージュ

■台本

ヴォルフの研究室。
外では雷が鳴り響いている。

ヴォルフ「ふふふふ。レイチェルくん。この稀代の天才マッドサイエンティストである僕に、唯一足りないものがあるとするなら、なんだと思うかね?」
レイチェル「ヴォルフ様に足りない物ですか? えーっと、品性?」
ヴォルフ「っ!?」
レイチェル「あ、優しさ? いや、お金! あー、カッコよさ! んー、男らしさも捨てがたいです!」
ヴォルフ「……ありがとう。もういいよ」
レイチェル「えー! もっと色々あるんですけどー」
ヴォルフ「お願いだから、もうやめて!」
レイチェル「しょうがないですね。今回だけですよ」
ヴォルフ「……それはそうと、僕に足りないものはずばり、彼女だと思うんだよね」
レイチェル「確かに! 生まれてから一回も、いたことありませんもんね!」
ヴォルフ「レイチェルくん。あんまり、僕の心の傷、えぐらなくていいから」
レイチェル「で、それがどうしたんですか?」
ヴォルフ「いや、まあ、その、僕も年頃だからさ、そろそろ作った方がいいと思うんだよね、彼女」
レイチェル「あはははは! ヴォルフ様、作らないのと作れないのを一緒にしない方がいいですよ」
ヴォルフ「レイチェルくんの言葉は、的確に僕の心を傷つけるよね」
レイチェル「ホントのことを言ってるだけですよ?」
ヴォルフ「そのつぶらな瞳が、より一層、深く傷つけることを知ってるかな?」
レイチェル「でも、どうやって作る気ですか? 彼女。……あ、惚れ薬とか?」
ヴォルフ「ふむ。それは僕も考えた。ただ、それは僕のポリシーに反するので却下したんだ」
レイチェル「ヴォルフ様にポリシーなんてものがあったんですか?」
ヴォルフ「ごめん、レイチェルくん。普通に相槌うってくれるだけでいいから」
レイチェル「はーい!」
ヴォルフ「惚れ薬は相手の精神を変えてしまうからね。さすがにそれはいけないことだと思うんだ」
レイチェル「うんうん。それは素晴らしい考えですね」
ヴォルフ「そうそう。そういう返しでいいんだよ」
レイチェル「じゃあ、どうするんですか?」
ヴォルフ「うむ。だから、文字通り、作ることにしたんだ」
レイチェル「作る?」
ヴォルフ「そう。僕と付き合ってくれる女性なんて皆無だからね。それならいっそ、自分で作り出してしまえばいいと思ったわけだよ」
レイチェル「……自分で言ってて、悲しくなりませんか?」
ヴォルフ「あー、うん。ちょっとね」
レイチェル「でも、作り出すって、どうやって?」
ヴォルフ「レイチェルくんは、フランケンシュタインという人物は知っているかね?」
レイチェル「はい。なんか、すごい化け物を作った人ですよね?」
ヴォルフ「そうそう。そんな感じで作ろうかなって思って」
レイチェル「そんな簡単にいきますかね?」
ヴォルフ「ふふふふ。僕を誰だと思っているんだい? 稀代の天才マッドサイエンティストだよ。作れないものなんてないんだ!」
レイチェル「うんうん。確かに、ヴォルフ様はものを作り出す才能だけは物凄いですからね」
ヴォルフ「さらっと、『だけ』っていうのを入れてくるのが、レイチェルくんらしいね。とにかく、どうせ作るなら、僕の理想の女性を作ろうと思う!」
レイチェル「面白そうなので手伝います!」

場面転換。

ヴォルフ「……ふむ」
レイチェル「数日間、何を悩んでるんです? 珍しく、行き詰ったんですか?」
ヴォルフ「……胸の大きさをね、悩んでいるんだよ。巨乳もいいし、小さいのも捨てがたい。もちろん、普通の大きさもありだと思うんだ」
レイチェル「付け替えれるようにすればいいんじゃないんですか?」
ヴォルフ「天才かっ!?」

場面転換。

ヴォルフ「うーむ」
レイチェル「あれ? また悩んでるんですね」
ヴォルフ「外見はほぼ、完成したんだが、性格がね、なかなか決まらなくて」
レイチェル「性格……ですか?」
ヴォルフ「ドSにしようか、ドMにしようか悩んでるんだよ。攻められてもみたいし、攻めてもみたいんだ」
レイチェル「それなら、ドMにすればいいと思います」
ヴォルフ「なぜだね?」
レイチェル「ヴォルフ様を攻めるのは私がやってますから」
ヴォルフ「君は天才だなっ!?」

場面転換。

ルージュ「もう、博士はエッチなんですから」
ヴォルフ「うーん……」
レイチェル「今度はなにを悩んでるんですか?」
ヴォルフ「今、性格形成のために、色々なことをシミュレーションして教えてるんだ」
レイチェル「なるほどです」
ヴォルフ「で、今、僕が彼女のスカートをめくったときの反応を教えるのが難儀しててね」
レイチェル「恐ろしく、くだらないですね」
ヴォルフ「もし、僕がレイチェルくんのスカートをめくったらどうする?」
レイチェル「ぶん殴ります」
ヴォルフ「……えっと、もしだよ、もし、恋人同士という関係だったと仮定したらどうする?」
レイチェル「ぶん殴ります」
ヴォルフ「……今、僕がやろうとしてるのは、優しくたしなめてくれる感じにすることなんだ」
レイチェル「……さっき、そういう感じだったと思いますけど」
ヴォルフ「違うんだよ! さっきのは、許してしまっているんだ! ここは恥ずかしさを込めて、『いやん、ダメですよ、は、か、せ』って言ってたしなめて欲しいんだ」
レイチェル「めんどくさっ!」

場面転換。
バリバリバリと雷が落ちる音。

ヴォルフ「ふふふふ。ついに完成だ!」
レイチェル「おめでとうございます」
ヴォルフ「容姿、プロポーション、性格、すべて僕の理想の女性が出来上がった!」
レイチェル「結構、苦労しましたねー」
ヴォルフ「それでは起動するぞ! はーーー!」

ポチっとボタンを押すヴォルフ。

ルージュ「おはようございます、博士」
ヴォルフ「おお、目覚めたか、ルージュくん」
ルージュ「私を生み出してくれて、ありがとうございます」
ヴォルフ「……っ!? は、初めて他人から、ありがとうって言われた」
レイチェル「ヴォルフ様がいつも作るものは、本当にろくでもないものか、被害が出るものばかりですからね」
ヴォルフ「うおっほん! えーと、そのルージュくん」
ルージュ「はい。なんですか?」
ヴォルフ「その……僕のお願いを聞いてくれるかな?」
ルージュ「はい。なんですか?」
ヴォルフ「僕と……付き合ってください!」
ルージュ「え? 普通に嫌です」
ヴォルフ「っ!?」
レイチェル「……ヴォルフ様。自分を好きになるように教えてないんですか?」
ヴォルフ「……あっ!」
ルージュ「あ、あの、レイチェルお姉さま!」
レイチェル「へ? 私?」
ルージュ「こうして自由にお話できるのをずっと夢見てました」
レイチェル「へ、へー。そうなんだ」
ルージュ「あの、レイチェルお姉さま! 私とお付き合いしてください!」
レイチェル「は、ははは……」
ヴォルフ「なんで、そーなるのっ!?」

終わり。

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