■概要
人数:5人以上
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
和希(かずき)
貴一(きいち)
女子1~3
■台本
教室内。
和希「……はあ」
貴一「なに、ため息なんかついてるんだ?」
和希「お前には聞こえないのか? 悪魔のような囁きが」
貴一「悪魔?」
周りからは女子たちがキャッキャと話している声が聞こえてくる。
女子1「ねえねえ、今年はどうする?」
女子2「無難に買うかな。去年は手作りでしっぱいしたし」
女子1「あたしもそうしようかな。ねえ、今秋、一緒に買いにいかない?」
女子2「いいよ。じゃあ、土曜日に駅前集合しよっか」
貴一「……はっ! まさか!」
和希「そう。そのまさかだ」
貴一「くそ! 今年もまた、あの悪魔のイベントがやってくるというのか」
和希「ああ。2月14日。チョコレート業界による、世界中の男たちに対する差別の日だ」
貴一「俺、その日は学校、休もうかな」
和希「いいのか? 万が一、もらえるという可能性もあるんだぞ? 義理チョコ」
貴一「その台詞、かれこれもう4年以上聞いているけど、貰ったことあったか? 義理チョコでも」
和希「……いや、まあ、万が一だからな」
貴一「一万年に一回なら、生きてるうちは無理だな」
和希「くそー! もらえないとはわかっていても、休むのはなんか負けた気がして嫌だー!」
貴一「もらえなかった時点で負けだろ」
和希「うう……」
場面転換。
商店街を歩く和希と貴一。
周りはにぎわっている。
和希「はあ……。商店街もバレンタイン一色っかよ」
貴一「まあ、なんだかんだ言って稼ぎ時だからな」
和希「くそ! 彼女ができるまでは最悪なイベントだな」
貴一「できるまでって……できると思ってるのか?」
和希「そりゃ、お前! 今は人生80年の時代だぞ。一回くらいはできるだろ」
貴一「おおー。すごい長いスパンで考えてるんだな。けど、80歳で彼女ができたとして嬉しいか?」
和希「嬉しいだろ」
貴一「……嬉しいな。うん」
和希「くぅー! 俺の嫁! 早く来てくれー!」
和希「……なに、彼女からシレっとランクアップさせてんだよ。……まあ、それはそうと、さっき色々調べたんだが、そう悲観することもないみたいだぞ」
和希「どういうことだ?」
貴一「時代は変わってるってことだな」
和希「というと?」
貴一「最近さ、何かとハラスメントっていってうるさいだろ?」
和希「ああ。日々、新しいハラスメントが生まれている気がするな」
貴一「あれの一環でさ、義理チョコを渡すという風習が消えかかっているらしいぞ。チョコハラだな」
和希「マジか!」
貴一「なんか、最近だと自分へのご褒美にチョコを買うなんてこともあるらしい。あと、何気に多いのが、世話になった人にあげるっていうんだってさ」
和希「じゃ、じゃあ、周りは義理チョコでも貰っているのに、俺たちだけもらえないっていう罰ゲームを受けなくてもいいのか!?」
貴一「……大げさだろ。俺たち以外にも、2人くらいいただろ。義理チョコでももらえない奴」
和希「とにかく、もう、あんなツライ思いはしなくて済むんだな!?」
貴一「ああ、その通りだ!」
和希「おおー。じゃあ、どうせなら、俺たちでチョコの交換でもするか?」
貴一「……いや、男同士でやるのはちょっとパス」
和希「……そうだな」
場面転換。
学校内。
あちこちで女子がチョコを渡している。
女子1「田城くん! これ、チョコレート。本命だよ!」
女子2「あの……峰岸くん。本命チョコ……もらってくれないかな」
女子3「べ、別にいつもお世話になってるからやるんだからな。勘違いするなよ。……まあ、本命ってやつでもいいけど……」
周りでキャッキャしている男女。
和希「おい……」
貴一「なんだ?」
和希「話違うくね?」
貴一「あー。いやー。本命のチョコを渡すのは無くなってないみたいだな」
和希「よけい惨めだわっ!」
終わり。