■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
漫画原作・映像、ファンタジー、シリアス
■キャスト
アリア
アレフ
青年
男の子
男1~2
その他
■台本
森の中。
アリアとミアが走っている。
アリア「はっ、はっ、はっ!」
ミア「あっ!」
ミアが転び、アリアが駆け寄る。
アリア「ミア!」
ミア「お姉ちゃん!」
そこに男2人がやってくる。
男1「手こずらせやがって」
男2「大人しくしな」
アリア「待ってください。妹は、妹だけは見逃してください!」
男1「はあ? エルフは小さければ小さいほど、金になるんだ。見逃すわけないだろ!」
男2「そうそう。この場合、妹の方がねーちゃんを庇うところだな。まあ、結局は、意味ね―けど。がははははは!」
そのとき、後ろからアレフが現れる。
アレフ「ゴアアアアアアア!」
男1「うわっ! なんだ、この化け物は?」
アレフ「デテイケ」
男2「く、くそ……」
アレフ「デテイケ―――!」
男1「うわああああああ!」
男2「お、おい、待てよ!」
男たちが逃げていく。
今度はアレフがアリアたちに歩み寄ってくる。
アレフ「……」
アリア「……」
ミア「ひっ!」
アレフ「大丈夫だった?」
アリア「え?」
アレフ「早く、里に帰った方がいいよ。他にもああいうやつらがいるかもしれないし」
アレフがそう言い、背を向けて歩き始める。
アリア「待ってください!」
場面転換。
洞穴内。
アレフ「ああ、適当に座って。今、飲み物持ってくるよ」
アリア「あ、はい……」
アリアがちょこんと座る。
アリアがキョロキョロと周りを見る。
洞穴内にはテーブルや、寝床のような草を敷き詰めた場所など、生活をしている形跡がある。
そこに、アレフが戻ってくる。
木のコップに飲み物が入っている。
アリア「あの、ここに住んでいるんですか?」
アレフ「うん。はい、これ」
アレフがコップをアリアに渡す。
アリア「ありがとうございます」
受け取るアリア。
アリア「あの、どうしてここに住んでいるのですか?」
アレフ「小さい頃にね、顔を怪我して、変形してしまったんだ。町の人たちはそんな僕を不気味がってね。町を追い出されたんだ」
アリア「え? どうしてですか? 同じ人間なのに」
アレフ「あははは。珍しいことを言う人だな。君は僕の顔が怖くないのかい?」
アリア「怖いと言う意味の方が、よくわかりません」
アレフ「……ありがとう。そんなことを言われたのは初めてだよ」
場面転換。
花畑。
アレフがアリアに花の冠をプレゼントしている。
アリアが幸せそうに微笑む。
場面転換。
洞穴内。
一緒に食事をしているアレフとアリア。
楽しそうにお話をしている。
場面転換。
洞穴内。
アレフとアリアが一緒に寝ている。
場面転換。
アレフがシカを仕留めて、背負っている。
そこに男の子を抱き上げたアリアがやってくる。
男の子が真ん中で、アリアとアレフが手を繋いで歩いていく。
そこに、3人の盗賊が現れる。
剣を持って、襲い掛かる3人。
アレフが身を挺してアリアと男の子を庇う。
アレフが何かを叫び、アリアが泣きながら、男の子を抱いて走る。
追おうとする男たちを足止めするアレフ。
だが、3人に剣を突き立てられ、血を吐くアレフ。
場面転換。
小屋の中。
青年になった男の子とアリアが一緒に食事をしている。
その雰囲気は楽しそう。
場面転換。
部屋の中。
ベッドには老人になった青年が寝ている。
アリアの姿は若く、変わらない。
老人を世話するアリア。
場面転換。
小屋の横。
2つの墓をジッと見るアリア。
場面転換。
小屋の周りの季節が巡る。
墓の横には若葉が咲いている。
場面転換。
墓にセミが止まって、鳴いている。
場面転換。
墓に紅葉が乗っている。
場面転換。
墓に雪が積もっている。
場面転換。
春。
2つの墓をジッと見るアリア。
墓は長い年月のため、朽ち始めている。
しかし、アリアの姿は若いまま変わらない。
場面転換。
森の奥。
本を片手に、地面に魔方陣を描いているアリア。
魔方陣が光り出し、悪魔のような魔神が現れる。
アリアが魔神に何か言うと、魔神が頷く。
アリアの体が光り始め、その姿が禍々しいものに変化していく。
場面転換。
平和な町。
突如、魔物が空から人々に襲い掛かる。
その魔物を指揮している、禍々しい姿になったアリア。
場面転換。
王国の城が燃え、崩壊していく。
城下町では魔物が暴れまわり、多くの人間を殺している。
場面転換。
城の中。
玉座に座っているアリア。
そこに魔物がやってきて、何かを報告する。
笑みを浮かべるアリア。
場面転換。
玉座に座っているアリア。
そこに、青年たちのパーティーが攻め込んでくる。
立ち上がるアリア。
青年たちとアリアが戦い始める。
場面転換。
青年たちはボロボロになりながらも、立っている。
その傍で倒れているアリア。
青年「……」
アリア「……どうしたの? 止めを刺しなさい」
青年「魔王よ。あなたは大切な者と子供を人間に奪われたと聞く」
アリア「……」
青年「復讐を考えるのもわかる。俺も、魔物に家族を奪われた」
アリア「……」
青年「奪われる者の気持ちはわかる。だから……」
アリア「違うわ」
青年「え?」
アリア「全部、私のエゴ。あなたが気を病む必要は全くないわ。胸を張って、止めを刺しなさい」
青年「……」
アリア「人間とエルフの寿命が違うなんて、知ってたのにね。……でも、私はその寂しさに耐えられなかった」
青年「……まさか、あなたは討たれるためにこんなことを?」
アリア「お願い。もう一人は嫌なの。あの人と息子に会いたい……」
アリアの目から涙が溢れる。
青年「……」
青年がアリアの胸に剣を突き立てる。
アリア「……ありがとう」
アリアがにこりと微笑む。
アリア「……今、行きますから……」
アリアが息絶える。
場面転換。
小屋の横の2つの墓は、完全に朽ち果てている。
終わり。