■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
武尊(たける)
敬(けい)
虎徹(こてつ)
母親
■台本
武尊(N)「俺には親友がいた。いや、今でも親友だと、俺は思っている。虎徹とは幼稚園からの付き合いで、高校まで一緒の学校だった。だが、あいつは親の都合で、高校2年の時に引っ越すことになったのだ」
場面転換。
虎徹「武尊。これをお前に託す」
武尊「ちょ、待てよ、虎徹。これって、お前が苦労して手に入れた……」
虎徹「だからさ。だから、お前に貰って欲しいんだ」
武尊「いいのか?」
虎徹「ああ」
武尊「大切にするよ」
虎徹「約束だぞ」
武尊(N)「……そう。虎徹から託されたもの。これこそが、俺と虎徹の友情を結ぶものだったんだ」
場面転換。
ガチャリとドアが開き、武尊が部屋に入ってくる。
武尊「ふう……今日も疲れたな」
ベッドに座る武尊。
そして、ごそごそと音がする。
武尊「え? あれ? ない!?」
場面転換。
母親がリビングでテレビを見ながらお茶を飲んでいる。
そこに武尊が勢いよくやってくる。
武尊「母さん! 俺の部屋に入った!?」
母親「あんたねぇ。少しは掃除しなさいよ」
武尊「ちょっ! 掃除は自分でやるからいいっていつも言ってんだろ!」
母親「そう言って、いつもやらないじゃない」
武尊「明日やろうと思ってたんだよ! って、それより、俺の物、勝手に捨てたでしょ!?」
母親「ゴミを捨てないと、いつまでたっても、綺麗にならないでしょ?」
武尊「ゴミって勝手に決めつけんなよ! 大体、しまっておいた物をわざわざ出して捨てるなんて最低だって!」
母親「は? 何言ってんの? 母さんは床とベッドの上にある物しか捨ててないわよ」
武尊「……え? ってことは出しっぱなしにしてたってこと?」
母親「そうじゃないの?」
武尊「でも、捨てることねーじゃん!」
母親「これで、少しは勉強に身が入るんじゃない?」
武尊「ふざけんな!」
そのとき、外からゴミ収集車の車が出発する音がする。
武尊「今の音は……?」
母親「ゴミ収集車でしょ」
武尊「くそ!」
武尊が走り出す。
母親「あ、ちょっと武尊、どこ行くの!?」
場面転換。
道路を走る武尊。
武尊「くそ、どこに行った? ……どうする? このままだとあいつから託されたアレが……。背に腹は変えられんな」
武尊がスマホを取り出して、電話を掛ける。
武尊「あ、もしもし、敬か? 助けてくれ」
場面転換。
敬が走ってくる。
敬「武尊―!」
武尊「敬! すまんな。来てもらって」
敬「いや、それよりも、アレが捨てられたんだって?」
武尊「ああ。なんとか取り返したい」
敬「わかった。任せろ」
武尊「ありがとう。礼はする」
敬「期待してるからな」
武尊「で、どうする?」
敬「いくら法定速度を守っている収集車でも、走って追いつけるわけがない。先回りするぞ」
武尊「どうやって?」
敬「ネットで、この地域のごみ収集場所を検索する。そうすれば、大体のルートを割り出せるはずだ」
武尊「おお、さすが敬だな!」
敬「……なるほど。こうきて、こうだから……。よし、武尊、こっちだ!」
武尊「おう!」
武尊と敬が走り出す。
場面転換。
ブロロロとゴミ収集車が走り出す音。
武尊「あっ! くそ!」
敬「はあ、はあ、はあ……。タッチの差だったか……」
武尊「はあ、はあ、はあ……。くそ、横っ腹いてえ!」
敬「思ったより、ペースが早いな」
武尊「……どうする? もう一回、先回りするか?」
敬「……いや、これでまた間に合わなかったら目も当てられん」
武尊「じゃあ、どうすんだよ?」
敬「こうなったら、先回りするしかないな」
武尊「は? 今、先回りしないって……」
敬「違う。ゴミ収集車のルートの先回りはしないって意味だ」
武尊「……どういうことだ?」
敬「ついて来い」
場面転換。
ゴミの山の上を歩く武尊と敬。
武尊「くせー!」
敬「我慢しろ。アレを取り戻すんだろ」
武尊「ああ。にしても、まさか、ゴミ処理場とは、考えたな」
敬「どのルートを使おうが、最終的にはここに来るはずだからな。あとは、お前ん家のルートの収集車が戻ってくるのを待つだけだ」
ゴミ収集車が走ってくる音。
武尊「噂をすれば、だ。来たぞ!」
敬「よし、どの辺に捨てるか見たら、突撃するぞ」
武尊「ああ」
場面転換。
ゴミを漁る武尊。
武尊「くそ! 見つからねーし、くせえ!」
敬「うっ! 正直、これはキツイな」
武尊「うう……」
ガサガサとゴミを漁る武尊。
敬「武尊……。もういいんじゃないか?」
武尊「何言ってんだよ!?」
敬「これだけやったんだ、虎徹だって、きっと許してくれるさ」
武尊「けどよぉ」
敬「それに……このゴミの状態を見てみろ。もし、奇跡的に見つかったとしても……もう、ダメになってるはずだ」
武尊「く、くそーーーー!」
場面転換。
ガチャリと玄関のドアを開けて、武尊が入ってくる。
武尊「……ただいまー」
そこに母親がやってくる。
母親「こんな遅くまでどこ行ってたの?」
武尊「……まあ、ちょっと」
母親「うっ! なに、この臭い! シャワー浴びてきなさい!」
武尊「……わかってるよ」
廊下をトボトボと歩く武尊。
母親「あ、武尊。はい、これ」
武尊「え? こ、これって……」
母親「大切なら、ちゃんと閉まっておきなさい」
武尊「で、でも、どうして……? ゴミに出したんじゃ?」
母親「何言ってるのよ。今日は燃えるゴミの日でしょ? 本は資源ごみの日でしょ!」
武尊「……あ、そっか」
母親「……まあ、あんたも年頃だから、興味を持つのもわかるけど……」
武尊「よっしゃー! 俺のエロ本、戻ってきた―――!」
母親「ちょっと! 大声で恥ずかしいこと言わないの!」
武尊(N)「本当に良かった。虎徹。お前から託されたこの宝物。今度は絶対に、手放したりしないからな」
終わり。