■概要
人数:3人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
晴馬(はるま) 34歳
紗柚(さゆ) 36歳 主婦 晴馬の姉
福(ふく) 15歳 中学生
■台本
晴馬(N)「僕の姉はかなりの教育ママだ。甥っ子の福はいつも姉に怒られている。……というより、あれは虐待に近い。以前はそんなことはなかった。……だけど、僕が言った、あの言葉から、姉はおかしくなったのだと思う」
場面転換。
紗柚「はあ……。うちの子、ホント、手がかかって大変だわ」
晴馬「福って何歳になったんだっけ?」
紗柚「15歳」
晴馬「うわー。早いな。もうそんな年か」
紗柚「でもさ、福って、なんか子供っぽくないっていうか、妙に大人っぽいんだよね」
晴馬「いいことなんじゃないの?」
紗柚「ううん。反抗期で生意気だしさ。……それに、なんていうか、私でもゾッとするような目つきをするんだよね」
晴馬「あのさ。姉さんって、甘やかせ過ぎなんじゃない?」
紗柚「え?」
晴馬「悪いことしたら、ちゃんと叱ってる?」
紗柚「あー。流しちゃうこと多いかも」
晴馬「ダメだよ。思春期の教育って、重要だよ」
紗柚「そっか。そうだよね。ありがとう。私、頑張ってみる」
晴馬「うん。姉さんならやれるよ」
晴馬(N)「そう。この言葉が悪かったんだ。ここから姉のスパルタ教育が始まった」
場面転換。
バシっとムチのようなもので、福を叩く紗柚。
福「ううっ!」
紗柚「この! この! この!」
バシバシと紗柚が福を叩く。
そこに春馬がやってくる。
晴馬「ちょ、ちょっと姉さん! 何やってるんだよ!」
紗柚「あ、これは……その……」
晴馬「福、血が出てるじゃないか!」
紗柚「違うの、これは……」
晴馬「何が違うって言うんだ! こんなの虐待だろ!」
福「止めて!」
晴馬「え?」
福「おじさんは黙ってて」
晴馬「でも……」
福「……お母さん。続けよ」
紗柚「そうね……」
バシっと福を叩く紗柚。
晴馬「……」
晴馬(N)「正直、児童相談所に行こうか迷った。けど、そうなると、最悪、福と姉さんは離れ離れになってしまう。……それはしたくない。だって、姉さんは福のことをあんなにも愛していたんだから」
場面転換。
紗柚「ああ、もうダメ。私、限界よ」
晴馬「……疲れてるんだよ。もう、あんなことは止めたほうがいい」
紗柚「でも、私、あの子を愛してるのよ」
晴馬「わかってるよ。でも、やり過ぎはダメだって」
紗柚「やり過ぎ。……そうだよね? やり過ぎだよね?」
晴馬「うん。絶対、やり過ぎだよ。だから、あんなことは止めたほうがいい」
紗柚「そうね。あの子のために、止めたほうがいいわよね」
晴馬「うん」
晴馬(N)「よかった。これで、姉さんは虐待を止めてくれそうだ」
紗柚「あのさ。あの子を説得するのを手伝ってくれない?」
晴馬「え? 説得? 手伝う?」
場面転換。
福「いやだ! 絶対やめない!」
紗柚「福のためなんだよ?」
福「うるさい! やれったら、やれよ!」
紗柚「うう……。えいっ!」
バシっとムチで叩く。
福「ああっ!」
紗柚「どう?」
福「ダメダメ! もっと、スナップ効かせて!」
紗柚「こう?」
バシっとムチで叩く。
福「ダメダメ! 角度が悪い! もう一回!」
紗柚「うう……。こう?」
バシバシと叩く。
福「まだまだ!」
紗柚「えい、えい!」
福「振りかぶりが甘くなってきたよ!」
紗柚「えい、えい、えい!」
晴馬「……」
晴馬(N)「どうやら、スパルタ教育をされていたのは姉の方だった。福の将来が心配だ。どうか変態にはならないように。それだけを祈るばかりだ」
終わり。