■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
アンナ 23歳
カミラ 25歳
ノア 23歳
リアム 6歳
■台本
アンナの部屋。
アンナ「ふわー! 暇ねぇ」
ガチャリとドアが開き、カミラが入ってくる。
カミラ「姫様。国王様から……」
アンナ「嫌よ」
カミラ「まだ何も言っていないのですが?」
アンナ「どうせ、また結婚の話でしょ?」
カミラ「いえいえ。聞いてください。今回のお相手は……」
アンナ「だーかーら! 嫌だってば」
カミラ「姫様。もう今年で23ですよ。相手を選んでる場合じゃありません」
アンナ「そうね。だから選ばないの。私はここでずーっと、悠々自適に暮らすのよ」
カミラ「……国王様が今回のお見合いを蹴ったら、宝物庫のいかがわしい本を燃やすとおっしゃってます」
アンナ「はあ!? あれは美麗な男の子同士が絡み合う甘美な本なのよ! 芸術と言ってもいいくらいだわ!」
カミラ「……」
アンナ「あれは私の命より大事な物よ! そう、お父様に言ってちょうだい!」
カミラ「じゃあ、命をよこせ、だそうです」
アンナ「…………。相手はどんなやつ?」
カミラ「聞く耳を持っていただけるんですね。えっと、お相手は姫様と同じく23歳だそうです」
アンナ「はあ……。23にもなって、まだ結婚してないの? それってつまり、政略結婚にさえ利用されてないってことでしょ? やだやだ。お里が知れるわね」
カミラ「……姫様。思い切りブーメラン発言になってます」
アンナ「行き遅れってことは、どうせ、チビデブハゲなんでしょ。冗談じゃないわ」
カミラ「……また民衆が聞いたら炎上しそうなことを……」
アンナ「いいじゃない。オフィシャルの場じゃないんだから」
カミラ「とにかく、お見合いは1週間後です」
アンナ「はいはい。ま、行くだけね。行くだけ。今から断りの手紙を書いておいてちょうだい」
カミラ「……それが」
アンナ「なに?」
カミラ「相手が断らない限り、縁談を進めると国王様がおっしゃってまして……」
アンナ「はああ!? なによそれ! 横暴よ横暴!」
カミラ「私に言われましても……」
アンナ「仕方ない。相手を暗殺するか。すぐに暗殺チームを選抜して」
カミラ「外交問題になりますよ!」
アンナ「うーん。……あっ! いいこと思い付いたわ」
カミラ「……嫌な予感しかしないのですが」
アンナ「うふふふふふ。あっちが断ってくればいいのよね。あっちが」
カミラ「……」
場面転換。
馬車の中。
カミラ「姫様。やっぱりマズいですよ」
アンナ「うるさいわね。それに、私のことは王子、でしょ?」
カミラ「……王子こそ、私、はマズいんじゃないんですか?」
アンナ「ああ、そっか。ゴホン!」
ここからアンナは男っぽい声で。
アンナ「俺はアンナ。第6王子だ」
カミラ「……名前、そのままで大丈夫ですか?」
アンナ「いいんだ。変に変えて間違えたらマズいだろ?」
カミラ「……完璧になりきってますね」
アンナ「ふふふふ。俺の作戦は完璧だ」
場面転換。
アンナとカミラが歩いてくる。
アンナ「いやいや。どうも。俺は第6王子のアンナだ。よろしくな、ノア王子……って、え?」
ノア「あの……あれ? アンナ姫じゃ……?」
アンナ「しょ、少々お待ちください」
アンナが振り返りカミラとコソコソ話す。
アンナ「どういうことだ? 女だぞ?」
カミラ「おかしいですね……」
アンナ「あの、クソ親父、女同士で結婚させようとしたのか?」
カミラ「あー。国王様、そう言うの好きですからねー」
アンナ「ちっ! あのド変態めが」
カミラ「……王子も人のこと言えないと思いますけど」
アンナ「まあ、いい。じゃあ、種明かしして御破談にするか」
カミラ「いけません」
アンナ「なんでだ?」
カミラ「お見合いの場で男装して欺こうとしたなんて知れ渡れば、大問題ですよ。押し通すしかありません」
アンナ「……ちっ。策士策に溺れるか」
カミラ「どちらかというと自業自得かと……」
アンナ「とにかく、相手に嫌われればいいわけだろ? そんなのチョロいぜ」
カミラ「そうですね。人に嫌われるという点で言えば、王子は天才ですから」
アンナ「ふふ。まあな」
アンナが向き返り、ノアに話しかける。
アンナ「姫。お待たせしました。どうやら手違いがあったみたいですね。親父にも困ったものですよ」
ノア「そ、そうですね。こちらこそ、失礼いたしました」
アンナ「それでは参りましょうか」
ノア「はい」
リアム「それでは、こちらへどうぞ」
一同が歩き出す。
アンナ「……」
ノア「あの、なにか?」
アンナ「そちらは執事ですか? 随分と若いですね」
ノア「ああ、リアムですか? ええ。孤児だったのを引き取ったんです。それからは弟のように思っています」
アンナ「へえ……」
カミラ「はあ、はあ、はあ……」
アンナ「(小声で)どうした? そんなに興奮して」
カミラ「可愛いショタですね。……きっと、姫は夜な夜なあのショタに悪戯を……。ああっ! 羨まし……許せません!」
アンナ「……お前、それでよく、人のことを変態と言えたな」
カミラ「危険なので、あのショタをうちで保護しましょう」
アンナ「……大問題になるだろ」
ノア「……あの、どうかなさいましたか?」
アンナ「ああ、いえ。その……珍しいですね」
ノア「え?」
アンナ「普通、身近に置く者は同性が多いですよね?」
ノア「でも、そういう王子も女性を傍に置いてますよね?」
アンナ「あ、まあ……そうですね」
ノア「ふふ。お互い、変わり者なんですかね」
アンナ「……はは。そうみたいですね」
場面転換。
アンナとノアが庭を散歩している。
アンナ「立派な庭ですね。よく整備されている」
ノア「ふふ。私は何もしてませんけどね。シロの物が勝手にやってるだけですよ」
アンナ「はは。はっきりと物をおっしゃる人だ」
ノア「私、自身を飾るのが苦手で……」
アンナ「そうですか。俺もです。実は俺はかなりドSでしてね。人をムチで打つのが好きなんですよ」
ノア「奇遇ですね。私はドMなんですよ。手加減なくムチで打たれるとゾクゾクするんです」
アンナ「……」
ノア「……」
アンナ「実は俺には変わった趣味がありましてね。男同士が絡み合うのを見るが好きなんです」
ノア「……奇遇ですね。私は女の子同士が絡み合うのが大好きなんです」
アンナ「ええ? それだとさぞ、生き辛いでしょう?」
ノア「ふふ。変な目で見られるのには慣れました」
アンナ「へえ……。それはそうと」
場面転換。
アンナとノアが散歩から戻ってくる。
二人は本当に楽しそうに笑っている。
アンナ「ははははははは」
ノア「ふふふふふ」
カミラ「あ、あの……王子?」
アンナ「いやあ、姫は本当に面白い人だ。ここまで気が合う人には初めて会った」
カミラ「ということは、姫はかなりの変人と言うことですね」
アンナ「俺……姫と結婚しようかな」
カミラ「いやいや。無理ですってば」
アンナ「おっと、ちょっとお手洗いに」
ノア「あ、私も……」
アンナとノアが歩いていき、別々のドアに入って行く。
カミラ「あっ!」
リアム「あっ!」
場面転換。
ガチャリとドアが開いて、アンナとノアが同時に出てくる。
アンナ「ふう……」
ノア「すっきりしました」
アンナ「……あれ?」
ノア「……え?」
アンナ「えええええー! なんで、姫が男子トイレに?」
ノア「王子こそ、なんで女子トイレに!?」
アンナ(N)「この後、紆余曲折があって、私たちは結婚することになるのだけど……それはまた、別の機会にお話しするわ」
終わり。