■概要
人数:3人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
楓 28歳
陸翔 30歳
美里 27歳
■台本
楓(N)「私の旦那は何事も一生懸命だ。良く言えば、真面目。悪く言うと周りが見えなくなる。今は仕事が忙しいみたいだ。……というより、忙しくしているのかもしれない。ずっと仕事に打ち込んでいる」
ガチャリとドアが開き、陸翔が入ってくる。
陸翔「……ただいま」
楓「今日も遅かったのね。あんまり無理したら体、壊すわよ?」
陸翔「……」
陸翔が歩いていき、部屋に入って行く。
楓「あ、あなた。晩御飯作ってある……。あーあ、部屋に入っちゃった」
楓(N)「こんな感じで、旦那はただ、寝に帰って来るだけの生活だ。……忙しくて、私の想いなんて届かない。私はいつも近くにいるのに」
場面転換。
陸翔の部屋。
陸翔がいびきをかいている。
楓「……もう、やっぱり、脱ぎっぱなし。シワになるからちゃんと掛けてって言ったのに」
楓がスーツを拾って、ハンガーにかける。
陸翔のいびき。
楓「……あんまり無理しないでよ」
場面転換。
朝。
陸翔が起きる。
陸翔「んー(伸びをして)。はあ、もう朝か。……あれ? スーツ掛かってる?」
ベッドから出て、起き上がり、部屋を出ていく。
場面転換。
洗面所で顔を洗う陸翔。
陸翔「ふう……。って、ん? あっ! おーい、楓―! タオルー!」
しかし沈黙。
陸翔「……はあ。何やってんだ、俺」
顔が濡れたまま歩き出す陸翔。
場面転換。
棚からタオルを出して顔を拭く陸翔。
陸翔「ふう。……ん? 俺、いつ選択したっけ?」
顔を拭きながら歩く陸翔。
ピタリと立ち止まる。
陸翔「……あ、ご飯だ。……はあ、また勝手なことして」
椅子に座る陸翔。
陸翔「……いただきます」
ご飯を食べ始める陸翔。
場面転換。
掃除機をかけている楓。
楓「ふう。……こんなものかな? あとは洗濯を取り込んで、晩御飯を作って……」
そのとき、ドアが開く音。
楓「あれ? もう帰ってきたの?」
美里に支えられながら陸翔が入ってくる。
美里「課長。やっぱり、病院に行った方がいいですよ」
陸翔「……いや、大丈夫。少し休めば平気だよ」
美里「そんなこと言って。この前も会社で眩暈を起こして倒れたじゃないですか」
陸翔「……はは。君には迷惑をかけちゃったかな」
楓「……」
美里「迷惑だなんて思ってません。……っていうより、もっと……迷惑かけてください。課長には良くしてもらってますから」
陸翔「……」
美里「あ、そうだ。私、ご飯作りますよ? 課長、コンビニのお弁当ばっかりなんじゃないですか?」
陸翔「あー、いや、その……」
美里「ちょっと待っててくださいね。すぐ作れるものを……って、あれ?」
陸翔「どうかしたか?」
美里「……課長の家、綺麗ですね。誰か、掃除してくれてるんですか?」
陸翔「ああ。きっと母さんだ。時々、来て、掃除とかご飯の用意とかしてくれてるんだよ」
美里「そうだったんですか」
陸翔「……妻が死んでから、母親も随分と気を使ってくれてさ。……悪いなとは思うんだけど」
美里「その迷惑。私に掛けてくれませんか?」
陸翔「……え?」
美里「私……課長のこと、放っておけないです。……私に支えさせてくれないですか?」
陸翔「……でも、俺。あいつのこと……忘れられないかもしれないぞ」
楓「……」
美里「待ちます」
陸翔「……ありがとう」
楓(N)「よかったね。これでもう、私がいなくても大丈夫かな? 今度はちゃんと、その人を見ててあげてね。……それじゃ、さよなら。幸せになってね」
終わり。