催眠術

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■概要
人数:5人以上
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ(実は怖い結末)

■キャスト
泰雅(たいが) 17歳 高校生
絵麻(えま) 17歳 泰雅のクラスメイト
母親 47歳 泰雅の母親
女性 20~25歳
不良 22歳くらい
少年 16歳くらい
青年 24歳くらい
警察1~2 性別年齢ともに自由

■台本

放課後の教室。

泰雅「……催眠術?」
絵麻「そ。けど、この催眠術は相手を操るとかじゃなくて、ただ眠らせるだけなんだけどね」
泰雅「眠らせる、ね。あれか? 五円玉を目の前で揺らして、あなたは段々眠くなる~的なあれか?」
絵麻「いや、あんたいつの時代の人間よ。今のはもっとスタイリッシュなの」
泰雅「ふーん。絵麻はいつも、変なの調べてくるよなー」
絵麻「いいじゃない。面白そうでしょ? ってことで、試させて」
泰雅「俺を眠らせて、どうするつもりだ!?」
絵麻「財布の中身を取る、とか?」
泰雅「あー、そっちか……」
絵麻「いやいや、冗談だって。ってことで、実験実験」
泰雅「まあ、いいけど、無理だと思うぞ。俺、そういうの疑り深いからかかりづらいんだよ」
絵麻「ま、ものは試しってことで」
泰雅「わかったよ」
絵麻「じゃあ、私の右手をジッと見ててね」

絵麻が右手を独特な動きでひらひらと動かす。

泰雅「その動き、なんか意味あるのか?」
絵麻「いいから、ちゃんと見る」
泰雅「はいはい」
絵麻「じゃあ、行くわよ、はい!」

パンと両手を叩く。

泰雅「……」
絵麻「……どう?」
泰雅「いや、どうって。見た通りだよ」
絵麻「……はあ。やっぱ、ダメか」
泰雅「ま、催眠術なんて、そんなもんだよ」
絵麻「じゃあ、また面白いの見つけたら実験台になってね」
泰雅「……実験台って」

場面転換。
ガチャリとドアを開けて泰雅が帰って来る。

泰雅「ただいまー」

母親がやってくる。

母親「あんた、この前、テストあったんでしょ? 絵麻ちゃんから聞いたわよ」
泰雅「げっ! あいつ……余計なことを」
母親「あんたねぇ。成績を落とさないっていうから、うるさく言わなかったのよ。それなのに、テストの答案を黙ってださないなんて。話が違うじゃないのよ!」
泰雅「(つぶやくように)いや、いつもうるさく言うじゃん……」
母親「ちょっと、こっちに来なさい!」
泰雅「いや、今日は疲れてるんだよ。明日聞くら、明日」
母親「ダメ! 今!」
泰雅「……ねえ、母さん。ちょっとこれ見て」
母親「なに?」
泰雅「こうやって右手を動かして……」

泰雅がひらひらと右手を動かす。

母親「なになに? なんなのよ?」
泰雅「はい!」

パンと両手を叩く。

母親「……え? あ……」

母親がドサリと倒れる。

泰雅「……え? マジで? マジでかかっちゃった?」

近づいて母親を揺らす泰雅。

泰雅「母さん? 母さん?」
母親「……ん? あれ? 私、何してたんだっけ?」
泰雅「急に倒れたんだよ。疲れてるんじゃない? 少し休めば?」
母親「そ、そうね。そうするわ」

母親が歩いていく。

泰雅「……マジか」

場面転換。
放課後の教室。

絵麻「ええー? ホントに?」
泰雅「そうそう。母さんにかかったんだよ。あの催眠術」
絵麻「ホントに? ちょっと、私に掛けてみてよ」
泰雅「おう。……じゃあ、この右手をジッと見てくれ」
絵麻「うん……」

泰雅がひらひらと右手を動かす。
そして、パンと両手を叩く。

絵麻「うう……」

机にうつぶせになって、眠ってしまう絵麻。

泰雅「……おお。上手くいった。俺、催眠術の才能があるのかも」

場面転換。
道を歩いている泰雅。

泰雅「ふふふふ。相手を一瞬で眠らせるかぁ。何に使おうかなー」

そのとき、コンビニの前から怒鳴る声が聞こえる。

不良「おいおい、ねーちゃん。あんたがぶつかったせいで、飲んでたジュース、服にかかっちまったんだけど」
女性1「いや、あなたがそんなところに立ってるから……」
不良「ああ? 俺が悪いってのかよ!?」
女性1「ちょっと、触らないで!」
不良「お前、ちょっとこっち来いよ」
女性1「や、やめて……」

泰雅が駆け寄る。

泰雅「おい、止めろよ」
不良「ああ? なんだ、お前?」
泰雅「ちょっと、この右手を見ろ」
不良「ああ?」

泰雅が手をフルフルと動かし、パンと手を叩く。

不良「うっ!」

不良が倒れる。

女性1「え?」
泰雅「ふう。大丈夫でしたか?」
女性1「あ、ありがとう。助かったわ」
泰雅「いやいや。当然のことをしただけですよ」
女性1「ねえ、連絡先教えてくれない? 今度お礼するから」
泰雅「え? あ、はい……」

場面転換。
道を歩く泰雅。
上機嫌で鼻歌を歌う泰雅。

泰雅「ふふふ。俺は無敵だぜ~」

すると店から少年が出てくる。

少年「やっと買えた。ミキスト3、ゲットだぜ」
泰雅「あ、ミキスト、今日発売日だったんだ……。あのゲーム人気で買えないんだよなー」
少年「さっそく、帰ってやろうっと」
泰雅「ねえ、ちょっといいかな?」
少年「え? なに?」
泰雅「ちょっと手を見て」

手を振りってからパンと叩く。

少年「うう……」
泰雅「すまんな。このゲームはいただいていく」

場面転換。
パンと手を叩く音。

店員「うっ!」
泰雅「ごめんねー。今度払いに来るからさー」

場面転換。
パンと手を叩く。

男「うっ!」
泰雅「ごめん。今月、小遣いが足りなくなっちゃって」

場面転換。
パンと手を叩く。

青年「うう……」
泰雅「あははははは。俺は無敵だぜー」

場面転換。
道を歩く泰雅。

泰雅「ふんふんふーん! 今日は何して遊ぼうかなー」
警察1「いたぞ、例の少年だ!」
泰雅「え? 警察?」

ドドドとたくさんの警察に取り囲まれる。

泰雅「うわー。囲まれちゃった」
警察2「手を上げて床に伏せろ」
泰雅「俺を捕まえようっての? 無駄無駄」
警察1「おい、動くな!」
泰雅「さあ、みんな眠ってちょうだい」

泰雅が手をひらひらと動かし、パンと手を叩く。

警察2「おい、動くなって言ってるだろ!」
泰雅「え? なんで?」

もう一度、手を叩く。

警察1「今度動いたら撃つぞ!」

泰雅「嘘だ! えい!」

もう一度、手を叩く。

警察2「撃て!」

銃声が響き渡る。

泰雅「あ……ああ……」

どさりと倒れる泰雅。

場面転換。
放課後の教室。

絵麻「……が? 泰雅?」
泰雅「え? あれ? 俺、今、撃たれて?」
絵麻「何言ってるの?」
泰雅「いや、催眠術……」
絵麻「ふふふー。掛からないって言って、見事にかかったわね」
泰雅「え? ……あ、なんだ、夢か」
絵麻「これに懲りたら、悪戯なんてやめることね」
泰雅「ああ……。もう、催眠術は懲り懲りだ」

終わり。

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