■概要
人数:3人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、コメディ
■キャスト
魔王
魔物
勇者
■台本
魔王城の魔王の間。
魔物「魔王様、報告します。第7魔王軍がゴラン王国を占領しました」
魔王「ええ! マジで!?」
魔物「はい……。確認は取れてます」
魔王「はあ……。そっか。ゴラン王国ならと思ったんだけどなぁ。で? 人間側の犠牲者は?」
魔物「怪我人が12人とのことです」
魔王「死者は出してない?」
魔物「はい。そこは徹底するように言ってますから」
魔王「……それでも、圧勝かぁ」
魔物「そのようで」
魔王「……どうしよう?」
魔物「……どうしましょうね」
魔王「あー、もう! ノリで侵略とかやらなきゃよかった」
魔物「まさか、ここまで侵略が成功するとは思いませんでしたからね」
魔王「ちょっとした暇つぶしのつもりだったんだけどなぁ」
魔物「今や、大陸の3分の2を占領してますからね」
魔王「どうしよう……。パパに怒られる」
魔物「あと10年で、奥様との旅行から戻られますからね」
魔王「うーん。うーん。占領したところから撤退する?」
魔物「いくつかの都市から撤退してますが、人間たちは何かの罠かと思い、近寄らないですね」
魔王「おかしいなぁ。なんで、こんなに勝てちゃうの?」
魔物「まあ、人間と魔物では身体能力が格段に違いますから」
魔王「うーん。パパの話では太ったデブの商人でさえ、その辺の魔物より強いって話だったんだけどなぁ」
魔物「先代の時代から、500年くらい経ってますからね」
魔王「どうしよう、どうしよう……。あ、勇者とかは? こういうときに出てくるって話だよね?」
魔物「いえ、今のところは、そういう者の話は入ってきてません」
魔王「うーん。困ったなぁ。いきなり、和平交渉してもダメだよね?」
魔物「こちらがかなり優勢ですからね。人間たちも警戒するでしょう」
魔王「うー。頼む! 勇者よ! 現れてくれー!」
場面転換。
バンとドアが開く音。
魔物「魔王様! ついに! ついに来ました! 勇者です! たった今、城に入ってきました!」
魔王「やったぁー! よし! じゃあ、すぐにここに通して」
魔物「いえ、そんなことをすると罠だと思われます」
魔王「あ、そっか。じゃあ、四天王にはなるべく無傷でここに通すように言っておいて。できれば、そこそこ激戦をしてくれると助かるんだけど」
魔物「結構、難易度が高いですね」
魔王「上手くいったらボーナス出すって言っておいて」
魔物「承知しました」
場面展開。
バンとドアが開き、勇者たちが入って来る。
勇者「はあ、はあ、はあ……。辿り着いたぞ」
魔王「ふふふ。よくぞ、ここまで辿り着いた。だが、私には勝てまい」
魔王(N)「うんうん。いいねいいね。なんか、装備も凄い凝ったデザインだし、剣も格好いいし、これ、絶対強いやつだ。よーし! 負けるぞぉ」
場面転換。
勇者「くっ! つ、強い……。さすが魔王」
魔王「……ふふふ。貴様らこそ、やるではないか」
魔王(N)「えええー! 超弱い。どうしよう? なんとか、負けないと……。四天王たち、よく、上手く負けれたな。すごいよ」
勇者「こうなったら、これを使うしかない。いくぞ! 光の玉だ!」
魔王「なに! 光の玉だと!」
魔王(N)「おおー。なんか、知らないけど、凄そうなアイテムだ。きっと、物凄い効果があるんだろうな」
勇者「はああああ!」
ぴかーっという効果音。
魔王「ぐあああああああああ!」
魔王(N)「……あれ? なんだろ? ただ、ピカッと光っただけだけど? なんの効果もないけど? しかも、自分で使って、勇者たちの方が目がくらんで苦しそうだけど……」
勇者「う、うう……」
魔王「……」
魔王(N)「こっちも苦しむフリして、勇者たちの目が治るの待った方がいいよね」
勇者「よ、よし! これで止めだぁーーー!」
勇者が魔王に斬りかかる。
しかし、ガキンという弾く音の後に、パキンという剣が折れる音。
勇者「なっ! 勇者の剣が、折れただと!」
魔王「……」
魔王(N)「うわー。どうしよう? 僕の体に傷一つ付けるどころか、剣、折れちゃった」
勇者「まさか……。これじゃ、もう、勝てない」
魔王(N)「まずい。勇者の心も折れちゃった。……よし、ここは」
魔王「ぐあああああああ!」
倒れる音。
勇者「え? ど、どういうことだ?」
魔王「くっ! 体には傷は付かなかったが、身体の内部にダメージを食らってしまった」
勇者「そ、そうだったのか。さすが勇者の剣だ」
魔王「くそう……。だが、魔族はこれで滅びることはない。いつか、再び、貴様らの前に立ち塞がるだろう。……がくっ」
勇者「やった! やったぞ! ついに魔王を倒したぞー!」
場面転換。
魔物が部屋に入って来る。
魔物「お疲れさまでした、魔王様。勇者たちは帰りましたよ」
ガバっと魔王が起き上がる。
魔王「ふう。上手くいった。これでパパに怒られずに済むかな」
魔物「はい。お見事でした」
魔王「よし、じゃあ、みんなで打ち上げやろう。どっか、温泉宿で」
魔物「はい。すぐに手配いたします」
魔王「ふう。疲れた疲れた。侵略なんてやるものじゃないね」
終わり。