鍵谷シナリオブログ

霊能力者

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉 

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:4人
時間:10分

■ジャンル
アニメ、現代、コメディ

■キャスト
優真(ゆうま)
葵(あおい)
安倍っち
幽霊

■台本

〇通学路(夜)

暗い道をスタスタと早足で歩く学校帰りの優真。

優真「あー、もう! すっかり遅くなっちまったよ。まずいな。この時間は……」

電柱を見て、ピタリと立ち止まる優真。

優真「……(ゴクリ)」

恐る恐る電柱からなるべく離れて歩く優真。

すると、スーッと電柱の陰から血だらけの男が出てくる。

ピタリと立ち止まる優真。

優真「あっ!」

幽霊と目が合う優真。

幽霊がパッと明るい顔になる。

幽霊「君、俺が見えるのか?」

優真「ぎゃーーー! 見えません! 見えませせーん!」

優真がダッシュで逃げる。

幽霊「待って! 話を聞いてくれー!」

優真を追ってくる幽霊。

〇学校・教室

机に突っ伏している優真。

そこに葵がやってくる。

葵「おやおや。昨日も悪霊に襲われてたのかな?」

優真「(顔を上げず)うっせー」

葵が優真の前の席に座り、優真の方を見る。

葵「難儀な体質だよね」

優真「はあ……。もうやだ」

葵「私としては羨ましいんだけどねー。幽霊見れるとかさ」

優真「変われるなら、変わってやりたい」

葵がニヤリと笑い、人差し指を立てる。

葵「そんな優真に朗報です。ついに、あの有名な霊能力者とコンタクトが取れました!」

怠そうに起き上がる優真。

優真「霊能力者だぁ? ペテン師が多いだけだろ」

葵「いやいや、今回は違うんだって。マジだよ、マジ」

優真「もういいよ」

葵「そんなこと言っていいのかなぁ? あの陰陽師をやっている、ミスター安倍っちだよ」

優真「うさんくせえ」

葵「まあまあ、会うだけ会ってみたら?」

優真「うーん……」

〇優真の部屋(夕方)

優真と安倍っちが向かい合い、その後ろに葵が立っている。

安倍っち「ふむふむ。なるほど。確かに、これは凄い霊力だね」

優真「(胡散臭そうに)……」

安倍っち「あははは。今まで、ペテン師に騙され続けてたかな?」

優真「そうっすね。霊能力者って、みんなペテン師でしたよ」

葵「ちょっと、優真!」

安倍っち「まあ、仕方ないよ。本物なんて滅多にいないしね」

優真「あなたは違うんですか?」

葵「優真!」

安倍っち「じゃあ、こうしよう。報酬は成功報酬ってことでどう?」

優真「……効果がなかったら払わなくていいってことですか?」

安倍っち「そういうこと」

優真「それなら、まあ……」

安倍っち「よし、じゃあ、さっそく……」

安倍っちが懐に手を入れる。が、ピタリと動きを止める。

安倍っち「念のために聞くけど、俺の弟子にならない? 君なら、いい陰陽師になれそうだ」

優真「勘弁してくださいよ」

安倍っち「そう。残念だ」

安倍っちが懐から札を出し、優真のオデコに貼る。

そして、右手の人差し指と中指を立てる。

安倍っち「はああああああああ!」

優真「……」

安倍っち「これでよし、と」

優真「……今のは?」

安倍っち「霊力を封印したんだよ」

優真「……そんな簡単にですか?」

安倍っち「もっと仰々しい儀式をやると思ったかい?」

優真「……」

安倍っち「意外とこんなもんだよ、本物術なんてね」

優真「……ふーん」

安倍っち「さてと。行こうか」

優真「え? どこにですか?」

安倍っち「確かめに」

〇山道(夜)

車が一台、道を走っている。

辺りは真っ暗で、車のライトの光だけが明かりになっている。

〇廃病院

車が止まる。

そして、安倍っち、優真、葵が出てくる。

安倍っち「ここは地元でも有名な心霊スポットだ」

葵「へー。聞いたことなかったなぁ」

安倍っち「あははは。まあ、本物はね。誰も来なくなるから、逆に噂は広がらないものさ」

優真「……」

葵「でも、確かに、なんか不気味な雰囲気がする」

安倍っち「だろ? 霊力のない君でも、感じるくらいここには霊が溢れている」

優真「……」

葵「優真、どう?」

優真「……見えない」

葵「え?」

優真が葵の両肩を掴む。

優真「すげーよ! 見えない! 幽霊が見えないよ!」

安倍っち「どうやら成功したみたいだ。あの、窓のところはどう? 女が顔を覗かせているけど見えるかい?」

安倍っちが指を指すところを優真が見る。

優真「見えません」

安倍っち「じゃあ、あっちは?」

違う方向を指差す安倍っち。

そこに目を向ける優真。

優真「見えないです」

安倍っち「うん。あれも見えないなら、もう大丈夫だ」

優真が祈るように両手を組み、膝まづく。

優真「ありがとうございます! 本当に、ありがとうございます!」

安倍っち「ふふ。満足してもらえてよかった。じゃあ、成功報酬、貰ってもいいかな?」

優真「もちろんです!」

〇通学路(夜)

暗い道をスキップして進む、学校帰りの優真。

優真「ふふふ。どんなに遅くなっても、今の俺に怖いものはないぜ」

前に幽霊を見た電柱を見て、立ち止まる優真。

優真「ふう。もう、俺は見えないぜ」

すると電柱の陰から、スーッと血だらけの幽霊が現れる。

優真「……え? なんで、見えるんだ?」

幽霊「やっぱり、見えるんですね!?」

優真「え? え? え? なんで? 俺の霊力は封印されたんじゃ?」

幽霊「小声で何を言ってるんですか?」

考え込んでいた優真がハッとする。

優真「あっ! まさか、あの廃病院。元々、幽霊なんかいなかったんだな!?」

幽霊「あの、聞いて欲しいことがあるんですよ」

優真「うるさい! うるさい! 俺は見えないぞー!」

走って逃げる優真。

幽霊「あ、待ってくださいよー」

幽霊が優真を追いかける。

優真「くそー! やっぱり、ペテン師じゃねーか!」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉   〈次の10枚シナリオへ〉 

モバイルバージョンを終了