■概要
人数:1人
時間:3分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
拓郎(たくろう)
■台本
拓郎「口は禍の元ってよく言うだろ? 俺は今までさ、失言で失敗した人を何人も見てきたよ。しかも、俺の親父は政治家だったからね。ことさら、言葉に対しては気を使えって、何度も教えられてきたよ。親父の知り合いの議員なんかも、失言で失脚したのも間近で見てきたし。しかもさ、言葉って、本当に厄介でさ。文章なんかは残るわけだから、言った、言わないなんてことはおきない。でも言葉は違う。言ってもいない言葉が、言ったということになることだってある。いわば、でっち上げだね。簡単な情報操作でなんとでもなるわけ。しかも、全然、違うことを言ったとしても、相手の受け取り方次第で、180度違った意味で伝わることだってある。だからさ、君も言葉には十分、気を付けなきゃダメだよ。出世しようと思っているなら、尚更だ。常に、失言には気を付けないと。……え? 俺? もちろん、今まで失言なんてしたことがない。……って、言いたいけど、実は一回だけあるんだ。……これはあんまり話したくないんだけどね。あれはちょうど3年前だ。あの失言のせいで、俺の人生は大きく変わったと言ってもいいだろうね。……ん? あー、そうそう。凄い、よく覚えてるなぁ。君の言う通り、俺が結婚した年だ。というより、それで結婚することになったんだよ。元々、彼女からの結婚の圧が強くなってね。それで、ついポロっと言ってしまったんだ。結婚しようかって。……え? いや、違うよ。それじゃない。その後に言った言葉が悪かった。俺は不意に『あ、失言した』って言ってしまったんだ。これで、もう、彼女は大激怒。そのせいで、俺は未だに月々の小遣い制だからね。そう。俺にとって『失言』という言葉が失言だったって話だよ。そういうわけだから、君も失言には気を付けるんだよ」
終わり。