■概要
人数:5人以上
時間:10分
■ジャンル
ドラマ、漫画、現代、シリアス
■キャスト
大和(やまと) 53歳 会社員
颯太(そうた) 26歳 大和の部下
瑠美(るみ) 16歳 大和の娘
加奈子(かなこ) 49歳 大和の妻
剛平(ごうへい) 60歳 大和の上司
会社員1~3
■台本
〇会社
机に向かい、パソコンで作業をする大和。そこに颯太がやって来る。
颯太「課長。今、パソコンでデータを送ったので、見ていただけますか?」
大和「ん? わかった」
大和がマウスを操作する。
大和「……」
颯太「言われたところは修正したので、問題ないと思いますが」
大和「……ここの部分なんだが」
颯太は小さく、ため息を付く。
颯太「はい。なんでしょう?」
大和「引用する数字が間違っているぞ」
颯太「……でも、1パーセントのズレですよ」
大和「んー。それでも気づいたなら修正するべきじゃないのか?」
颯太「……はい」
〇大和の家・リビング
瑠美がソファーに座って動画サイトを見ている。
番組の内容はお笑い。
瑠美「あははは」
そこに風呂上がりで、パジャマ姿の大和がバスタオルで頭を拭きながらやって来る。
大和「瑠美、風呂空いたぞ」
瑠美「んー(返事の感じで)」
番組のネタ。
タレント「じゃあ、ホテルに行ってみよー!」
タレントが独特なポーズを取っている。
瑠美「あはははは。やっぱ、ドラナラ好きだわー」
大和「……今の、面白いのか?」
瑠美「ん? お父さんには笑いのセンスがないからわかんないだけでしょ」
大和「……そうか?」
瑠美「どうせ、会社でもずーっと真面目に仕事してるだけでしょ? そんなんじゃ、若い子は付いてこないよ」
大和「……」
そこに加奈子がコップを持ってやってくる。
加奈子「気にしなくていいわよ。瑠美だって、友達にもう少し流行追ったらって言われて、慌ててお笑いの動画見てるんだから」
瑠美「ちょっ、母さん!」
加奈子「はい、麦茶」
大和「ああ、ありがとう」
麦茶を受け取って飲む大和。
加奈子「それより、加奈子。それ、去年の動画でしょ? 最近の見たら?」
瑠美「うるさいなぁ。面白いんだから、いいでしょ」
大和「……」
グイっと麦茶を飲み干す大和。
〇会社(夜)
パソコンに向かって仕事をしている大和。
社員1が立ち上がる。
社員1「お先に失礼しまーす」
大和「お疲れ様―」
社員2「あ、俺も帰ろ」
社員2も立ち上がって帰宅している。
〇同
一人残って仕事をしている大和。
そこに剛平がやってくる。
剛平「中島くん」
大和「あ、部長」
剛平「ちょっと、行かないか?」
飲みの仕草をする剛平。
大和「は、はあ……」
〇居酒屋
カウンターで並んで飲んでいる大和と剛平。
剛平「中島くんのチームはミスが少なくて、助かってるって評判だぞ」
大和「ありがとうございます」
剛平「ただ、あんまり仲良さそうじゃないな」
大和「そ、そうですかね?」
剛平「こうやって、部下と飲みに行ってるか?」
大和「いえ……」
剛平「飲みにケーションは必要だぞ。そうやって、課の結束を強めるんだ」
大和「……」
剛平「君はもう少し、肩の力を抜いて部下と接したらどうだ? ちょっと、固いんじゃないか?」
大和「そうですかね……」
〇大和の家
リビングでビールを飲んでいる大和。
横では加奈子と瑠美が話している。
瑠美「あーあ。私もA組がよかったなぁ」
加奈子「佐々木先生でしょ? 評判いい門ね」
瑠美「授業もさ、冗談言ったりして、面白いんだって」
加奈子「へー」
瑠美「クラスの結束も凄いって。団結力があって、体育祭とか学校祭とかでも凄いんだよね、A組って」
加奈子「楽しいに越したことないもんね」
瑠美「そうなんだよね」
大和「……」
〇会社(夜)
社員たちがパソコンを閉じ始める。
大和「……」
大和が立ち上がり、社員たちのところへ行く。
大和「な、なあ。今日、飲みに行かないか?」
社員1「え? あ、いや、いいです」
社員3「私も……」
大和「そ、そうか……」
颯太「お疲れ様です」
颯太が帰宅していく。
大和「お疲れ様……」
〇大和の家・リビング(夜)
電気が消えていて、暗い中、大和はテレビに向かっている。
大和「えーっと、これか?」
リモコンを操作して、動画を流す。
タレント「じゃあ、ホテルに行ってみよー!」
タレントが独特なポーズを取っている。
大和「……」
立ち上がってポーズを真似する大和。
〇会社(夜)
社員たちがパソコンを閉じ始める。
大和「……」
大和が立ち上がり、社員たちのところへ行く。
大和「(ごくりと生唾を飲み込む)」
深呼吸をする大和。
大和「じゃ、じゃあ、飲みにホテルに行ってみよー!」
大和が独特なポーズを取る。
その場がシーンと静まり返る。
大和「……あ、そ、その」
そのポーズのまま硬直する大和。
そして、一気に笑いが起こる。
社員1「課長、古いっす」
大和「え?」
社員3「古いって言うか、ほぼ死語?」
社員2「流行ったの2年前くらいだっけ」
大和「……」
落ち込む大和。
颯太「課長……。もしかして、部長になんか言われました?」
大和「え?」
社員1「あー、課長なら言いそう。飲みにケーションとか言ってさー」
大和「……」
社員2「今どき、飲みなんて、パワハラだよな」
大和「パワハラ……」
社員3「課長。私たちはこの課でよかったと思ってますよ」
社員1「そうそう。ちゃんと仕事とプライベートを分けてる課長は理想の上司です」
大和「……」
社員2「無理に周りに合わせなくていいですよ。それはこの課、みんなの意見です」
颯太「そうですよ。だから、課長。今後も失敗してもフォローお願いします」
社員1「お前、そればっかだな」
その場のみんなが笑う。
大和も苦笑いをする。
〇会社(昼)
いつも通りの仕事をしている大和と社員たち。
終わり。