■概要
人数:5人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス
■キャスト
瑛多(えいた)
拓海(たくみ)
彬(あきら)
哲郎(てつろう)
祐也(ゆうや)
■台本
瑛多「翠川(みどりかわ)翔(しょう)っすか? もちろん知ってますよ。まあ、この辺じゃ有名っすからね。……え? 俺っすか? あんま言いたくないですけど、5回くらいかな。喧嘩したの。……何勝何敗かって? はは。そりゃ、当然、俺の全敗……って言いたいところっすけど、逆ですね。俺の5勝っす。……もういいですか? 俺、忙しいんで」
場面転換。
拓海「あー、やっぱ翠川の話? だよなー。俺のところに取材来るなんて、あいつ絡みくらいなもんか。で? 何が聞きたい? どうせ、あいつとの喧嘩のことでしょ? あいつとは大体、20回くらいかな。殴り合いしたの。自慢じゃないけど、3ヶ月くらいもったんだぜ。これだけ長い時間、あいつと殴り合いできたのって、そんなにいないと思うけどなぁ。……ん? あはははは。何勝何敗って、もちろん、俺の全勝だよ。……あーあ、一回くらい、負けたかったなぁ。って、んなことあるわけないか」
場面転換。
彬「……翠川翔? うるせえな! どうせ、俺は一回も、喧嘩売られなかったよ! ……俺なぁ、結構、喧嘩には自信があったんだけどさ。所詮、翔の目には入んなかったんだろうな。けど、俺が転校してきたときには、テツさんとタイマンしてたから、仕方ないっちゃ、仕方ないか。せめて、一回くらいは勝ちたかったなぁ」
場面転換。
哲郎「ああ、あんたかい? 翠川翔の取材をしてまわってる記者ってのは。まあ、今や、世界チャンプだもんな。今まで取材されなかったことがおかしいくらいか。……ん? どうした? そんな変な顔をして。……ああー。そりゃそうだわな。世界チャンプになったあいつの武勇伝を聞きに来たのに、あいつの負けた話しか聞けないなんて、誰だって思わないもんな。……もちろん、俺だって、あいつに一度も負けなかった。……いや、負けるに値しなかった。あいつにとって、俺はゴールじゃなかったってだけさ。まあ、当たり前だよな。世界チャンプになるくらいの男が、俺なんかで満足するはずがねえよ。だからこそ、あいつはプロの世界に行ったんだ」
場面転換。
祐也「いやいやいや。僕が翔君の親友だなんて、おこがましいですよ。僕は単に、ずっと翔君の近くにいただけですから。僕が不良にイジメられているところを、翔君に助けてもらったんです。……え? もちろん、そのときは、僕と一緒に翔君もボコボコにされただけですけどね。でも、あの日からですよ。翔君の伝説が始まったのは。そして、翔君はついに世界チャンピオンっていうゴールにたどり着いた……。いや、もしかしたら、まだ先を見てるかもしれませんけど。……え? 負け続けている翔君がなんで、世界チャンピオンになれたか、ですか? ……あなたは、自分が成長し続けるために、なにが一番重要だと思います? その質問を僕は翔君に尋ねられたことがあるんです。たしか、僕はそのとき、努力し続けること、って言ったと思います。……でも、翔君は首を横に振った。一番重要なのは目標に向かい続けることだって言ったんです。そして、翔君はそれを実行しました。自分より強いと思った人に喧嘩を売るんです。で、ボコボコにされる。悔しくて特訓をする。そして、また挑む。でも、ここまでは普通じゃないですか。でも、翔君の変わってるところは、勝てそうと思ったら、もっと強い人を見つけて挑むんです。で、またボコボコにされて、特訓をして、挑む。また勝てそうになったら、次の強い人を見つける。そうして、翔君は負け続けて強くなっていったんですよ。……え? どうして、勝ってから次に行かないか、ですか? ……それはたぶん、勝ったら目標達成しちゃうじゃないですか。だからだと思いますよ。そして、翔君は不良の中で、目標になる人がいなくなったから、プロの世界に行きました。……これは僕の予想ですが、翔君は最初から、世界チャンピオンを目標にしてたと思います。ですから、プロの世界では勝ち続けられたのかなって。だから、きっと、翔君は防衛戦をやらないと思いますよ。……次は階級を上げて、二階級制覇を目標にしてると思います」
終わり。