■概要
人数:2人
時間:5分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、コメディ
■キャスト
雪奈(ゆきな) 15歳
夏輝(なつき) 15歳
■台本
雪奈(N)「私は小さい頃からずっと憧れているシーンがある」
冬の通学路。
雪奈と夏輝が積もった雪の上を歩いている。
ビューっと冷たい風が吹く。
夏輝「ううっ! 寒いっ!」
雪奈「大丈夫? 夏輝くん」
夏輝「手が、かじかんで動かねぇ……」
雪奈「ねえ、夏輝くん。手袋取って」
夏輝「え? けど、そんなことしたら余計冷たく……」
雪奈「いいから」
夏輝「……わかったよ」
夏輝が手袋を取る。
夏輝「……これでいいのか?」
雪奈「はー……」
雪奈が夏輝の手を吐息で温める。
夏輝「……」
雪奈「どう? 暖かい?」
夏輝「ああ。サンキュー。暖かいよ。……けど」
雪奈「けど、なに?」
夏輝「雪奈も手袋取れよ」
雪奈「え? でも……」
夏輝「いいから」
雪奈「……う、うん」
雪奈も手袋を取る。
すると夏輝が雪奈の手を掴む。
雪奈「……あ」
夏輝「手を繋いだ方がもっと暖かいだろ?」
雪奈「う、うん……」
雪奈と夏輝が手を繋ぎながら歩いていく。
場面転換※ここまでが妄想。
雪奈「なーんて! きゃー! いいわね、いいわね! これよ! この展開よ! これで、夏輝くんをメロメロにしてやるんだから!」
そこに夏輝がやってくる。
夏輝「おい、雪奈。なに一人でブツブツ言ってんだ?」
雪奈「きゃああ!」
夏輝「うおっ!」
雪奈「あ、夏輝くんか。ビックリした」
夏輝「いや、ビックリしたのは俺の方なんだけど」
雪奈「あ、ごめん。じゃあ、学校、行こうか」
夏輝「おう」
雪奈と夏輝が積もった雪の上を歩いている。
夏輝「(鼻をすすって)うう、さみぃ。冬はこの寒さがなければ最高なんだけどな」
雪奈「……寒さがないと冬じゃない気がするけど……」
夏輝「それにしても雪奈はいいよなー」
雪奈「え?」
夏輝「どんなに寒くても、寒くないんだろ?」
雪奈「そ、そんなことないよ。私だって、寒いんだから」
夏輝「いやいや……。変な嘘付かなくていいから」
雪奈「う、嘘じゃないもん……」
そこにビューっと冷たい風が吹く。
夏輝「うおおお! 寒ぃぃ! 手がかじかんで動かねえ」
雪奈「っ!? ね、ねえ、夏輝くん」
夏輝「ん? なんだ?」
雪奈「ねえ、夏輝くん。手袋取って」
夏輝「え? けど、そんなことしたら余計冷たく……」
雪奈「いいから」
夏輝「……わかったよ」
夏輝が手袋を取る。
夏輝「……これでいいのか?」
雪奈「はー……」
雪奈が夏輝の手を吐息をかける。
夏輝「ぎゃあああああ!」
雪奈「え?」
夏輝「ヤバいヤバいヤバイ! 手、手が凍る……」
雪奈「え? え?」
夏輝「ホッカイロホッカイロ!」
夏輝が慌ててポケットからホッカイロを出してこする。
夏輝「ふいー! 生き返る―!」
雪奈「……」
雪奈が手袋を外す。
夏輝「……どうした? 手袋外して。まさか、お前もホッカイロ使いたいとかか?」
雪奈「違うの。あのね、ホッカイロより、もっと温かくする方法あるよ」
夏輝「へー。なんだ?」
雪奈「手を、繋ぐの」
夏輝「……いや、ごめん。無理」
雪奈「えええー! なんでー!?」
夏輝「いやいやいや。この状態で手なんて繋いだら、俺の手が手首から取れて落ちるだろ」
雪奈「……うう。そんなぁ……」
雪奈(N)「いつもそう。いつもいいところまでいって、結局上手くいかないのだ」
場面転換。
一気に夏。
セミの鳴く声とジリジリトした日差し。
雪奈「ふう。今日もそこそこ暑いな……」
そこに夏輝がやってくる。
夏輝「よお、雪奈」
雪奈「あ、夏輝くん。おはよ」
夏輝「今日も暑いな。俺、既に暑くてバテバテだ」
雪奈「あはは。そんなに?」
夏輝「いや、この暑さはやべーって。……あ、そうだ、雪奈」
雪奈「なに?」
夏輝「あ、あのさ。俺、雪奈に頼みがあるんだ」
雪奈「た、頼み? なにかな?」
夏輝「あの、その……。俺の手にさ」
雪奈「なに?」
夏輝「息を吹きかけてくれないか?」
雪奈「え? う、うん。いいけど」
夏輝「サンキュー。じゃあ、頼む」
雪奈「はー……」
雪奈が夏輝の手に吐息を吹きかける。
夏輝「あああー……。いい! 生き返るわ」
雪奈「……」
夏輝「いや、ホント、夏は雪奈がいてくれると、助かるわー」
雪奈「そ、そう?」
夏輝「あ、そうだ。俺さ、もっと涼む方法思いついたんだ」
雪奈「なに?」
夏輝「手を出してくれ」
雪奈「え? う、うん」
雪奈が手を出すと、夏輝が雪奈の手を握る。
雪奈「あっ……」
夏輝「ふわー! 効く―! 冷たくて気持ちいいー!」
雪奈「……」
夏輝「いやー、さすが雪女。夏は頼りになるよ。あははははは」
雪奈「……」
雪奈(N)「このあと、夏輝くんと私は手を繋いだまま学校まで行ったんだけど……。なんか違う。違うのよ! こんなの、全然、ロマンチックじゃないじゃなーーい! もっとこう、心が温かくなる、恋の予感がするのがいいのにぃ!」
終わり。