■概要
人数:1人
時間:3分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス
■キャスト
アリス
■台本
アリス「いらっしゃいませ。アリスの不思議な館へようこそ」
アリス「ふふ。お久しぶりですね。なにかあったのかと思い、心配してました」
アリス「……え? 私たちが忙しそうだったから、遠慮した、ですか?」
アリス「そうですか。お気遣いありがとうございます」
アリス「ですが、気遣いというのはときに、逆効果になることもあるのですよ?」
アリス「どういうことかというと……。そうですね、妹に会えば、身をもって知ることになると思いますよ」
アリス「ふふふ。すみません。少し、意地悪を言ってしまいましたね」
アリス「とは言っても、私も少なからず、思うところがあったので、その気持ちも察してください」
アリス「ふふ。わからないという顔をしてますね。まあ、わかっていれば、しばらく顔を出さないなんてことは逆効果だとわかるはずですからね」
アリス「本当は、答えは自分で見つけて欲しいのですが、特別にヒントをあげましょう」
アリス「ある村に一人の少女がいました。その少女は純粋で、誰にでも優しく、そして、人の役に立つことが何より幸せに感じるという素敵な少女でした」
アリス「その少女はいつも村の中を見て回り、困っている人を見ては助けていたのです」
アリス「ですが、少女一人の力でやれることなどは少なく、困りごとを解決できないことも多かったのです」
アリス「少女にとって、それが何よりの悩みでした」
アリス「そこで少女は村の近くにある山へ登り、神へ祈りに行きました」
アリス「少女は神に願いました。村の人たちを助けられる力が欲しいと」
アリス「その願いは神に届き、少女は特殊な力を得ることになったんです」
アリス「その特殊な力は絶大で、村人のどんな困りごとも解決できるほどでした」
アリス「少女は神に感謝しました。これでもっと多くの村人を助けることができる、と」
アリス「ですが、その数年後、少女は死にました。……いえ、殺されました」
アリス「少女を殺したのは……村人です」
アリス「なぜだかわかりますか?」
アリス「……村人は恐れたのです」
アリス「少女の特殊な力を」
アリス「少女は生涯、一度も、その力を使って村人を傷付けたことはありませんでした」
アリス「それどころか、少女はもっと村人たちの力になりたいと心から思っていました」
アリス「村人たちも、そのことは知っていたのにも関わらず、少女を殺しました」
アリス「つまり、少女の村人を想う気持ちが、少女自身を殺すことになったのです」
アリス「いかがでしたか?」
アリス「他者を想う気持ちがあっても、すれ違えば、それは逆に作用してしまいます」
アリス「今回、あなたが私たちを想って、ここに来なかったという配慮は、逆に作用したと言いたかったわけです」
アリス「ふふ。それでもよくわからないという顔をしてますね」
アリス「ですが、ここからは自分で答えを見つけてください」
アリス「今回のお話はこれで終わりです」
アリス「ふふ。それではまたのお越しをお待ちしております」
終わり。