鍵谷シナリオブログ

不思議な館の亜梨珠 マッドサイエンティスト

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉 

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:1人
時間:3分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代ファンタジー、シリアス

■キャスト
亜梨珠(ありす)

■台本

亜梨珠「亜梨珠の不思議な館へようこそ」

亜梨珠「……え? 別に怒ってないけれど」

亜梨珠「それにしても、随分と顔を出さなかったんじゃないかしら?」

亜梨珠「……別に怒ってないけれど」

亜梨珠「それで、今日はどんな用事できたのかしら?」

亜梨珠「ふふふ。ごめんなさい。冗談だから、そんな顔をしないで」

亜梨珠「不思議な話よね」

亜梨珠「……そうね。そういえば、あなた、なにか雰囲気が変わったきがするわ」

亜梨珠「……へえ。昇進したのね。だから、ここにあまり来られなかったのかしら?」

亜梨珠「あ、ごめんなさい。ちょっと嫌みっぽくなってしまったわね」

亜梨珠「でも、意外だわ」

亜梨珠「あなたって、人が良すぎて、いつも損しそうだから。昇進はできないタイプだとおもっていたのよ」

亜梨珠「あ、ごめんなさい。なんか、今日は少し、刺々しい感じになってるわね」

亜梨珠「でも、認められたみたいでよかったわ。あなたの良さって、なかなか伝わらないものだから」

亜梨珠「でも、私はあなたみたいな人こそが、世の中を変えられると思っているの」

亜梨珠「ふふ。ちょっと、大げさだったかしら」

亜梨珠「……そうだ。今日はこの話をしようかしら」

亜梨珠「これはある世界の、小さな村に住む一人の男の話……」

亜梨珠「その村はとても魔法が発達していたの」

亜梨珠「多くの魔法使いを選出した村と言うことでも有名なくらい」

亜梨珠「でも、その男は落ちこぼれだったの。幼少期から、才能がないと罵られ、魔法に関わるのはやめた方がいいと周りからずっと言われていたわ」

亜梨珠「それでも、その男は周りの言葉には耳を貸さずに、魔法の研究を続けたわ」

亜梨珠「それから何十年もずっと研究を続けたのだけれど、これといった成果は全くあげられなかった」

亜梨珠「しかも、その男の研究は村に伝わる研究方法から逸脱していて、魔法の研究をしているのかすら怪しいと思われていたの」

亜梨珠「周りからはマッドサイエンティストなんて呼ばれて、侮蔑されていたわ」

亜梨珠「それでも男は60年間、周りのことを気にせずに研究を続けた」

亜梨珠「そして、ついに男は見つけ出したの。どんな人間でも魔法を上手く使える方法を」

亜梨珠「それは道具を使う方法だったのだけれど、同時に物に魔力を込める方法も見つけたということだったわ」

亜梨珠「それはその世界では画期的な技術だったわ。それこそ、世界がひっくり返るほどに」

亜梨珠「それで、その技術を知った村の人はどうしたと思う?」

亜梨珠「なんと、村人たちはその画期的な技術を隠したのよ。絶対に外に漏れないようにね」

亜梨珠「……え? なぜかって?」

亜梨珠「村の人たちはずっとその男をバカにしていたのよ。変人だと、マッドサイエンティストだのと言って、嘲り、笑っていた」

亜梨珠「そんな男が、世紀の大発見をしたのよ。……バツが悪かったのね」

亜梨珠「……そんなつまらない理由で? って顔をしてるわね。でも、そうなのよ。人間って、そういうつまらないことに固執するものなの」

亜梨珠「でもね、そこで終われば、まだマシだったわ」

亜梨珠「男が新しい技術を発見してから、20年後。男は老衰で亡くなったわ」

亜梨珠「そして、その後……」

亜梨珠「なんと、村の人たちは男の新しい技術を発表したわ」

亜梨珠「思った通り、世界の魔法の常識がひっくり返り、人々の生活は一変したの」

亜梨珠「……ふふ。違うわ。その技術を横取りすることなく、ちゃんと、男の名前を出して、その男が発見したと発表したの」

亜梨珠「どうしてかって? おそらくだけど、罪悪感すら背負う気はなかったんだと思う」

亜梨珠「それでなくても、自分たちの醜態とプライドのせいで、新技術を隠していたのだから」

亜梨珠「さらに、横取りなんてできるほど度胸もなかったのじゃないのかしら」

亜梨珠「それからは村に銅像を建て、英雄だと持て囃したわ」

亜梨珠「すべては男が死んでから」

亜梨珠「どうかしら? 人間なんて、本来、そのくらい醜い部分も持っているのよ」

亜梨珠「だから、あなたのような人のいい人間は損をすることが多いわ」

亜梨珠「でも、ちゃんと評価されたみたいで、私としても嬉しいわ」

亜梨珠「これで、今日のお話は終わりよ」

亜梨珠「よかったら、もう少し多く顔を出してくれると嬉しいわ」

亜梨珠「それじゃ、さよなら」

終わり。

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉 

モバイルバージョンを終了