真剣なお付き合い

真剣なお付き合い

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■概要
人数:5人
時間:10分

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ

■キャスト
園田 勇作(そのだ ゆうさく) 54歳
晴樹(はるき) 31歳
園田 七海(そのだ ななみ) 48歳
園田 花蓮(そのだ かれん) 17歳
真(まこと) 17歳

■台本

勇作(N)「私は娘の花蓮を大事に育ててきた。娘だから、いつかは嫁に行く。それは十分理解している。しかし。しかしだ。高校でそれはないだろう? 早過ぎる。まだ学生なのに、結婚など、絶対にありえない。娘を持つ父親なら、私の気持ちが少しはわかっていただけるだろうか……」

場面転換。
バンとテーブルを叩く音。

勇作「ふざけるな! 娘はまだ17だぞ!」
七海「あなた、落ち着いて」
勇作「お前は黙ってろ! 大体、お前は平気なのか? 花蓮が……花蓮が……」
七海「高校生なら普通のことですよ? ねえ、先生?」
晴樹「はい。年齢的には早いことはないでしょう。学校でも、多くの生徒が……」
勇作「黙れ! 大体、いいのか! その、教師として!」
晴樹「ですので、こうしてご両親に許可をいただこうと……」
勇作「くぅ……。盗人猛々しい!」
七海「落ち着いてって。あなたがそんなんだから……」
勇作「あー、うるさいうるさいうるさい!」
晴樹「お父さん、落ち着いてください」
勇作「貴様にお父さんと言われる筋合いはない!」
晴樹「えっと、勇作さん」
勇作「若造のくせに、名前で呼ぶな!」
晴樹「……申し訳ありません。園田さん」
七海「ごめんなさいね。面倒くさくて」
晴樹「いえ……」
勇作「お前は黙ってろと言ったはずだ! ……お茶!」
七海「……はいはい」

七海が立ち上がって行ってしまう。

勇作「……なあ、先生よぉ」
晴樹「なんでしょう?」
勇作「学校側としてはどうなんだ? 学生が恋愛なんてよぉ」
晴樹「校長の見解としましては、禁止の一点張りは今のご時世に合っていないと。もちろん、不純異性交遊は禁止です」
勇作「当たり前だ!」
晴樹「ですが、健全であるならば、恋もまた勉強になるかと」
勇作「……あの子はまだ子供だ。絶対に恋に溺れるに決まっている」
晴樹「偏見です。園田は……花蓮さんはしっかりしてます。自制心だって持ち合わせていると判断しました」
勇作「あんたに言われてもなぁ」
晴樹「園田さんは花蓮さんに対し、子供という意識が強過ぎます。ちゃんと、一人の人間として見てあげてくれませんか?」
勇作「いけしゃあしゃあと……。そこまでして私の許可が欲しいのか?」
晴樹「はい。認めていただきたくて、来たので」
勇作「ダメだ。帰れ」
晴樹「ですが……」
勇作「警察を呼ばれたいか? さすがに教師としてそれは致命的だろ」
晴樹「……また来ます」

場面転換。
ガチャリとドアが開き、家から晴樹が出てくる。
歩き出す晴樹だが、すぐにまたドアが開く音。

花蓮「先生!」
晴樹「園田……」
花蓮「あの、先生……」
晴樹「大丈夫だ。俺に任せておけ」
花蓮「うん……」

場面転換。
リビング。

勇作「何度来ても同じだ! 帰れ!」
晴樹「……また来ます」

晴樹が出て行く。

七海「あなた……。先生は花蓮のために、ここまでしてくれているのよ? いい加減に認めてあげればいいのに」
勇作「うるさい! くそ! あんな高校に通わせるんじゃなかった! なにが、自由な校風だ! あんなのが教師だなんて、この世も末だ!」
七海「……?」

場面転換。
ザーッと雨が降っている中、傘をさしてずっと立っている晴樹。

場面転換。
家の中。

七海「……先生、まだ外で立ってるわよ」
勇作「立ちたいなら、立たせておけ」
七海「家に入れてあげればいいのに」
勇作「ダメだ! そしたら、どうせ私を説得しようとするだろ」
七海「まあ、そりゃ、そうでしょうけど」
勇作「絶対に認めないからな、私は」

場面転換。
真夏の昼間。セミがミンミンと鳴いている。
その中でずっと立っている晴樹。

場面転換。
家の中。

七海「先生、暑そう……。冷たい飲み物でも持っていってあげようかしら」
勇作「放っておけ!」
七海「でも、熱中症にでもなったら……」
勇作「知らん! そんなのはあの男が勝手に立ってるからだ」
七海「……ホント、難儀だわね」

場面転換。
リビング。

花蓮「なんで!? なんで認めてくれないの!?」
勇作「お前にはまだ早い!」
花蓮「そんなことないよ! クラスの子だって……」
勇作「他の子は関係ない! くそ。人のよさそうな顔をして、娘をたぶらかすなんて……」
花蓮「っ!? ちょっと、たぶらかすって何よ! お父さん、あの人のこと、何も知らないくせに」
勇作「うるさい! どうせ、興味ある程度だろ? お前くらいの年の子は、恋に恋してるだけだ」
花蓮「そんなことない! 私、本気だよ! 本気で……好きになったの。それは胸を張って言えるよ」
勇作「……花蓮」

場面転換。
風がビュンビュンと吹いている。
その中をジッと立っている晴樹。

晴樹「……」

ガチャリとドアが開き、勇作が出てくる。

勇作「何かが飛んできて怪我をされても困る。家に入りなさい」
晴樹「っ!? ……ありがとうございます」

場面転換。
リビング。

勇作「……あんたの本気度は十分伝わった」
晴樹「じゃあ……」
勇作「……信じていいんだな?」
晴樹「もちろんです」
勇作「……わかった。娘との交際を認めよう」
七海「あなた……」

ガチャリとドアが開く。

花蓮「ホント!? お父さん!?」
勇作「……高校生らしい交際の範疇だぞ」
花蓮「うん!」
晴樹「よかったな、園田」
勇作「……ん?」
花蓮「ありがとう、先生!」
晴樹「これくらいは当然だ。担任としてな」
勇作「ん? ん? ん?」
七海「どうしたの、あなた?」
勇作「なんか他人事っぽい気がしてな」
七海「あははは。そりゃそうよ。先生が付き合うわけじゃないんだから」
勇作「……へ?」
花蓮「じゃあ、お父さんに紹介するね。真くん、入ってきてー!」

ガチャリとドアが開いて真が入って来る。

真「ちーっす! 真っす! 花蓮ちゃんと真剣に付き合わせてもらいまーっす!」
勇作「……なっ」
花蓮「お父さんの許可が出たから、堂々と付き合えるね!」
真「だよねー! うっすうっす! テンション、上がるぅー!」
晴樹「言っとくが、健全な付き合いだからな」
花蓮「わかってるって」
晴樹「何かあったら、先生の責任になるんだから頼むぞ」
真「うっすうっす! 気を付けまーす!」
勇作「……っ! やっぱりダメだー! 許可はなしだ、なーし!」
花蓮「ええええ! そんなー!」

勇作(N)「私は娘の花蓮を大事に育ててきた。だからこそ、私が認めた男以外と付き合うことは許さないのだ」

終わり。

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