■概要
主要人数:5人~7人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、童話、コメディ
■キャスト
子ヤギA
子ヤギB
子ヤギC
子ヤギD
子ヤギE
オオカミ
母親
■台本
ナレーション「昔々、あるところにお母さんヤギと7匹の子ヤギが住んでおりました。最近、近くの森では凶暴なオオカミが出ると噂されていて、お母さんは子供たちに注意するように伝えます」
母親「いいかい、お前たち。オオカミがこのあたりに住んでるから油断してはいけませんよ」
子ヤギA「りょ!」
子ヤギB「家の中にいれば大丈夫っしょ!」
母親「そうよ。だから、外に出たり、オオカミが訪ねてきても、ドアを開けたらダメよ」
子ヤギC「あひゃひゃひゃ。そんな間抜けは家にはいないしー!」
子ヤギD「わかんないよ。最近の詐欺は巧妙になってきてるから」
子ヤギE「そうですね。大抵は大丈夫と思っている人こそ、よく引っかかると言います」
母親「さてと、そろそろお母さんはお出かけしようかしら」
子ヤギE「しかし、母上、よいのでしょうか? まだ3匹、紹介……もとい、出てきておりません」
子ヤギD「いいと思うよ。キャラ付けするの面倒くさいし。なんとか松さんよりさらに一体、多いんだよ。それに、なにより僕たちの出番が少なくなっちゃうしね」
子ヤギE「それもそうですね。というわけで、母上。他の3匹は寝ているという設定でお願いします」
母親「う、うん。なんの話をしてるのか、わからないけど、わかったわ」
子ヤギC「うひゃひゃひゃひゃ! でもさ、でもさ! お母さん出かけちゃうの危なくなくない?」
子ヤギB「平気っしょ! 母さんがオオカミごときに負けるって思う?」
子ヤギC「うしゃしゃしゃ。ないない!」
子ヤギE「母上相手に、一分持てば上出来といったところでしょうか」
母親「あれ……? お母さん、そんなに強かったっけ? まあ、いいわ。とにかくお母さんは出かけるから、オオカミが訪ねてきてもドアを開けたらダメよ」
子ヤギA「りょ!」
子ヤギD「お母さんも気を付けてね」
母親「行ってきます」
パタンとドアが閉まり、母親の音が遠ざかっていく。
子ヤギD「さてと、これからどうしようか? お母さんが帰ってくるまで、暇だよね」
子ヤギE「いえ、あれだけ伏線を張ったので、そろそろ来る頃ではないでしょうか」
子ヤギC「あひゃひゃひゃひゃ! 伏線、伏線!」
コンコンとドアがノックされる。
子ヤギB「さっそく来たっしょ!」
オオカミ「おう! 俺俺! 母親ヤギだ! ここ開けろや!」
子ヤギD「……」
子ヤギC「なんか、俺、腹減ったっしょ」
子ヤギE「そうですね。とりあえず、ごはんにしましょうか。台所に何かあるか、見てきてくれませんか?」
子ヤギA「りょ!」
オオカミ「おい! 無視すんなや!」
子ヤギD「なんか、気を張ってたのがバカバカしくなるよね」
子ヤギC「うひゃひゃひゃひゃ! 雑!」
子ヤギE「あのですね、オオカミさん。騙すにしても、もう少し誠意をもってくれませんか? 対応する気もおきません」
オオカミ「なっ! どうして、俺がオオカミってバレたんだ?」
子ヤギB「こいつ、天然っしょ」
子ヤギD「あのね、オオカミさん。まず、お母さんは俺なんて言わないし、母親ヤギなんて表現使わないから」
オオカミ「あれ? そうなのか? じゃあ、どう言えばいいんだ?」
子ヤギE「この場合はそうですね……。お母さんよ。開けてちょうだい。くらいがいいんではないでしょうか」
子ヤギD「そうだね。かえって、シンプルなほうが自然かも」
オオカミ「なるほどなぁ。ううん! よし、じゃあ、いくぞ」
子ヤギC「うひゃひゃひゃひゃ! 頑張って!」
オオカミ「お母さんよ。開けてちょうだい」
子ヤギD「うん。だいぶ、よくなったんじゃない?」
子ヤギE「そうですね。及第点といったところでしょうか」
オオカミ「……」
子ヤギD「……」
子ヤギC「……」
オオカミ「いや、ドア開けろや!」
子ヤギE「あのですね、オオカミさん。出直してくださいよ。もう、外にいるのがオオカミさんだとわかっているのに、開けるわけないじゃないですか」
オオカミ「あ、そうか……」
子ヤギD「ああ、あと、まず声でバレるんじゃないかな。お母さん、そんなだみ声じゃないし」
オオカミ「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 声でバレるって、そりゃないぜ! どうすりゃいいんだよ?」
子ヤギC「ひゃひゃひゃひゃ! チョークチョーク!」
子ヤギE「確かに、チョークを食べると声が綺麗になると聞いたことがあります」
オオカミ「ええっ! チョーク食うの? まずそうじゃねーか。無理無理」
子ヤギD「じゃあ、俺たちを食べるのをあきらめるんだね」
オオカミ「うっ! それも嫌だな。俺はお前らを食ってやりたい」
子ヤギE「では、もう少し誠意をもってください。多少の苦労はするべきです」
オオカミ「そ、それもそうだな。じゃあ、ちょっくら、行ってくるわ」
場面転換。
子ヤギC「30分後―!」
ドアがノックされる。
オオカミ「お母さんよ。開けてちょうだい」
子ヤギD「おお!」
子ヤギB「母さんに声、そっくりっしょ!」
子ヤギE「半信半疑でしたが、結構、変わるものですね」
オオカミ「がははははは! だろだろ?」
子ヤギC「うっしゃしゃっしゃ。そっくりそっくり!」
オオカミ「……」
子ヤギD「……」
子ヤギE「……」
オオカミ「いや、ドア開けろよ!」
子ヤギD「ああ、ごめんごめん。えっとね、ドアの下から足が見えるんだけどさ、それで、オオカミさんの足が見えるんだよね」
オオカミ「え?」
子ヤギE「黒いんですよ。あなたの足は」
オオカミ「げっ! マジか! ……どうしたらいいんだ?」
子ヤギC「うっしゃしゃっしゃ。小麦粉小麦粉」
子ヤギD「ああ、なるほどね。足に小麦粉をつければ、白く見えるてわけか」
オオカミ「なるほどなー。お前、頭いいな」
子ヤギC「えへへへへへー」
オオカミ「あっ! でも、俺、金ねーや。チョークで使い切っちまった。どうしよう?」
子ヤギE「仕方ありませんね。努力賞ということで、10円あげます。これでなんとか恵んできてもらってください」
子ヤギD「ドアの下から投げるから受け取ってね」
オオカミ「お! サンキューな。じゃあ、行ってくるぜ」
場面転換。
子ヤギC「30分後―!」
ドアがノックされる。
オオカミ「お母さんよ。開けてちょうだい」
子ヤギD「おお! 足も白いし、声もお母さんだ。完璧完璧」
子ヤギC「うっしゃしゃっしゃ。ほとんど、母ちゃんだー!」
子ヤギB「あんた、やればできるっしょ!」
子ヤギE「感動しました。よく頑張りましたね」
オオカミ「ふふっ! ありがとうよ。これもお前らのおかげだぜ」
子ヤギD「……」
オオカミ「……」
子ヤギE「……」
オオカミ「いや、ドア開けろよ!」
子ヤギD「あー、ごめんごめん。えっとね。お母さんって、鍵持ってるから、そもそも開けてなんて言わないんだよね」
子ヤギB「母さんなら、何も言わず、普通に入ってくるっしょ」
オオカミ「ちょ、待てよ! 最初に言えって!」
子ヤギE「ありがとうございました。いい、暇つぶしになりましたよ」
オオカミ「てめえら、人がおとなしくしてりゃ、付け上がりやがって!」
母親「あら、どちらさま?」
オオカミ「ん? 母親か? ちょうどいいところに来たな。まずはお前から食ってやる!」
母親「ああ、あなたが噂のオオカミですか」
オオカミ「ぐはははは! 食べてやる……ぶべっ!」
ガチャガチャと鍵が開く音。
母親「ただいま。今日の晩御飯はオオカミ汁よ」
子ヤギC「わーい!」
トタトタと歩いてくる足音。
子ヤギA「台所にご飯なかった」
子ヤギD「え? ずっと探してたの?」
ナレーション「こうして、母親と7匹の子ヤギは危機を乗り切り、幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし」
終わり