■概要
人数:3~4人
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、現代劇
■キャスト
加々美 歩(17)学生
母 (48)歩の母
前田 美紀(17)歩の友達
占い師 (?)
■台本
歩が走ってくる。
歩「(慌てて)リモコン、リモコン……あった」
歩がテレビを付ける。
ナレーター「それでは最後に星座占いです」
歩「よかった、間に合ったぁ。ラッキー」
ナレーター「今日の牡羊座の運勢は凶です。ラッキーカラーは赤で……」
歩「げっ、最悪……。見なきゃよかった」
母「歩! 何してるの! 学校遅刻するわよ!」
歩「はーい! 今出るって!」
歩が小走りでドアのところへ行き、ドアを開けて部屋を出ていく。
外。
歩が小走りをしていると、後ろから美紀が走ってくる。
美紀「おはよー」
歩「あ、美紀。またギリギリ? いい加減にしないと先生に反省文書かされるよ」
美紀「あんたが、それ言う?」
歩「私はまだ今月は3回目だもんね。まだ2回余裕あるし」
美紀「マジで? あたし、4回目でリーチなんだけど……」
歩「そっか。なら、私、置いて先行った方がいいよ」
美紀「なんで?」
歩「私、今日の運勢最悪だから。一緒にいたら遅刻するよ」
美紀「あのさぁ、あんまり占い信じすぎるのもどうかと思うんだけど」
歩「いや、あの番組の、すっごい当たるからさ」
美紀「あんた、先月は、なんとかって雑誌の占いが一番当たるって言ってたじゃん」
歩「いやぁ、あの占いの人、詐欺で訴えられたんだよね……」
美紀「これを機会に、占い見るの止めたら?」
歩「……不安で、外出れなくなる」
美紀「完璧、依存症ね」
歩「って、そんなこと言ってないで、先行った方がいいって」
美紀「はいはい。じゃあ、先行ってるかね」
美紀が走っていく。
歩「なんか急にバカバカしくなってきた」
歩が歩き出す。
すると、踏切の音がする。
歩「げっ! 開かずの踏切だ! あーあ、やっぱり、今日、ついてないや……」
踏切の音が鳴り響く。
学校のチャイム。
歩「ほんっと、最悪……」
美紀「まさか、抜き打ちテストあったなんてね」
歩「くそ……あのゴリラ」
美紀「遅刻した罰で、0点ってやり過ぎだよね」
歩「まあいいや、どうせ、今日なら良い点取れなかっただろうし」
美紀「それより、ご飯食べないの?」
歩「慌てて出たから、お弁当忘れた……」
美紀「ホント、今日は不運続きだね」
歩「でしょ? やっぱり、あの占い、当たるんだよね」
美紀「……今日は早退したら?」
歩「んー、そうしようかな。あ、美紀、なんか赤いもの貸してくれない?」
美紀「赤いもの? なんで?」
歩「ラッキーカラー赤なの」
美紀「……そっか。じゃあ、ハンカチ貸してあげる」
歩「ありがと、この恩は忘れないよ」
美紀「焼きそばパンでよろしく」
歩「……それじゃ、帰るわ」
外を歩く歩。
ぴたりと立ち止まる。
歩「あれ? こんなところに、占いのお店出来たんだ……。えーっと、なになに? 悪い運気を変えます? 今の私にピッタリじゃん!」
店に入っていく歩。
占い師「次の方、どうぞ」
歩「よろしくお願いします」
占い師「なるほど……。あなたは今日、運勢が悪いのが嫌で、学校を早退してきたんですね」
歩「え? すごい! なんで、わかったんですか?」
占い師「今日の運勢が悪いせいで、学校ですごく嫌なことが続いたんですね」
歩「すごい……。そうなんです! 助けてください、先生!」
占い師「わかりました。では、これをお持ちください」
歩「……運命の書?」
雀の鳴き声。
携帯のアラームが鳴る。
歩「んー、もう時間かぁ……。眠い……。でも、これも運勢を変えるためだから……」
がばっと起きて、アラームを消す。
居間のドアを開けて、歩が入ってくる。
歩「おはよー」
母「あら、今日は随分と早いわね」
歩「うん、まあ、ちょっとね」
母「まだ、朝ご飯作ってる途中よ。あ、歩、冷蔵庫から卵取って」
歩「はーい」
冷蔵庫を開ける。
歩「あれ? シュークリームある」
母「ああ、昨日の夜言い忘れたんだけど、もらったのよ」
歩「……食べていい?」
母「朝ご飯食べてからね」
歩「ラッキー」
ドアを開けて、部屋に入ってくる。
歩「えっと、リモコン、リモコン……って、そうだった。占いは見ない、だった」
ノートをペラペラとめくる。
歩「次は……いつもより、1時間早く、家を出る……か。早く行っても意味ないけど……まあ、そう書いてあるからなぁ」
通学路を歩く歩。
歩「うわー、すごいいい天気。天気がいいと、なんか気分いいなぁ」
ガラガラと教室のドアを開ける歩。
歩「……やっぱり、まだ誰もいないか」
歩いて自分の席に座る歩。
歩「早く来ると、やることなくて暇なのよね。……勉強でもするか」
勉強を始める歩。
ガラガラとドアが開いて、教師が入ってくる。
教師「お? 随分早いな」
歩「は、はい。昨日、遅刻したので……」
教師「しかも、早く来て勉強か。偉いな」
歩「……」
学校のチャイムが鳴る。
美紀「90点なんて、あんた、どんな魔法使ったの?」
歩「ふっふーん。朝、教科書見てたところが、モロ出たからね」
美紀「へー、ラッキーだったね」
歩「実は、これのおかげなの」
美紀「ん? 運命の書? うさんくさー」
歩「あんたには貸さないからね!」
通学路を歩く、歩。
歩「ふふふふーん!」
占いの店に入っていく歩。
占い師「その様子なら、運勢が変わったみたいですね」
歩「はい! この書のおかげで、運勢はばっちりです!」
占い師「いえ、運命の書のおかげではなく、あなたが、この書に従って、行動したからです」
歩「……は、はあ」
占い師「この運勢を続けたいですか?」
歩「はい、もちろん!」
占い師「では、このまま運命の書に書いてあることを続けてみてください」
歩「それだけですか?」
占い師「はい。あと、この行動に慣れたら、日記を書いてみてください」
歩「日記……ですか?」
占い師「いいですか? 運命の書に従ったことではなく、その日にあった、自分のことを書いてください」
歩「……わかりました」
占い師「あと、ここにはもう来なくても結構です。もし、何か行き詰ったら相談しに来てください」
歩(N)「占い師さんに言われた通り、私はしばらく、運命の書に従って行動した。そしたら、幸運は不思議と続いた。そして、日記を書き始めてから三ヶ月が経ったとき、気づいた。私の人生は占いで決められるんじゃなかったこと。私の人生は自分で書いていくものだと。私の人生はまだまっさらなのだ。この、タイトルも書いていない日記帳のように」
終わり