【声劇台本】すれ違う想い

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■ジャンル
ボイスドラマ、現代劇

■キャスト
前場 勇人(17)
御影 まこと(17)
沢下 ゆかり(17)

■台本

勇人(N)「俺の名前は前場勇人。人相が悪いせいか、周りからは怖がられることが多い。まあ、顔のことだけじゃなくて、喧嘩することが多いのもあるかもしれないけどな。そんな俺にも、実はちょっとした悩みがある。その悩みっていうのが……」

  まことが正拳突きをしている。

まこと「はっ! はっ!」

  そこに勇人がやってくる。

勇人「相変わらず、朝から真面目だな、まことは」

  まことが手を止める。

まこと「あ、勇人くん。おはよう」
勇人「そろそろ、出ないと学校、遅刻するぞ」
まこと「え? もうそんな時間? ちょっと待ってて、すぐ用意するから」
勇人「玄関のとこで、待ってるからな。早くしろよ」
まこと「うん。10分で準備する!」

  場面転換。
  勇人とまことが並んで歩いている。

勇人「それにしても、不思議だよなー」
まこと「なにが?」
勇人「こうやって、毎日、学校に行くのがだよ」
まこと「(笑って)学校に行くことは、普通のことなんじゃない?」
勇人「お前はそうかもしれねーけど、俺は違うんだよ。去年なんか、一週間に一回行けばいいほうだったからな」
まこと「……ごめん。余計なこと……だったかな?」
勇人「いや。感謝してるんだ。意外と、学校ってとこも、面白いってわかったからな」
まこと「そう。それなら、よかった」

  後ろからゆかりが走ってくる。

ゆかり「おーっす! 男2人で、今日も、朝から肩を寄せ合って仲良く登校ですか?」
勇人「ばっ! 別に寄せ合ってねーよ」
まこと「おはよう、ゆかりさん」
ゆかり「まこっちは相変わらず、固いなー。ゆかっちでいいって」
まこと「ははは……」
ゆかり「にしてもさー、なんで、毎回、あたしをハブるかなー。ヤロー2人で登校するより、女の子混ぜた方が、華やかじゃん」
勇人「お前んち、反対方向だし、お前、うるさいんだよ」
ゆかり「ひっどー。それが幼馴染に言うセリフかね」
まこと「ごめんね、ゆかりさん。明日から誘うよ」
勇人「間に受けんな。こいつに付き合ってたら、毎日遅刻しちまう」
ゆかり「おお! まさか、あんたの口から、遅刻なんて言葉が出るなんて……。成長したね」
勇人「うっせ」
ゆかり「いやー、まこっちには感謝だよ。よく、あの勇人を、ここまで更生させたもんだ」
まこと「こ、更生なんて……。僕はただ、毎日学校に来てほしいってお願いしただけだよ」
ゆかり「この勇人に、お願いをするだけでも、すごい度胸だよ。お願いの内容も内容だし、勇人もよく、オッケーしたね」
勇人「勝負の結果だからな。約束は約束だ」
ゆかり「すごいよねー。こんな細っこい体で、勇人に勝つんだもんなー」
まこと「そ、そんなっ! 僕は勝ってなんかないよ。あの一撃だって、単なる偶然だよ」
ゆかり「偶然だってすごいよ。勇人の顔に一撃入れるなんてさ。ね? 勇人」
勇人「……ああ」
まこと「僕はね。いつか、勇人くんに、ちゃんと勝負で勝つことが夢なんだ」
ゆかり「うわー。それはなかなかハードルが高い夢だね」
まこと「……」
勇人「いや、お前ならできるさ。才能があるかるからな」
まこと「ホント!?」
勇人「ああ。俺は、嘘は言わねー」
ゆかり「勇人がそういうなら、信じていいと思うよ。こいつ、ホント、お世辞とか言わないから」
まこと「ありがとう! 僕、頑張るよ!」
勇人「……ああ」

  遠くからチャイムが聞こえてくる。

まこと「あ、いけない! 今日、日直だったんだ。二人とも、僕、先に行くね」
勇人「おう」
ゆかり「じゃあ、また、後でね」
まこと「2人も、あんまりゆっくりしてたら遅刻しちゃうから、急いでね」

  まことが走っていく。

ゆかり「いい子だね、まこっち」
勇人「ああ……」
ゆかり「勇人が肩入れするのも、なんかわかるよ」
勇人「なあ、ゆかり……」
ゆかり「ん? なに?」
勇人「……いや、なんでもねえ」
ゆかり「気になるなー。言っちゃいなよ」
勇人「……時期がきたらな」
ゆかり「……まあ、いいけど」

  無言でゆかりと勇人が歩いて行く。
  場面転換。
  放課後。
学校のチャイム。
  まことが正拳突きをしている。

まこと「はっ! はっ!」

  そこにゆかりがやってくる。

ゆかり「やっほー。まこっち、頑張ってるね」
まこと「あ、ゆかりさん」
ゆかり「勇人がね、補習があるから、1時間、遅れるってさ」
まこと「そっか。ありがとう、わざわざ伝えに来てくれて」
ゆかり「ねえ……前から気になってたんだけど、なんで、まこっちは、そんなに勇人に勝ちたいの? なんか、恨みがある……とか?」
まこと「……勇人くんは、僕の憧れなんだ」
ゆかり「憧れ?」
まこと「勇人くんは覚えてないみたいだけど、小学校の時、イジメられてるところを勇人君に助けてもらったんだ」
ゆかり「へー。あいつがそんなことを」
まこと「勇人くんは、僕の理想像なんだ。あんな強い男になりたいって」
ゆかり「強いっていうか凶暴なだけだけどね」
まこと「僕のうちは道場をやってるでしょ? 跡取りとして、強くならなきゃって、必死だったんだ」
ゆかり「……そうだったんだ」
まこと「(涙ぐみながら)いくら特訓しても、強くなれなくて、馬鹿にされて……。どうして、男に生まれなかったのか、悔しくて……」
ゆかり「ん? ん? 今、おかしなワード言わなかった?」
まこと「え? あっ!」
ゆかり「どゆこと?」
まこと「じ、実は……その……僕、女なんだ」
ゆかり「ええええーーー!」
まこと「しっ! 声が大きいよ!」
ゆかり「でも、学ラン来てるじゃん」
まこと「この学校、服装自由だから……」
ゆかり「いや、自由だけどさ……」
まこと「このことは勇人くんには内緒にしておいて! お願い!」
ゆかり「う、うん……。さすがに言えないよ」
まこと「僕は勇人くんの隣にいたいんだ。対等な立場で……」
ゆかり「……だから、勇人に勝ちたいってことなんだね」
まこと「うん……」

  そこに勇人がやってくる。

勇人「補習、来週だった」
ゆかり「ひゃっ!」
まこと「きゃあ!」
勇人「ん? なんだよ、そんなにビビッて」
ゆかり「な、なんでもないよ。ね? まこっち」
まこと「う、うん」
勇人「……ふーん。まあ、いいや。じゃあ、さっそく特訓しようぜ」
まこと「うん! それじゃ、今日もお願いします!」
勇人「よし、こい」
まこと「はああああ!」

  場面転換。

勇人(N)「俺の名前は前場勇人。実は今、俺にはちょっとした悩みがある。それは……同性の……男を好きになっちまったかもしれないってことだ……」

終わり

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