■概要
人数:5人
時間:10分程度
■ジャンル
ボイスドラマ、ファンタジー、バトル
■キャスト
ロミオ
ジュリエット
隊長
侍女
王様
■台本
ジュリエット「おお、ロミオ! どうしてあなたはロミオなの?」
ロミオ「ジュリエット……。どうして君はジュリエットなんだい?」
ジュリエット「ロミオ……」
ロミオ「ジュリエット……」
ロミオ・ジュリエット「ああ、狂おしいほど、戦い(あいし)合いたい!」
場面展開。
戦場。剣を切り結ぶ音がそこら中から聞こえる。
ロミオ「みんな、俺に続くなよ! 一人で突っ込むから、邪魔をするな。うおおおお!」
隊長「い、いけません、ロミオ様―――!」
場面転換。
戦場。剣を切り結ぶ音がそこら中から聞こえる。
ジュリエット「ここは私一人で行きます。みんなは後でゆっくり来てください」
侍女「い、いけません、姫様―――!」
場面転換。
王様「……」
隊長が勢いよく部屋に入ってくる。
隊長「王、大変です!」
王様「どうした? 敵の援軍が来たのか? どのくらい来た? 一万か? 二万か?」
隊長「それが……」
王様「……(ゴクリ)」
隊長「壊滅状態です」
王様「……念のために聞くが、味方じゃないよな?」
隊長「はい。敵が、です」
王様「そうか……。一週間ももたんかったか。で、王子は……ロミオはどうしてる?」
隊長「不完全燃焼とのことで、部屋で落ち込まれております」
王様「……どこかの国から、援軍が出ている気配はないのか?」
隊長「……もう一つ、悪い知らせがあり……先ほど、敵国が降伏を申し出てきました」
王様「くそっ! あの大国でもダメか!」
隊長「数年はもつと思ったのですが……」
王様「他に戦争ができそうな国はあるか?」
隊長「……残念ながら。大陸のほとんどの国は同盟国となっております」
王様「むう……早く、何か手を考えねばな。このままでは国内の名のある者を襲いかねん。……で、ジュリエットの方はどうしてる?」
隊長「どうやら、ロミオ様と同じ状態とのことで……」
王様「いっそのこと、戦争でも仕掛けるか?」
隊長「……ロミオ様の為に王家を巻き込むわけにはいきません」
王様「うむ……。わかっておる、冗談だ」
隊長「ロミオ様……」
場面交換。
ジュリエット「ロミオ!」
ロミオ「ジュリエット!」
ジュリエット「はああああ!」
ロミオ「うおおおおおお!」
ロミオとジュリエットが斬り結ぶ。
激しい剣技が繰り広げられる。
隊長「ロミオ様、いけません!」
侍女「姫様、おやめください!」
ぴたりと止めるロミオとジュリエット。
ロミオ「冗談さ、なあ、ジュリエット」
ジュリエット「ええ、そうですわ。単なる挨拶です」
侍女「もし、姫様に何かあれば、私は……」
隊長「私もロミオ様に何かあれば、斬首刑にされます」
ロミオ「悪かった」
ジュリエット「申し訳ありません」
隊長「では、お二人のことを信じて、我々は席を外させていただきます」
侍女「私も」
ロミオ「二人とも……。感謝する」
場面転換。
浜辺。波の音が響いている。
ロミオ「昔はここで、よく二人で試合をしたな」
ジュリエット「ええ。あの頃はとても幸せでした」
ロミオ「ああ、俺もだ」
ジュリエット「何も考えず、全ての力をぶつけられる相手がいる、自分の全てを受け止めてくれる相手が目の前にいる、今思うと、幸せの絶頂でした」
ロミオ「……父上に、ジュリエットとの試合を禁止されてから5年か……」
ジュリエット「あれから、色々な戦場を回りましたが、ロミオに匹敵する者は皆無でしたわ」
ロミオ「少しでも気を抜けば、即死。そんな中で命を削りながら斬り結ぶ。背筋が寒くなるに比例して、全身の血が沸騰していく感覚……」
ジュリエット「止まった時の中にいるような、濃厚な時間。それでいて、何日も斬り結んでいるような感覚は、極限状態ではないと経験できませんわ」
ロミオ「ジュリエット……。君が隣にいるだけで、俺の血は沸騰するほど熱くなる」
ジュリエット「ロミオ……。あなたが隣にいるだけで、私の心臓は張り裂けそうになるほど高鳴っていきます」
ロミオ「互いの家が争っていれば……敵国同士であれば……」
ジュリエット「心置きなく、斬り結べますのに……」
ロミオ「どうして、同じ王家に生まれ落ちてしまったんだ」
ジュリエット「家の為に二人の想いは切り裂かれる。こんなに不幸なことはありませんわ」
ロミオ「おお……ジュリエット、どうして君はジュリエットなんだい?」
ジュリエット「ロミオ。どうしてあなたはロミオなの?」
隊長「うう……おいたわしや、ロミオ様。こうなったら、私が……」
場面転換。
部屋に勢いよく隊長が入ってくる。
隊長「ロミオ様! ジュリエット様が!」
ロミオ「……なんだと?」
場面転換。
侍女「うう……姫様、姫様」
勢いよく、ロミオが入ってくる。
ロミオ「ジュリエット! なっ! 嘘だろ? どうして……?」
侍女「どうやら、敵国によって毒を盛られたようで……」
ロミオ「嘘だ! ジュリエット……。嘘だと言ってくれ。俺を置いていかないでくれ。お前を倒すのは俺だって、信じていたのに……」
隊長「ロミオ様……」
そこに王様が入ってくる。
王様「ジュリエットが毒を盛られたというのは本当か!」
侍女「はい……。私が見つけた時には手遅れで」
王様「なんたることだ! すぐに犯人を見つけろ! ……ん? ロミオ、何をしておる?」
ロミオ「……ジュリエットがいない、この世界など、生きている意味はない」
王様「止めろ! 早まるでない!」
ロミオ「(毒を飲み押す)……うっ!」
王様「ロミオ! 医者だ! 医者を呼べ!」
隊長「……王様。手遅れでございます。ロミオ様の心臓は……止まっております」
王様「おお……なんたることだ。我が家が仲がいいばかりに……。我が家が仲違い、戦争をしていれば、こんなことには……。うおおお!」
場面転換。
夜。フクロウの鳴く声。
むくりと起き上がるロミオ。
そして、歩き始め、ドアを開いて部屋を出ていく。
場面転換。
海。波の音が響いている。
そこにロミオが歩いてくる。
ロミオ「ジュリエット、待たせたな」
ジュリエット「ロミオ」
剣を抜く二人。
ロミオ「これで心置きなく……」
ジュリエット「死合いができますわ!」
ロミオ「うおおおおおお!」
ジュリエット「はああああああ!」
二人が全力で切り結ぶ。
終わり