【声劇台本】クリスマスプレゼント

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■概要
人数:3人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、現代、シリアス

■キャスト
大和

みのり

■台本

大和(N)「世界で流行している感染症のせいで、俺の会社もテレワークとなった。家で仕事ができるのは羨ましいとよく言われるが、いいことばかりではない。たしかに、電車に乗らなくていいので、出勤時間が丸々浮く。だが、家は家で問題も出てくるのだ」

  大和のタイピングの音。

  ガチャっとドアが開き、みのりが入ってくる。

みのり「おとーさーん、これね……」

  慌てて唯も入ってくる。

唯「ちょっと、みのり! お父さん、仕事してるんだから、入っちゃダメって言ったでしょ!」

みのり「でも……」

唯「でも、じゃないの。ほら、あっち行ってなさい」

みのり「はーい……」

  みのりが部屋を出ていく。

唯「あなた……」

大和「唯。仕事中はみのりを部屋に入れるなって言ってるだろ!」

唯「ごめんなさい……」

大和「しっかり見てろよ! それくらいしかやることないんだから!」

唯「なによ、その言い方! 私だって一生懸命やってるじゃない!」

大和「一生懸命やってるだ? 嘘つけ! パートだって今、休みだろ?」

唯「仕方ないじゃない! この状況で、お店がお休みなんだから」

大和「だから、やることないんだから、みのりをちゃんと見てろって言ってんの!」

唯「家事だってやってるのよ! ずっと見てられるわけないじゃない!」

大和「仕事休みなんだから、家事もみのりの面倒見るくらい、できるだろ!」

唯「そんなこと言うなら、あなただって、通勤時間分、少しは家事を手伝ってくれてもいいじゃない!」

大和「お前なぁ。今、この家の収入は俺の給料だけなんだぞ? 少しは俺を労わろうと思わないのか?」

唯「いっつも、それ! 自分は働いてるから偉いつもり?」

大和「偉いだろ」

唯「はあ? 誰がいつも家事をやってると思ってるの?」

  ガチャっとドアが開く。

みのり「お父さん、お母さん……。また、喧嘩してるの?」

唯「あっちに行ってなさい!」

大和「おい! みのりに当たるなよ!」

唯「なによ! みのりのことばっかり!」

大和「お前、子供じゃないんだから……」

唯「もういい!」

  唯が部屋を出ていく。

みのり「……お父さん」

大和「みのりは心配しなくていいんだ。そうだ、ここで絵本読んでなさい。その代わり、静かにしてるんだぞ」

みのり「うん……」

大和(N)「前にニュースで見た。テレワークで家にいるせいで、夫婦仲がぎくしゃくして、離婚が増えているって。……そのときは、んなわけないと思っていたが、どうやら他人事ではないらしい」

  大和が部屋に入ってくる。

大和「唯……。さっきは……」

唯「……今は放っておいて」

大和「……わかった」

大和(N)「俺の家は貧乏だった。両親はいつも仕事で家を空け、何かあると兄弟で物を取り合っていた。末っ子だった俺は、いつも兄貴たちのお下がり。それが嫌だった。だから、家庭を持ち、子供ができたら、その子にはそんな思いはさせたくない。そう思って、俺は頑張ってきた。今はそれなりに生活に余裕がある。それなりに忙しい日々を送っていたが、このご時世でも、食べていくことには困らないでいられる。俺としてはこのくらいの幸せでいい。きっと家族だってそう思ってくれているはずだ」

大和「そういえば、もうすぐクリスマスか。みのりはプレゼント、何欲しい?」

みのり「うーん……。私、ほしいものはまえに、ひこぼしさまとおりひめさまにもらったからなぁ……」

大和「彦星と織姫? 七夕って何かしたっけ? ああ、お母さんに何か貰ったのか」

みのり「ううん、おねがいをかなえてもらったの」

大和「ふーん……。でも、せっかくプレゼントもらえるんだから、好きなもの言ってごらん」

みのり「うーん……。あ、じゃあ、ピザ!」

大和「ピザ? なんだ、ピザが食べたいのか? なら、今日、ピザを頼むか?」

みのり「ううん。ちがうの! プレゼントでピザがほしいの」

大和「……クリスマスに食べたいってことか? よくわからないけど、わかった。買っておくよ」

みのり「うん! ありがとう!」

大和(N)「みのりのことは大好きだ。もちろん、唯のことだって、愛している。……まあ、あっちは俺のことをどう思っているかはわからないが……。そういえば、ピザって……」

大和「そういえば、ピザ屋だったよな」

唯「なにが?」

大和「俺たちが出会った場所」

唯「そうだったっけ?」

大和「俺が店員で、お前の家に届けに行ったんだよ」

唯「……忘れた」

大和「まだ、怒ってるのか?」

唯「別に」

大和「クリスマス、今年は会社での行事がないから、家にいられるんだ」

唯「ふーん」

大和「だから、久しぶりに家でパーティしないか? ごちそう、作ってくれよ」

唯「……」

  場面転換。

大和「さてと、料理はあいつに任せて、俺は久しぶりにクリスマスツリーでも飾るか。って、物置に入るの、久しぶりだな」

  ガサガサと漁る大和。

大和「えーっと、クリスマスツリークリスマスツリーは、と。あ、あったあった。って、これ、笹じゃん。なんで、笹なんか家にあるんだ?」

  ガサガサと笹を漁る大和。

大和「あ、短冊。これ、七夕のか……。そういえば、庭に飾ってたっけ。みのりは何を書いたのかな……あっ」

大和(N)「そこには、みのりの拙い字で、こう書いてあった。『もっとおとうさんといっしょにいられますように』と。確かに俺は去年までは仕事が忙しくて、ほとんど家にいなかった。というより、みのりが寝てから帰って、みのりが幼稚園に行ってから起きてたから、ほとんどみのりと会ってはいなかった」

大和「あ、願いが叶ったって……。テレワークで俺がずっと家にいるから、か……」

  場面転換。

  料理をしている唯。

大和「唯、何か手伝うよ」

唯「どうしたの、急に? いいわよ、座って待ってて」

大和「ごめん、手伝わせてほしいんだ」

唯「……そう? じゃあ、じゃがいも剥いてくれる?」

大和「わかった」

  大和が冷蔵庫を開ける。

唯「なんか、久しぶり」

大和「なにが?」

唯「結婚したころは、こうやっていつも料理、一緒に作ってたなって」

大和「そうだっけ?」

唯「昔はお金がなくて、余りものでなんとか料理してたけど、あれはあれで楽しかったなぁ」

大和「思い出した。唯一の贅沢がピザだったもんな」

唯「そうだったね。記念日には必ずピザを頼んで、みのりと三人で食べてたわね」

大和「懐かしいな」

  場面転換。

  クラッカーが鳴り響く。

大和「メリークリスマス!」

唯「メリークリスマス!」

みのり「めりーくりすますー!」

  そのとき、チャイムが鳴る。

大和「お、来た来た」

唯「え? なに?」

大和「みのりへのクリスマスプレゼント」

  大和が部屋を出ていく。

唯「みのり、お父さんに何を頼んだの?」

みのり「えへへへ……」

  大和が戻ってくる。

大和「ほら、みのり、クリスマスプレゼントのピザだ」

みのり「ありがとー!」

唯「ええー。クリスマスプレゼントがピザ?」

大和「いや、だって、みのりがこれがいいって」

みのり「おとうさん、おかあさん、これ、みのりからのプレゼント!」

大和「え? このピザはみのりのプレゼントなんだから、みのりが食べていいんだぞ」

みのり「ううん。みのりがほしいプレゼントはね、おとうさんとおかあさんといっしょにピザをたべるじかんなの!」

大和「あ……」

唯「あ……」

大和(N)「今年のクリスマスは久しぶりに幸せな時間が過ごせた。……そして、娘からもらったクリスマスプレゼントは最高の思い出となったのだった」

終わり

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