【声劇台本】百鬼夜行

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉

〈声劇用の台本一覧へ〉

■概要
人数:5人
時間:10分程度

■ジャンル
ボイスドラマ、和風ファンタジー、コメディ

■キャスト
ぬらりひょん
座敷童
妖怪1
妖怪2
その他

■台本

ぬらりひょん「それでは、日本妖術会議を始める。司会はこの私、ぬらりひょんが勤めさせていただく」

座敷童「司会補佐の座敷童です」

ぬらりひょん「では、始めるぞ」

妖怪1「……」

ぬらりひょん「は、じ、め、る、ぞ!」

妖怪1「なあ、この会議、やる意味あるか?」

ぬらりひょん「なっ! 貴様! 毎年やっている神聖な会議を、やる意味あるか、だと!」

妖怪2「いや、だって、毎回、今年は何するかを話し合って終わりじゃん。実際、決まったことをやったことないっしょ」

ぬらりひょん「だからこそ、今年こそ、何か実行に移すために話し合おうと……」

妖怪1「それ、去年も言ってたぞ」

ぬらりひょん「ぐぬぬ」

座敷童「まあまあ。でも、そろそろ、私たち妖怪も何かアピールしていかないと、忘れられてしまいますよ」

妖怪1「うーん。この令和の時代に、妖怪を信じる奴なんているのか?」

座敷童「いえいえ。最近では、宇宙人を政府が認める動きがあるみたいですよ。宇宙人が認められるなら、我々だって……」

妖怪1「ええっ! 嘘くせー。ぜってーいねーって、宇宙人なんて」

妖怪2「宇宙人なんて、都市伝説だよ、都市伝説」

座敷童「確かに、私も宇宙人はいないと思います。ですが、いるかいないかわからない宇宙人を信じてるんですよ? それなら、実際に存在する私たち妖怪を信じてもらえることの方が簡単だと思いませんか?」

妖怪1「うーん……そういわれてもなあ」

ぬらりひょん「おいおい、そんな弱腰でどうする! やるだけやってみようって気概はないのか!」

妖怪1「じゃあ、なにやる? また、写真映り込みキャンペーンでもやるか?」

妖怪2「けどさ、それ、最近ハードル高くね?」

妖怪1「わかる! 最近、人間たちが持ってるカメラ、変じゃね? なんか、薄い四角いやつで撮るんだよな?」

妖怪1「そうそう! 俺もこの前さー、近くで四角い奴出したからさ、いっちょ写ってやろうかって準備したのに、耳に当てて何か念仏みたいに話し出しやがってさー。こっちは気合い入れて待ってたのに、30分もなんもなし。結局、そのまま四角い奴をポケットに入れて帰りやがったんだよ」

座敷童「たぶん、それ、スマホですね。電話らしですよ」

妖怪1「あれ、電話なのか……。けどさ、電話かカメラかを見分けるの、俺らじゃ難しくね?」

ぬらりひょん「ぬぬぬ。たとえ電話だろうと、いつでも撮られてもいいように準備しておけばいいではないか!」

妖怪2「えー。そんなのダリィし」

座敷童「たしかに、非効率ですよね。それに最近では、せっかく写真に写り込んでも、テレビなどで紹介されなくなったんですよね」

ぬらりひょん「な、なんだと! そうなのか?」

座敷童「最近では、そういうホラー的な番組は極端に少なくなってますね。後は、せっかく写り込んでも、加工だとか、偽物だとかで信じてもらえることが少ないんですよ」

妖怪1「じゃあ、意味ねーじゃん」

妖怪2「ならさ、姿見せて、直で人間脅すとか?」

妖怪1「それやって、大騒ぎになって、清明みたいなの来たら、ヤバくね?」

座敷童「そうですね。あまり派手なことはお勧めできません。何があるかわかりませんから」

妖怪1「人を脅すっていえばさー、最近、あの……ゆーなんちゃらって奴ら、うざくね?」

妖怪2「あー、わかる! いきなり夜、家に来る奴らだろ? こっち寝てんのにさー、急に来るから超ビビるっての! マジで止めてほしいよな!」

妖怪1「でさ、俺の知り合いが、イラっとしてそいつら脅しつけたんだよ」

妖怪2「おお! それでそれで?」

妖怪1「次の日から、もっと人が来るようになってさー。あんまり多く来るようになったから、その廃墟、撤去されちゃったらしいぞ」

妖怪2「……マジか」

妖怪1「そいつさ、責任感じちゃって、自分で成仏しちゃったよ」

妖怪2「確かに、今は、そういう住みやすい場所って少ないからな」

ぬらりひょん「おいおい。話が逸れてるぞ」

妖怪1「けどさ、じゃあ、何やろうって話だよな」

ぬらりひょん「ぐぬぬぬ。……座敷童よ、何かいい案はないか?」

座敷童「たしかに、人間たちへのアピールも大事だと思うんですが、まずは私たちの結束力を高めるというのはどうでしょうか?」

ぬらりひょん「……ふむ。なるほど」

妖怪1「今はみんなバラバラで住んでるもんな」

妖怪2「俺も、妖怪見るのって、この会議のときくらいだよ」

ぬらりひょん「しかしだな。結束力を強くするといっても、何をするのだ?」

座敷童「そのことなのですが……百鬼夜行をやりましょう」

妖怪1「え!?」

ぬらりひょん「ひゃ、百鬼夜行だと……? もう百年以上やってないぞ」

座敷童「ですから、その効果は絶大かと思います」

ぬらりひょん「確かに、それはそうだが……どこでやるのだ? 人がいない山奥か? そうなると妖怪たちを集めるが大変だし、あまり意味がないのではないのか? 百鬼夜行は人間たちに見られてこそだからな」

座敷童「渋谷でやります」

ぬらりひょん「なっ!」

妖怪1「マジで!」

妖怪2「いやいやいや、無理っしょ」

座敷童「秘策があります。もうすぐ行われる、ハロウィンを使います」

ぬらりひょん「はろういん?」

妖怪1「なんだ、そりゃ?」

座敷童「これは海外の儀式なのですが、人間が妖怪の格好して街中を歩くというものです。つまり、海外版、百鬼夜行です」

ぬらりひょん「ほう、そんな儀式があるのか」

座敷童「その儀式が日本でも広まったらしく、特に渋谷で盛大に行われるとのことです」

ぬらりひょん「つまり、それに我々が混じるということだな?」

座敷童「はい。これであれば、我々が妖怪だとバレずに人間たちに見てもらえる。つまり本来の百鬼夜行の目的である、人間たちへの無意識の意識を植え付けるのにうってつけです」

妖怪1「なるほどな。けど、みんな、面倒くさがりだから、集まらないんじゃないか?」

座敷童「そこも問題ありません。参加者にはおやつがもらえます」

妖怪2「はあ? なんだよ、それ! そんな都合のいいことあるわけねーだろ! そんなに簡単にもらえるなら、お供え物に手を付けたりしねーっつーの!」

座敷童「そういう儀式なんです。妖怪に扮装した者におやつを渡す、というところまでが儀式というわけです」

妖怪1「……なんて素敵な儀式なんだ。海外の妖怪はすげーこと考えたな」

座敷童「おやつがもらえると言えば、みんな参加してくれるはずです」

ぬらりひょん「よし、やろう」

  がやがやと妖怪たちが集まっている。

座敷童「いいですか? 海外の妖怪の格好をしてください。どんな格好がわからない方は、とりあえず、頭にカボチャを乗せておいてください」

妖怪1「こら、そこ! 仮装は、グロは禁止だと言っただろ!」

妖怪3「まだ、仮装してねーよ!」

座敷童「……思ったより、たくさん集まりましたね」

ぬらりひょん「うむ。はやり、皆、こういう機会を待っていたのだろうな。これをきっかけに、我々の結束力を高めていこう」

座敷童「はい!」

ぬらりひょん「よし、皆の者、準備はいいな、参るぞ!」

みんな「おー!」

  妖怪たちがざわざわしている。

ぬらりひょん「これは……どういうことだ?」

座敷童「……どういうことでしょう?」

妖怪1「全然、人間、いねーぞ」

  そこに警察官が走ってくる。

警察官「ちょっと、君たち、何してるの!」

ぬらりひょん「百鬼夜行……いや、はろういんを……」

警察官「ダメダメ、帰って帰って!」

妖怪1「なんでだよ! 日本の妖怪は参加できねーってのか?」

警察官「何を言っているんだね、君は?」

座敷童「あの、どうして、我々は参加できないんですか?」

警察官「ハロウィンは昨日だよ」

全員「……え?」

終わり

〈前の10枚シナリオへ〉  〈次の10枚シナリオへ〉