■ジャンル
ドラマ・漫画原作、学園
■キャスト
翔真(しょうま)
瑛翔(えいと)
その他
■シナリオ
〇バスケ会場
バスケの試合。
瑛翔がドリブルでコートを翔る。
敵チーム監督「囲め! 抜かせるな!」
敵チームが瑛翔を3人で囲む。
瑛翔「くっ」
瑛翔が立ち止まる。
そこに翔真が走り込んでくる。
翔真「瑛翔、パス!」
瑛翔「翔真!」
瑛翔が翔真にパスして、翔真がボールを受け取りそのままダンクをする。
会場が一気に沸く。
敵チーム監督「タイムアウト!」
〇同
かなり疲労している敵チーム。
敵チーム監督「何をやってる!」
敵チーム1「止まんないっすよ、あいつら」
敵チーム2「くそ、ソアーズか……」
〇同
瑛翔がスコアボードを見る。
6対23で勝っている。
瑛翔「よし、このまま引き離すぞ」
翔真がスクイズボトルを手に取り、飲もうとするが空。
翔真「なあ、瑛翔。飲み物分けてくれ」
瑛翔「……お前、相変わらずそういうところはズボラだな。ほら」
カバンの中からスクイズボトルを取り出して、翔真に放る。
翔真「サンキュー」
〇道路
翔真と瑛翔が並んで歩いている。
翔真「快勝、快勝!」
瑛翔「練習試合であんまり調子に乗るなよ。本番は5月からなんだからな」
翔真「大丈夫だって。お前と一緒なら、連覇間違い無しだって」
瑛翔「頼むから、体調管理だけはしっかりしてくれよ? 去年は食当たりで、予選は俺一人がチーム引っ張る羽目になったんだから」
翔真「あー、わかってるって。体調さえ万全なら、俺たちソアーズは最強だぜ」
瑛翔「瑛翔と翔真の、翔が二つで、ソアーズか。よく考えるな」
翔真「え? そういう意味だったの?」
瑛翔「……お前、知らなかったのかよ」
翔真「ん?」
歩いていると、広場のバスケコートを見つける。
翔真「瑛翔、1オン1やってかね? 試合だけだと物足りなくってさ」
瑛翔「はあ? 体調管理の話をしたばっかだろ。休憩するのもだぞ」
翔真「まあまあ。ちょっと、だけ。な?」
瑛翔「しょうがねえな」
〇広場のバスケコート
翔真と瑛翔がバスケをしている。
一進一退の攻防。
翔真「やっぱ、お前とやるのが一番楽しいな」
瑛翔「ふんっ!」
瑛翔が抜こうとする。
翔真「やらせるか!」
翔真が阻止しようとして、バランスを崩す。
瑛翔「なっ!」
翔真と瑛翔がもつれ込み、転倒する。
瑛翔が倒れるときに膝を地面に強打する。
翔真「いって……」
瑛翔「うっ!」
膝を抱え蹲る瑛翔。
翔真「瑛翔? 瑛翔!」
〇学校・教室
呆然としている翔真。
バスケ部員「おい、翔真。そろそろ練習始まるぞ」
翔真「あ、ああ……。すまん。今日は……休むわ」
バスケ部員「明日は決勝だぞ。瑛翔がいないんだ。お前がその分、チームを引っ張ってくれないと……」
翔真「……」
バスケ部員「気持ちはわかるけどさ……」
翔真「悪い……。必ず行くから、先に行っててくれ」
バスケ部員「……待ってるぞ」
バスケ部員が教室を出ていく。
翔真「……」
〇同・廊下
廊下を歩く翔真。
笑い声が聞こえたほうに目をやると、教室で他の生徒と話して笑っている瑛翔が見える。
瑛翔「でさ、やっぱりこのシーンが最高だと思うんだよな」
男子生徒「あのシーンに繋がる前の、このシーンがいいんだよなー」
教室のドアを開ける翔真。
瑛翔「ん?」
翔真「あ、あのさ、瑛翔……」
瑛翔「(顔をしかめて)なんのようだよ?」
翔真「……」
瑛翔「お前の顔はもう見たくない。消えろ」
男子生徒「お、おい、瑛翔……」
翔真「明日、予選の決勝なんだよ」
瑛翔「知ってるよ。で?」
翔真「俺、頑張るからさ。見に来てくれないか?」
瑛翔「もうバスケができない俺に対しての嫌味か?」
翔真「ち、違う!」
瑛翔「今は漫研で楽しくやってるんだ。バスケのことは忘れたいんだ」
翔真「け、けどさ……」
瑛翔「お前のことは一生、許さない。恨み続けるからな」
顔をそむける瑛翔。
翔真「……」
うつむく翔真。
〇バスケコート
一人で猛練習している翔真。
ダンクを決める。
翔真「はあ……はあ……はあ」
バスケ部員「翔真。さっきはああ言ったけどさ、あんまり無理はするなよ?」
翔真「俺さ、正直、バスケ辞めようか迷ったんだよ」
バスケ部員「……」
翔真「けどさ、あいつのバスケ人生を終わらせた責任から逃げちゃダメだって思う。だから、あいつの分まで……ちゃんと連覇しないとダメなんだ」
再び、ドリブルを始める翔真。
翔真のバスケットシューズはボロボロになっている。
バスケ部員「……」
〇バスケコート
バスケの試合。
24対12で負けている。
翔真「くっ!」
ドリブルする翔真だが、敵チームに囲まれて阻まれる。
翔真「くそっ!」
強引に抜こうとしてぶつかると、笛が鳴る。
審判「ファール!」
翔真「はあ……はあ……くそ……」
〇同
敵チームの相手と対峙する翔真。
相手が抜こうとして止めようとするが、翔真の靴が破れ、転倒する翔真。
笛が鳴る。
〇同
ベンチに座る翔真が破れた靴を見ている。
バスケ部員「お、おい。何してるんだよ? 早く履き替えて、試合に戻ってくれよ」
翔真「……替えの靴がない」
バスケ部員「は?」
翔真「この試合は俺抜きでやってくれ」
バスケ部員「何言ってるんだよ……」
審判「早く戻って!」
バスケ部員「あ、はい……」
バスケ部員がコートに戻っていく。
翔真「……もういいや。疲れた」
すると目の前にシューズが現れる。
慌てて顔をあげると、そこにはシューズを持った瑛翔の姿。
瑛翔「お前なぁ……。相変わらず、ズボラすぎるだろ」
翔真「瑛翔……? なんで?」
瑛翔「見に来いって言ったの、お前だろ?」
翔真「け、けど。俺の顔は見たくないって……俺を許さないって言ってただろ?」
瑛翔「あー、あれな。いや、実際、どうしようか迷ったんだよ。ほら、漫画とかだとさ、ああいうときに、やられた方が、笑って許したりするだろ? そしたら主人公が、つらそうな顔して、いっそ恨んでくれた方が楽なのにっていうシーンあるだろ?」
翔真「……」
瑛翔「だから、そうした方がいいかなって」
翔真「ふざけんなー! 恨まれて楽とか意味わかんねーよ! めっちゃ凹んだっての!」
瑛翔「あ、そうなの?」
翔真「俺としては、お前に俺の夢を託すみたいな感じの方がよかった……」
瑛翔「じゃあ、それで」
翔真「軽い!」
瑛翔「まあまあ。細かいことはいいだろ。それより、ほら早く履き替えろって」
翔真「……」
シューズを受け取り、履き替える翔真。
翔真「……瑛翔。本当にごめん」
瑛翔「ん? ああ。いや、別にいいよ。プロにはなれないだろうと思ってたし。これからの地獄の練習から解放されたって考えれば逆によかったかな」
翔真「けどよ……」
瑛翔「あのな。たしかに俺はバスケに学生生活をかけたけど、人生までかけた覚えはない」
翔真「……?」
瑛翔「プロにならないなら、バスケやるのもあと5年ってところだろ。で、残りの人生を考えたら40年くらいあるんだぞ? そう考えれば、引退が早くなるなんて、そこまで重いもんじゃねーだろ」
翔真「……そういうもんか?」
瑛翔「ま、お前がバスケの地獄の特訓している間に、漫画家になって、将来はお前よりも稼いでやるさ。そうすれば俺は勝ち組だ」
翔真「漫画の世界もかなり大変だと思うぞ」
瑛翔「わかってる。まあ、早めに新しい道を進めるんだ。そこまでお前を恨んでないさ」
翔真「そこまで、かよ」
瑛翔「そう言っとけば、お前は途中でバスケを辞めないだろうし、諦めたいしないだろ?」
翔真「……まあ、そうだな」
瑛翔「とにかく、まずはこの試合に勝て」
翔真「任せとけ」
靴ひもをギュッと縛り、立ち上がる翔真。
〇同
ドリブルで敵を抜き、豪快にダンクを決める翔真。
それを見て、笑みを浮かべる瑛翔。
終わり。