【声劇台本】西田家の受難 ご馳走
- 2020.12.12
- ボイスドラマ(10分)
◆シリーズ一覧
<シュークリーム事件> <西田怪談> <留年未遂事件>
<幼馴染の謎の行動> <アウトドアの恐怖>
■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、日常系、コメディ
■キャスト
西田 正志(17) 長男
西田 清 (17) 二男・正志の双子の弟
西田 総士(14) 三男
西田 隆 (5) 末っ子
■台本
正志が商店街をダラダラと歩いている。
風が吹く。
正志「うお、寒っ! 早く帰ろ……」
店員「あ、君、もう福引は引いたかい?」
正志「福引?」
店員「お使いでしょ? それだけ買ったなら福引券もらわなかった?」
正志「……ああ、この券のこと?」
店員「そうそう。三枚あるから、三回引けるよ」
正志「うーん。俺、こういうの絶対当たらないんだよなぁ」
店員「まあまあ、どうせタダで引けるんだしさ」
正志「そうだな。じゃあ」
ガラガラと回して、コロン玉が出る。
店員「大当たり―!」
正志「ま、マジか……」
場面転換。
ドアが開いて、総士が入ってくる。
総士「ただいまー……って、お?」
場面転換。
居間。
ジューっとお好み焼きが焼ける音。
隆「おいしー!」
正志「そうか、そうか、ドンドン食べろよ」
隆「うん!」
清「……」
居間のドアが開き、総士が入ってくる。
総士「おー、お好み焼きじゃん!」
正志「お帰り、総士。お前もお好み焼き食べるだろ? 焼くぞ?」
総士「もちろん! 大き目で頼む」
正志「了解―」
総士「にしても、兄貴、どういう風の吹き回しだ?」
正志「何が?」
総士「いや、兄貴がこんなことするなんてさ。いっつもだったら、兄貴権限だ、お前ら作れっていうじゃん」
正志「ま、たまにはな」
総士「ふーん。って、あれ? きよ兄ぃは食わねえの?」
清「ああ。正兄ぃがなにか企んでるのは火を見るより明らかだからね。怖くて食べれないよ」
正志「だーかーら、何も企んでねーっての」
隆「ふー、もうお腹いっぱいー」
正志「なんだ、隆、もうギブアップか? 食後のお菓子もあるんだぞ?」
隆「え? ホント?」
清「隆、お菓子は晩御飯の後にしなさい」
隆「えー」
清「お菓子食べて、晩御飯食べれないなんて言ったら、お母さんに怒られちゃうぞ」
隆「……うう、わかった」
正志「よし、総士、焼けたぞ!」
総士「待ってました! いっただきまーす!」
場面転換。
総士「ふー、食った食った」
正志「総士もお菓子は後にするか?」
総士「ああ。さすがにもう食えねえ」
正志「で? 清は本当にいいのか? 食べなくて」
清「ああ。さっきも言ったけど、正兄ぃの企みがわからない限り、食べる気はしないよ」
正志「だから、なんでもねーって。お好み焼きがダメなら、お菓子はどうだ? 結構、たくさん買ってきてるんだぜ?」
清「……ますます怪しい。正兄ぃがお菓子を人に勧めるなんて……」
総士「うーん。きよ兄ぃ、考え過ぎじゃね?」
正志「そうだぞ。だから、ほら、お菓子食べろって」
清「いや、いらない」
正志「……ふっふっふ。清、これを見ても、同じことを言えるかな!」
ガサガサとカバンからあるものを出す。
正志「じゃーん!」
清「なっ! それは……和弘の桜餅……」
正志「お前の大好物の和菓子だ。しかも、これ、年末限定の特別品らしいぞ」
清「……食べてから、2倍の金を要求とかするんじゃないの?」
正志「しないしない。これは俺からの奢りって言ってるだろ?」
清「これを食べたら、無条件で正兄ぃのいうことを聞けとか?」
正志「ないない」
清「本当に、食べたからってなにもないんだよね?」
正志「ああ。ここにいる総士と隆が証人だ」
清「……じゃあ、もらう」
正志「ああ、はい、どうぞ」
場面転換。
清「ふう……とても満足だ」
隆「ねえ、そういえば、正志お兄ちゃんは食べないの?」
総士「え?」
清「あっ!」
正志「ふふふ。お前ら、気づくのが遅かったな。もう、何も食べられまい」
総士「なに……企んでるんだよ?」
正志「じゃじゃーん! これだ!」
清「それって……焼き肉店の無料券?」
正志「ああ、しかも食べ放題だぜ、食べ放題」
総士「うう……。いつもだったら、兄貴を倒してでも奪い取るのに、腹いっぱいでそんな気がおきない……」
正志「そうだろう、そうだろう」
清「どうしたの、その無料券?」
正志「福引で当たったのだ! お使いにいったご褒美ってところだよな」
清「なるほど。つまり、福引で焼き肉の無料券が当たったけど、一枚しかないから、他の兄弟たちの腹を膨れさせ、食べる気を失せさせてから、自分だけ食べにいくってわけだね?」
正志「うむ。実にわかりやすい説明をありがとう。そういうことだ」
総士「……ふーん」
清「……」
正志「どうした? もっと悔しがっていいんだぞ? この、兄の巧妙な罠に引っかかったことに悔しさでむせび泣くがいい」
清「正兄ぃ。今回のお好み焼きの材料やお菓子、桜餅、合わせていくらかかったの?」
正志「……え? えっと……3千円くらいかな」
清「この焼き肉屋の食べ放題、1500円だよ」
正志「……へ?」
総士「なあ、兄貴。その券、福引で当たったんだよな?」
正志「お、おう……」
総士「俺たちには当たったって言わないで、黙って一人で行けばよかったんじゃないの?」
正志「……し、しまったーーー!」
終わり。
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