■関連シナリオ
<闇の眷属>
■概要
人数:2人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、学園、コメディ
■キャスト
田中 透真(たなか とうま)
八神 華憐(やがみ かれん)
■台本
透真「くくくく。我が邪眼の能力をもって挑めば、この程度の結果は当然だ」
華憐「ふむ。透真よ。なかなかやるではないか。偉い偉い」
透真「えへへへ。そう? でも、華憐さんが勉強見てくれたおかげだよ。テストで80点なんて初めてだ!」
華憐「いつもは赤点ギリギリじゃったからな。とはいえ、これは透真の努力の結果じゃよ。胸を張って誇るがよい」
透真「うん! ありがと!」
華憐「それにしても、透真は、ついに邪眼までも発現してしまったか。増々、闇の力が高まってしまうな」
透真「うむ! 今は強大な意思の力で抑えこんでいるが、気を抜くとこの学校を……いや、この周辺ごと灰にしてしまう」
華憐「それはマズイな……。早急に何とかせねば。透真よ、ちょっとこっちに来るのじゃ」
透真「なに?」
華憐「少し、目を見せてもらうぞ。……邪眼に目覚めたのはどちらの目じゃ?」
透真「えーっと、左……いや、右目にしておくよ」
華憐「右目か……。なかな厄介じゃのう」
透真「そうなの?」
華憐「ああ。左目であれば、純粋に力を高めるという作用になるのじゃが、右目となると様々な能力に目覚める可能性が高いんじゃよ」
透真「へー。そうなんだ」
華憐「あとは何段階、覚醒しているかじゃが……。ふむふむ」
透真「な、なんか、ジッと見つめられるのって照れるね」
華憐「阿呆。この地域の安全がかかっておるのだぞ。そんなことを言ってる場合ではあるまい」
透真「う、うん……そうだね」
華憐「うむ……。今はまだ完全に休止状態のようじゃな。わずかな力も感じん」
透真「あー、うん。……そうだろうね」
華憐「難しいな。現段階では、どのような作用を持つ目なのかがわからん。対抗策を講じるのが難しそうじゃな」
透真「あ、あんまり、無理しなくていいからね」
華憐「そうはいかんじゃろ。何しろ、透真の命もかかってるのじゃからな。力が暴走して、宿主自体も消滅させる、なんてことになれば洒落にもならん」
透真「いや、それは……大丈夫だと思うけど……」
華憐「透真の欠点は自分の力を過信し過ぎるところじゃ。一瞬の油断で取り返しのつかないことになることもあるんじゃぞ」
透真「……ごめん」
華憐「まあ、よい。儂が、明日までには何とかしよう。それまでは耐えてくれ」
透真「うん。分かった」
場面転換。
放課後の小さな教室内。
遠くから部活の声や音などが小さく聞こえる。
ガラガラとドアを開けて、部屋に入って来る透真。
透真「ふはははは。今日も、世界侵略の大きな一歩を踏み出すぞ!」
華憐「おお、来たか、透真。ほれ」
華憐が透真に布を放る。
透真「え? なに? ……あ、眼帯だ! 格好いい!」
華憐「眼帯の裏側に特殊な魔術式を組み込んである。これがあれば、そうそう邪眼が暴走することもあるまい」
透真「へー! 華憐さん、ありがとう!」
華憐「気にするな。当然のことをしたまでじゃよ」
透真「ねえ、付けてみていい?」
華憐「ああ」
透真「よっと……」
透真が眼帯を装着する。
透真「どう? 似合ってる?」
華憐「うむ。なかなか格好いいぞ」
透真「えへへ。照れるなぁ」
華憐「それでは、使い方を教えるぞ。よく聞くのじゃ」
透真「使い方?」
華憐「そうじゃ。眼帯に仕込んである、魔術式じゃが、それは邪眼が暴走しそうなときにのみ、発動させるんじゃぞ」
透真「邪眼が暴走しそうなとき……」
華憐「その邪眼の能力は未知数じゃ。何が起こるかわからん。じゃから、少しでも危険を感じたら、魔術式を発動させるんじゃ」
透真「発動させたら、どうなるの?」
華憐「透真以外の世界の時間を凍結させる。もちろん、邪眼の力さえもな。その間に透真は邪眼を抑え込む力を貯め込むのじゃ」
透真「ふーん。……え? ちょっと、待って。それって、時間を止められるってこと?」
華憐「そうじゃが?」
透真「凄い! それって、最強の能力だよ! ねえ、どうやって使うの?」
華憐「咄嗟に使えるように、解放方法は簡単にしておいた。眼帯に触れて、強く念じるのじゃ。止まれ、とな」
透真「それだけなんだ?」
華憐「言っておくが、かなり強力で危険な術式じゃから、無暗に……」
透真「止まれ!」
音がピタリと止み、時間が止まる。
透真「あれ? 凄く静かになった」
華憐「……」
透真「華憐さん? ……すごい! ホントに止まってる! ふははははは! 我は最強の能力を手に入れたぞ! 時間を止める! 我が能力に相応しい! そうだろう!? 華憐よ!」
華憐「……」
透真「あ、止まってるから、返事できないのか。……どうやったら元に戻るんだろ? 眼帯に触って……戻れ……とか?」
再び時が動き出す。
華憐「使うでないぞ」
透真「あ、戻った」
華憐「ん?」
透真「華憐さん、ありがと! 最高のプレゼントだよ」
華憐「う、うむ……。喜んでくれてなによりじゃ」
場面転換。
廊下を歩く透真。
透真「うわー、凄いな。本当に時間が止まるなんて。何に使おうかなー。……うーん。ホントに何に使おう……」
場面転換。
教室内。テスト中。
カリカリと紙に解答を書き込んでいく音が響く。
透真「(小声で)うわー。この問題の解き方、教えてもらったはずなんだけどなー。なんだっけなー。あ、そうだ!」
眼帯に触れる透真。
透真「止まれ!」
時間が止まり、音も消えて静まる。
透真「よし、時間を止めて、教科書を……」
回想。
華憐「これは透真の努力の結果じゃよ。胸を張って誇るがよい」
回想終わり。
透真「……。やっぱり、自力で解こうっと」
場面転換。
街中を歩く透真。
透真「時間を止める能力って、バトルものだと最強だけど、日常生活だと使う場面、ないよなー」
グーっとお腹が鳴る。
透真「お腹減ったなぁ。でもお金無いし。あ、そうだ。時間を止めれば、盗み放題……って、そんなことをするために用意してくれたわけじゃないんだから。……そんなことしたら、華憐さんに悪いよね」
場面転換。
ガラガラとドアを開けて、部屋に入って来る透真。
透真「お疲れ様……」
華憐「おお、来たか、透真よ。……ん? どうした? 元気がないようじゃが」
透真「眼帯、返すよ」
華憐「なぜじゃ?」
透真「これを持ってたら、僕、ダメな人間になっちゃいそうだからさ」
華憐「じゃが、邪眼はどうするんじゃ?」
透真「ふははははは! この透真様を舐めるなよ! そんなものがなくとも、邪眼の力ごとき制御してみせるわ!」
華憐「そうか……。うむ。そうじゃな。透真の力を信じよう。……余計なことをしてしまって、済まなかったな」
透真「ううん。僕のために凄い眼帯作ってくれて、嬉しかったよ。ありがとう」
華憐「ふむ。まあ、透真とは一蓮托生じゃ。当然のことをしたまでじゃよ。……じゃが、眼帯を受け取らないんじゃから、力の暴走は許さぬぞ」
透真「うん! 任せておいて!」
華憐「うむ、良い返事じゃ。最近は自信がついてきたようじゃの」
透真「えへへへ。華憐さんのおかげだよ。これからもよろしくね」
華憐「ああ。こちらこそ、な」
終わり。