■概要
人数:4人
時間:10分
■ジャンル
ボイスドラマ、現代、コメディ
■キャスト
唯(ゆい)
光冴(こうが)
斗真(とうま)
菜緒(なお)
■台本
唯(N)「私には、小さい頃からずっと好きな人がいる。イケメンで優しくて、頭が良くてスポーツ万能のパーフェクト超人。そして何より、幼馴染! このアドバンテージはホントデカい! だってさー、考えてみ? 普通だったら、こんなイケメンとお近づきになるのでさえ大変なんだよ? それが近くに住んでたってだけで、顔見知りなんだよ? いやー、これもう人生勝ち組でしょ。……え? 告白したのかって? いやいやムリムリ。もし、告白してフラれでもしたらねー。もう立ち直れませんわ。ってことで、今は近くでこのイケメンを眺められる幸せを噛みしめながら、日々生活してるって感じ」
学校の廊下を歩く、唯と奈緒。
菜緒「ホント、唯の描くイケメン男子はそそられるよねー。こりゃ、今度のコミケはいただきだね」
唯「ふっふっふ。近くでいくらでもイケメンを眺められますからねぇ。それ見て描けば余裕ですわ」
菜緒「うわー。幸運に頼った、舐め腐った発言だね。そのうち、斗真くんに彼女できちゃうよ」
唯「大丈夫だって。女の影が迫ったら、嘘情報流して、破局させるから」
菜緒「あんたはホント、そこそこ可愛いのに内面がクズだよね」
唯「そこそこ言うな」
菜緒「突っ込むとこ、そこ?」
そのとき、女生徒の黄色い歓声が沸き起こる。
菜緒「ん? 噂の斗真くんでも現れたのかな?」
光冴「はっはっは。ありがとう、嬉しいよ。だけど、僕はみんなのものだからね。特定の誰かと付き合うわけはいかないのさ」
唯「……全然違うじゃん。斗真とあんなボンボンを一緒にしないでよ」
菜緒「あんた、ホント斗真くん以外の男子には厳しいわね」
唯「んなことないって。単に生まれが良いっていう運だけ野郎が嫌いなだけ。努力もしないクズはいつか人生から転げ落ちるのが落ちだよ」
菜緒「あんたが、それを言うか……」
光冴「……」
光冴がツカツカと歩み寄ってくる。
菜緒「あれ? 光冴くん、こっちに来るよ。今の聞かれたんじゃない?」
唯「うっそ。ヤバっ! これは聞き違いだって誤魔化すしかない。もし、それでも文句言ってきたら、大声出そう」
菜緒「あんた、ホント、内面クズだよね」
光冴「聞き間違いかな? さっきのことは僕のことを言っていたんだよね?」
唯「聞き間違いです。それでは、失礼」
光冴「うーん。僕が生まれのいいだけの、何の努力をしてないって誤解してるようだけど」
唯「あはは。誤解って。ホントのことでしょ」
菜緒「ちょっと、唯!」
唯「……ん? あー! しまった! つい本音を言っちゃった!」
菜緒「……バカ」
光冴「はっはっは。いいね。僕にここまではっきりものをいう人は初めてだ」
唯「な、なんのことでしょう? きっと聞き間違いだと思いますが……」
菜緒「いや、もう遅いって」
光冴「ふむ。別に僕のことを悪く言うことに関しては構わないんだけど、勘違いされたまま、というのは面白くないかな」
唯「いやいや。十分面白いですよ」
菜緒「なんのフォローにも、なってないって気づいてる?」
光冴「よし、じゃあ、こうしよう。今度の休みの日に、僕とデートをしてくれないか? そこで、君にかかった誤解を解いてみせるよ」
唯「いやあ……結構です。ホントに」
光冴「ん? 僕の誘いを断るのかい?」
唯「あ、ごめんなさい。曖昧な答え方しちゃいましたね。言い直します。嫌です。行きません」
菜緒「……あんた、凄いわ」
光冴「あはははははは。君、面白いね。こんな子は初めてだ。気に入ったよ」
唯「そ、そうですか……。(小声で)ねえ、菜緒。私、変なこと言った?」
菜緒「(小声で)変なことしか言ってない」
光冴「よし! デートなんて遠回りなことは止めて、付き合ってしまおう」
唯「……は?」
光冴「君は僕の彼女になるんだ。どうだい? 光栄だろう?」
唯「いや、全く……」
光冴「それじゃ、まずは携帯の番号を教えてくれないか? 会えないときは電話する」
唯「……人の話聞けよ」
斗真「おい、何してるんだ?」
唯「あ、斗真!」
斗真「唯から離れろ。嫌がってるだろ」
光冴「なんだい君は? 僕が自分の彼女に触れるのは当然のことだ。放っておいてくれ」
斗真「彼女だと?」
唯「いや、彼女じゃねーし」
光冴「さっき、付き合ったばかりなんだ。だから、他人の君が口を出すことじゃない」
斗真「他人だと?」
唯「あの、斗真も相手にしちゃダメだって。この人、サイコパスなんだから」
斗真「他人なんかじゃない!」
光冴「へえ、じゃあ、どういう関係だい?」
唯「あれ? 微妙に私、無視されてる?」
斗真「唯は、俺の女だ!」
唯「うおーーー! 棚からぼた餅! マジで? まさかの、幼馴染ルートフラグ立っちゃった感じ?」
光冴「待て。この子が君の女だって? 勝手なことを言わないでもらいたいな」
唯「いや、お前が言うな」
光冴「一つ、提案がある。勝負して勝った方がこの子と付き合う。どうだい?」
唯「いやいやいやいや! ずっと断ってるんだけど?」
斗真「わかった。いいだろう。受けて立つ」
唯「ええええ! 受けちゃったよ!」
光冴「よし、それじゃ、屋上へ行こう。ここじゃ目立つからね」
斗真「わかった」
斗真と光冴が行ってしまう。
唯「ねえ、菜緒。これって、私が誰と付き合うって話だよね? なんで、私の意思が無視されてるんだろ?」
菜緒「あ、もうこんな時間。ホームルーム始まっちゃう」
菜緒が行ってしまう。
唯「薄情者!」
場面転換。
屋上。
光冴「どちらが勝っても恨みっこなしだよ」
斗真「ああ」
光冴「はああ!」
斗真「うおおお!」
二人が殴り合いを始める。
唯「なんだろ? 自分を取り合って、二人のイケメンが喧嘩をしてるっていうのは萌える展開なんだけど……。いざ、当事者になってみると、引くなー」
光冴「はあ!」
斗真「はああ!」
二人の拳が交差し、二人とも倒れる。
唯「え? 二人とも倒れちゃった……。この場合、どうなるの?」
光冴「ふふふふ。やるね。負けたよ」
斗真「いや、引き分けだ。決着はまたの機会にしよう」
光冴「ああ」
二人が立ち上がる。
光冴「いい勝負だったよ。人にここまで殴られたのは初めてだ」
斗真「俺もさ。……てっきり、ただの金持ちのボンボンって思ってんだけどな」
光冴「はは。よくそう思われるよ」
斗真「すまんな。誤解してたみたいだ」
光冴「いや、誤解が解けたならいいさ」
斗真「ふふ。お前、面白い奴だな。気に入ったぜ」
光冴「ははは。奇遇だね。僕もさ」
斗真「……なあ、今度の休み、一緒にどこか出かけないか?」
光冴「いいね。君と行きたい、とっておきの場所があるんだ」
話ながら歩き去っていく二人。
唯(N)「ええー。そっち展開ですか? いや、確かに好物だよ? 好物だけどさ。……違うでしょーーー!」
終わり。